羽生善治竜王(当時)「好みのタイプなんてお聞きしていいですか」

将棋世界1990年8月号、「羽生竜王、憧れの菊池桃子さんと念願の対談」より。

―羽生竜王は去年の竜王戦というビッグタイトル戦で「竜王」になって優勝賞金3000万円を獲得したんですよ。

羽生 ただ、そういうことを考えていると邪念が入ってきてしまうというか―。

菊池 少年の頃の純粋な気持ちが変わっちゃいますよね。

羽生 ええ、将棋をやっている間は純粋にそれだけという気持ちでやっていると思います。考えないですね。これを勝ったら幾らとか(笑)。

菊池 家では将棋の研究とかやらないんですか?

羽生 今はあまり。どちらかというと仲間が何人か集まって研究会みたいなことをします。ところで、菊池さんは歌でデビューされたあと、いろいろな分野で活躍されていますよね。

菊池 それ程でも―。ただ私って、やりたいなぁと思うことがあると、なんでも実現させちゃうんですよね(笑)。例えば、普通の22歳になったばかりの女の子が本を出版したいと思っても難しいですよね。ところが、私達の場合では、すぐに力を貸してくれる人がいて、そういう機会がたくさんある。だから、音楽の場合でも、やりたいと思うものがあった時、我慢せずにそれにチャレンジしてみるというのが、いつかオバサンになった時に後悔しなくていいんじゃないかと思うんです。私って欲張りなんですよ(笑)。羽生さんもそんな環境にいるんじゃないですか?

羽生 ある意味では恵まれた環境にいると思いますね。

菊池 羽生さんはある面で芸術家でもあると思いますね。

羽生 自分ではあまり意識したことはないですけれども、そう言って下さるのは非常に嬉しいですね。

菊池 さっき、羽生さんは勝負事が好きだっておっしゃっていましたよね。それって、女の子の立場からすると、この先とんでもないギャンブラーになってしまうのでは(笑)なんて心配しちゃいますけれど、だいじょうぶなんですか?

羽生 うーん(笑)。凝り性なんで心配なんですけれど。

菊池 悪い方へは行かないで下さいね。

羽生 はい(笑)。

(先ほどからいつ話そうかと思っていた羽生竜王が、ついに核心に―)

羽生 (もじもじと)好みのタイプなんてお聞きしていいですか―。

菊池 私ですか。うーんと、一番はハンサムじゃないこと。というと笑われるんですがハンサムな男性って心配でしょう? ところで羽生さんは?

羽生 僕は―、そうですね、可愛らしい女性が好きですね。いろいろ例えばしぐさとか内面的なこととか。それでやさしければ。

菊池 二人の好みって何か対比するものがありますね(笑)。考え方が両極端なのかしら。

羽生 これからのことをお聞きしますけれど、女優として?

菊池 特に決めてはいませんけれど、お芝居の仕事を今たくさんいただいているので、そちらの方を大切にしたいなと思っています。

羽生 ファンとしては活躍を期待してますし、応援します。

菊池 私も羽生さんの活躍をお祈りしています。

羽生 きょうはどうもありがとうございました。

(このあと、お二人は将棋会館を出て東京体育館まで5分間のデート。残念ながら仲良く手を組んでという訳にはいかなかったようですが、羽生竜王は楽しげに菊池さんに話しかけていました)

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非常に良い対談だ。

良い対談だ。

しかし、無理やり、お見合いという視点で考えた場合はどうなのだろう。

羽生善治竜王(当時)の好みの女性のタイプ、「可愛らしい女性が好きですね。いろいろ例えばしぐさとか内面的なこととか。それでやさしければ」というのは、菊池桃子さんそのものと言っても良いだろう。

