村山聖八段(当時)「もし余詰めを見つけたら、いくら頂けます?」

将棋世界1998年1月号、神吉宏充六段(当時)の「今月の眼 関西」より。

 毎週、日刊スポーツ紙に掲載している双玉詰将棋、先日出題したものは簡素形でかつ手順も良く、自分ではかなり納得できる作品だった。余詰めの検討も、自分の目と森田将棋でバッチリ調べてGOサインで掲載。それを棋士室でみんなに見せて「どや、ええ作品やろ」と胸を張る。

「そうか、なるほど・・・いいですね」とか「これは難しいわ」などと賞賛の嵐に良し良しと幸せを感じていたら、村山聖八段が「あっ」と叫んだ。

「な、何や村山君」

「い、いえ・・・余詰めはないんですか?」

「え、ないやろ。ちゃんと検討したけど、どの手順?」

「いや、なかったらいいんです。でも、もし余詰めを見つけたら、いくら頂けます?」

「ほほう、何か自信ありげやなあ。でもこっちも自信はあるから、そやなあ・・・余詰めを見つけたら千円、見つけられなかったら五百円でどないや?」

「う~ん千円か・・・。もうちょっと」そんな変な交渉をしていると「あっ、僕も詰まない方に乗っていいですか?」と奨励会の津山三段が手を挙げてくれた。

 おお、現役の奨励会員が後押ししてくれるなんて心強いゾ! で「どや、二千円で」と強気の嵐で押すと「・・・ほかないですか?誰も乗りませんか?じゃあ二千円でしょうがない。やりましょう。ええと、こうしてこうして」と村山八段が動かす手順を、私と津山君は「・・・・・・」と呆然と見ているよりなかったのである。恐るべし村山の終盤!

(以下略)

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1997年の10月下旬か11月初・中旬の関西将棋会館棋士室の光景。

この5ヵ月前に膀胱癌の手術をうけた村山聖八段の1997年度は、B級1組順位戦で勝ち続けA級に復帰を決めたりNHK杯戦で準優勝するなど、大活躍の年だった。

翌年の1998年8月8日に村山聖八段は亡くなる。

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発売日:2000-11

 

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詰将棋としてはNGだが、駒が余って詰む詰将棋的な問題、余詰めもある詰将棋的な問題も、実力向上のための終盤の問題集としては非常に有効だ。

そのようなアプローチの問題が多く載っているのが青野照市九段の『読むだけで強くなる終盤のコツ130』。

表紙の問題に代表されるような、初級者の方向けの終盤力アップのための本。

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また、終盤が滅茶苦茶苦手だった私が読んで、終盤力を身につけることができた本としては、田丸昇八段の『詰め方カタログ』。

終盤力をアップさせたい初段前後の方が読む本としては最適な内容だ。

詰め方カタログ―実戦での詰めがすべてわかる (初段に挑戦する将棋シリーズ)
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