大山康晴十五世名人が作詞した曲

将棋世界1991年3月号、故・井口昭夫さんの「名人の譜 大山康晴」より。

 昭和45年の秋ごろだった。私に「作詞を頼まれて、こんなのを書いたのだが、どうだろうか」と紙片を見せた。

1 忍という字を 心にかいて
  将棋修業は 果てもない
  母の手作り この駒袋
  見れば闘志が 燃えあがる

2 棋士になるなら 天下の棋士に
  なると誓った 阿知の里
  あの日十三才 のぼりのかげで
  拭いた涙は 熱かった

3 ツゲの王将 ピシリと打てば
  あすの相手が 目に浮かぶ
  花の勝負師 ただひとすじに
  おれは将棋の 道をゆく

 三沢あけみが歌うことになっているという。当方は新聞記者だが、作詞には縁がない。第一、なかなかよく出来ているではないか。驚いてしまった。

 「勝負」の題で、利根一郎が作曲し、翌46年初頭、日本ビクターから発売された。歌いやすい曲だった。ヒットを期待したが、直後に三沢の所属レコード会社が変わり、歌われなくなった。大山も非常に残念がった。

 しかし、三沢とのつき合いはつづいている。昭和50年の100回優勝記念、62年の東京都文化賞受賞記念のパーティーでは、この「勝負」と持ち歌を歌って花を添えた。謝礼なし、三沢は「御祝」を置いていった。

 50年には大山の作詞、なかにし礼の補詞で「将棋道」(浜圭介・作曲、橘寛久・唄)がレコード化された。

勝ちを望むな 敗けぬと思え

心ひとつの 将棋盤

忍ぶ忍ぶ忍ぶ 五尺の身のつらさ

苦に苦をかけた八十一の

枡目にえがく 人間模様

(ニ、三番略)

 この印税は将棋会館建設資金に寄贈されたことをつけ加えておく。

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二つの曲とも、非常に心に染み入る歌詞だ。

”忍ぶ忍ぶ忍ぶ”、忍ぶが3つ並ぶとこのような迫力が出るものなのか。

”苦に苦をかけた八十一の 枡目にえがく 人間模様”などは、涙が出てしまいそうになる。

ネットで調べても、この二つの曲のことはほとんど出てこない。

どのような雰囲気の曲だったのか、聴いてみたいところだ。

   

名人の譜大山康晴
価格:¥ 1,631(税込)
発売日:1992-12

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「勝負」を発売した日本ビクターのレコード部門は、現在のビクターエンタテインメント。

そのビクターエンタテインメントから、NHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」で話題となっている天野春子(=小泉今日子)『潮騒のメモリー』が7月30日に発売となった。

潮騒のメモリー(初回限定紙ジャケ仕様~アナログEP風レトロパッケージ) 潮騒のメモリー(初回限定紙ジャケ仕様~アナログEP風レトロパッケージ)
価格:¥ 700(税込)
発売日:2013-07-30

今年の紅白歌合戦に出場は必至と言われている曲だ。

最近は、男だけで飲んでいると、「『あまちゃん』では誰が一番好きか」、「『あまちゃん』で好きなトップ3」などのような話題が必ず出てくる。

皆、それぞれ好みが分かれていたり同じだったりして面白いのだが、私が一番気になっているのは、若かった頃(1985年前後)の天野春子を演じている有村架純さん。

まさしくあの頃の可愛い女性の最小公倍数的な顔立ち、表情をしている。

タヌキ型の本格的昭和後半顔だ。

彼女が『あまちゃん』に出てくると、1980年代中盤から後半にかけての何人かの知り合いの女性の顔が脳裏に浮かんできて、懐かしいような感傷的な気分にさせられる。

有村架純さんも主人公の能年玲奈さんも番組オーディションで選ばれているからか、このドラマのキャスティングは奇跡的な素晴らしさになっていると思う。

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ジャケットが有村架純さんのCDも発売される。

「あまちゃん」に登場するアイドル歌手を夢見る高校生の天野春子。その“春子の部屋の赤いラジカセから流れていた数々の名曲たち"というコンセプトのもと、脚本の宮藤官九郎さんが自ら監修・選曲した懐かしの80年代ヒット曲集。

ビクターエンタテインメント編とソニーミュージック編が同時発売。

有村架純さんの写真は、ソニーミュージック編の方がより1980年代らしく見えるような感じがする。

春子の部屋~あまちゃん 80's HITS~ビクター編 春子の部屋~あまちゃん 80’s HITS~ビクター編
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2013-08-28

春子の部屋~あまちゃん 80's HITS~ソニーミュージック編 春子の部屋~あまちゃん 80’s HITS~ソニーミュージック編
価格:¥ 2,100(税込)
発売日:2013-08-28