一方の菊池桃子さん。

「私ですか。うーんと、一番はハンサムじゃないこと。というと笑われるんですがハンサムな男性って心配でしょう? ところで羽生さんは?」

これは誰が聞いても想定外の回答になってしまう。

喜ぶ人、ショックを受ける人、かなり迷う人、それぞれがいる。

羽生竜王自身がどう考えていたかは別として、羽生竜王は誰が見たってハンサムだ。

唯一の追い風は、羽生竜王の髪型が変だったことだが・・・

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もう一つ考えなければならないことがある。

菊池桃子さんの

①「さっき、羽生さんは勝負事が好きだっておっしゃっていましたよね。それって、女の子の立場からすると、この先とんでもないギャンブラーになってしまうのでは(笑)なんて心配しちゃいますけれど、だいじょうぶなんですか?」

②「私ですか。うーんと、一番はハンサムじゃないこと。というと笑われるんですがハンサムな男性って心配でしょう?」

から、

①⇒羽生さんがギャンブラーになってしまいそうで心配

②⇒ハンサムな男性は心配なので好みのタイプではない=心配をさせられるような男性は好みのタイプではない

①と②より、羽生さんはギャンブラーになってしまいそうで心配⇒心配をさせられるような男性は好みのタイプではない

ということになってしまう。

その後を見ても、羽生善治三冠はギャンブラーにはなっていないし、この6年後に七冠王になる訳なのだけれども、この対談では「うーん(笑)。凝り性なんで心配なんですけれど」と羽生竜王が返し、菊池桃子さんの心配が解消されないような展開となっている。

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まるで私が、羽生竜王(当時)と菊池桃子さんのお見合いに同席した羽生竜王の叔父さんか従兄弟にでもなってしまったような心配のしかたになってしまっている。

ちなにみ、この4年後、羽生善治三冠は別の雑誌で畠田理恵さんと対談し、それがきっかけとなって結婚に至っている。

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将棋会館の出口で、羽生竜王は菊池桃子さんに将棋世界臨時増刊号「竜王、羽生善治」をプレゼント。

そして、東京体育館まで一緒に歩いている。

その時の写真の右半分。(写真:弦巻勝さん)

DSC_0012

羽生竜王の向かって左側少し離れて菊池桃子さんが歩いている。

そして、羽生竜王の背後には、森内俊之五段(当時)の姿が!

羽生竜王と菊池桃子さんが歩いている様子を静かに窺っているようだ。

ところで、写真の羽生竜王、嬉しさと照れがスクランブルされたような何ともいえない表情をしている。とても照れながらニヤけている、と言うこともできるが。

19歳の青年羽生竜王の貴重な一コマだ。

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羽生竜王は、この対談の感想を将棋マガジン1990年9月号に書いている。

羽生善治竜王(当時)と菊池桃子さん

対談が終わってから1か月後くらいに羽生竜王の家へイタズラ電話をした人達がいた。

羽生善治竜王(当時)への深夜の電話

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この頃は将棋のことを知らなかった菊池桃子さんだが、最近では将棋が趣味になっているという。

菊池桃子オフィシャルブログ「私設研究室」 癒し本 ヾ(@⌒ー⌒@)ノ (2012年10月27日)

菊池桃子オフィシャルブログ「私設研究室」 将棋 (2012年11月4日)

ブログ記事には、菊池桃子さんが愛読している『羽生善治のみるみる強くなる将棋入門』と『羽生の一手詰め』の写真がそれぞれ掲載されている。

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また、菊池桃子さんはお嬢さんと一緒に将棋を指すこともあるという。

菊池桃子さんのオフィシャルブログで、お嬢さんが書いている(菊池桃子さんのブログは、ご本人、二人のお子さんがそれぞれ書いている)。

菊池桃子オフィシャルブログ「私設研究室」 将棋 (2012年12月1日)

お嬢さんは、「ママは皆さんが思っているより強いかも」とも。

非常に嬉しいニュースだ。

将棋世界で、23年ぶりの「羽生善治三冠・菊池桃子さん対談」をぜひ企画してほしいものだ。