強気男 木村一基六段(当時)

将棋世界2002年8月号、神吉宏充六段(当時)の「関西のことなんでもしゃべりまっせ」より。

 先日、千葉県市川市で行われた木村一基六段の昇級・昇段祝賀パーティーにお邪魔してきた。何でも来年4月1日から七段に昇段が決まっているとのこと。何故?ははあ、強気男の木村君のこと、もうB2を抜けると読んでの行動なのか? いやいや、これは竜王戦で2期連続優勝すると、昇段する規定があるのである。竜王戦の重みを考えると昇段規定は当然だろう。

 さてそのパーティーの中、目隠し10秒将棋で、女流棋士二人(ペアで石橋女流三段、本田女流初段)を相手に戦ってしまおうという、いかにも木村らしい強気のイベントがあった。

木村「これは私の必勝です。何故なら石橋さんと本田さんは自己主張の強いタイプで、石橋さんが初手5八飛と振れば、私は居飛車党よと本田さんが2八に振り戻す。これを繰り返しているうちに私が勝つのです」と訳のわからない必勝宣言。

 もちろんそんな風には進まないが、終盤、木村がファンサービスで「しまった~!」とやって、頭を抱えた。この頭を抱えたのが大悪手。

「歩の数を指で数えていたのがわからなくなって、歩が使えなくなった」と木村。

それでも勝ってしまうあたりが強気男の面目躍如だった。

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昔、コンビニなどで買い物をする際、一円玉や五円玉のおつりが出ないような(合計金額の下一桁がゼロになるような)買い方をするのが、私の密かな趣味だった。

買い物をしながら累積購入金額の下一桁をリアルタイムで計算する。

しかし、消費税の出現によりこの楽しみは奪われてしまった。

とても計算はできない。

木村一基六段(当時)が頭を抱えてしまい歩の数を計算できなくなったこの話を読むと、私はついつい消費税を連想してしまう。