第26回将棋ペンクラブ大賞贈呈式の一日(中編)

18:55

受賞者からのあいさつ。

観戦記部門大賞の北野新太さんからは、受賞作であるNHK杯戦観戦記の編集担当である後藤元気さんへの感謝の気持ち、棋士への思い、文章への思いなどについて語られた。

NHK将棋講座(テキスト)では、今回の将棋ペンクラブ大賞贈呈式のことが掲載される予定であるという。本当に有り難いことだ。

観戦記部門優秀賞の湯川恵子さんからは、将棋ペンクラブ大賞受賞が5回目でこれは新記録にあたること、が話された。

数えてみると、1993年に一般部門佳作「女の直感」(近代将棋)、1999年企画功労賞「トップ棋士が指導する将棋三番勝負」(週刊ポスト)、2010年観戦記部門優秀賞、2013年観戦記部門大賞(ともに女流名人位戦)に続く5回目。

ちなみに湯川恵子さんは、女流アマ名人にも5回なっている。

文芸部門大賞の天野貴元さんからは、今日同席している森内竜王がトップ棋士として活躍しているように、普及の世界で日本一と呼ばれるような存在を目指したいという話があった。

会場からは割れんばかりの拍手。

天野さんの教室で習っている方など、天野さんのお祝いに多くの方が来場されている。小さなお嬢さんがお母さんに連れられて来ていたりもする。

もう湯川恵子さんは忘れているかもしれないが、天野さんが奨励会を退会した直後くらいに、湯川恵子さんが話していたことがある。

湯川恵子さんは女流名人位戦の観戦をする際に、記録係の奨励会員にお小遣い程度のお礼をして、棋譜解説をしてもらうことが多い。

恵子さん曰く。「天野さんみたく、とっても懇切丁寧に解説をしてくれる子は四段になれないんだねえ。素っ気ないくらいに簡潔な解説の子ほど四段に上がってる」

天野さんなら、絶対に日本一になれると思う。

文芸部門優秀賞の森内俊之竜王は、直前にスピーチした受賞者のマイクの位置(高さ)を変えずに話すのが特徴で、2010年の受賞の時も、直前の渡辺明竜王(当時)のマイクの高さそのままでスピーチが開始された(その時は会場の係の人がマイクの高さを調節してくれた)。

今回も、天野さんに比べて身長の高い森内竜王は、天野さんのマイクの位置で話し始めて、床に対して森内竜王の体が75度の角度になっているような状況。大賞担当の三上さんが急いでマイクの高さを調節しに行ったものの、あまりマイクの位置が変わらず、それでも森内竜王はそのままの姿勢でスピーチを続けた。

森内流の強靭な受けを思わせるようなマイクに対する受け。

毎年ほぼ真横から壇上を見ている私は、ついついそのようなことばかり考えてしまう。

この日の取材は、将棋世界、週刊将棋、NHK出版、宝島社映像班、など、今までにないくらい多くの社に来て頂けた。

多くのカメラが壇上に向けられる。

ふと入口近くを見ると、師匠の森信雄七段のお祝いに駆けつけた室谷由紀女流初段、指導対局担当の安食総子女流初段、渡部愛女流初段が並んでスピーチを聞いている。森信雄七段門下の片上大輔六段も会場に。逆の入口近くにはバトルロイヤル風間さんの姿も。

技術部門大賞の森信雄七段のスピーチが始まった。

(つづく)