将棋世界1993年11月号、鈴木輝彦七段(当時)の「対局室25時 東京」より。
控え室は大入りで、めずらしく羽生君も姿を見せていた。
インタビューの帰りらしく、頭も奇麗に刈られている。
(中略)
控え室の主役であり、華でもある桐谷さんが取材のために来ているので、賑やかな事この上ない。
最新の棋界情報が開陳される度に、笑いと感動の溜息が出た。
続いて女流棋士の棋譜を並べ始め、一人ひとりの手合割を言い出した。桐谷情報では、女流三強に大駒でも危ない人がいるそうだ。面白いが、「さしさわりがあるので一寸待って下さい」と羽生五冠王自ら襖を閉めに行ったのは正解だったと思う。
励みにもなるが、傷つく人がでてくるかもしれない。
それはそうと、羽生五冠王が動いた時、連盟の地軸もその方向に動いたような錯覚を起こした。五冠王だからというわけではないが、対局中よりも確かな存在感を皆に与えるようになっているのではないだろうか。
(以下略)
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桐谷広人六段(当時)は、この頃の控え室の主であったとともに、将棋世界の「公式棋戦の動き」欄を担当していた。
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この当時の女流三強は、中井広恵女流名人、清水市代女流王位・女流王将、林葉直子女流五段。
桐谷六段は女流棋界のことにも詳しかった。
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「さしさわりがあるので一寸待って下さい」と言って襖を閉めに行く羽生善治五冠(当時)が格好いい。
女流棋士にも配慮し、桐谷六段が話しやすいような環境を作る気配り。
大入りの控え室ということだから、20人くらいはいたのかもしれない。
空気が動くとは、こういうことを言うのだろう。