ハッピー羽生、テッド森内、ケビン谷川、トニー行方

近代将棋2001年12月号、マジシャンの小林恵子さんの「棋士との愉快な交遊録」より。

 9月、私は年末に発売されるビデオ撮影のため、アメリカのロサンジェルスに行っていました。

(中略)

 順調に撮影が終わり、次の目的地ラスベガスへ移動中に大事件が起きた。

「空路閉鎖!急いでテレビを見て」と連絡が入る。「なんで?」と思いながら見たテレビから、崩壊する世界貿易センタービルの衝撃映像が飛び込んできた。

(中略)

 帰国日を迎え、空港に向かう。しかし飛行場は閉鎖されたままだった。さらに航空会社から「当面は飛行機の本数が少なく、予約者が殺到しているので、次の飛行機を予約できるのは2週間後です」と言われてしまった。

 2週間?日本大使館から旅行会社まであちこち連絡を取ってみたがどうしようもなかった。

 腹をくくってロスのホテルに舞い戻る。突然たっぷり時間が空いてしまったので、渡米前に聞いていた、ロスの将棋道場を訪れてみることにした。

 道場の場所は、リトルトーキョーのジャパニーズ・アメリカン・カルチャー&コミュニケーションセンター内にある。道場の入り口には「羅府棋院」と看板が掛かっていて、将棋と囲碁両方楽しむことができる道場だった。

 羅府名人の大野正俊さんが音頭を取ってくださり、常連の皆さんを紹介していただいた。この道場の顧問は、大野八一雄六段が務めている。私が道場に来ることを聞いた大野正俊さんは、大野六段に電話をして私のことをうかがっていたらしい。おかげで大歓迎していただいた。

(中略)

 結局、平手は1勝5敗だったが、1勝できて嬉しかった。最後にみんなでリレー将棋を楽しんだ。

 帰り際、羅府棋院にいらした棋士につけられたニックネームを教えてもらった。谷川浩司九段は「ケビン谷川」。青野照市九段は「テリー青野」。森下卓八段は「タック森下」。森内俊之八段は「テッド森内」。どれも下の名前の頭文字から由来されているらしい。

 こんな愛称も会った。ヒラリー中井(中井広恵女流五段)。これは中井女流が道場を訪れたときヒラリー夫人が話題となっていたらしい。大野八一雄六段は筋肉質だから「シルベスター大野」。野月浩貴五段はタイガーウッズに似ているので「タイガー野月」。またウエストサイドストーリーにかけて「トニー行方」(行方尚史六段)、「マリア高橋」(高橋和女流初段)と銘々した愛称もあった。

 そうそう、高橋道雄九段は「ミッキー高橋」。本人もすごく喜んでいたという。逆に羽生善治四冠は「ハッピー羽生」とつけられて、いささか怪訝そうな顔をしたらしい。

 もしアメリカ・ロスにお越しの際は、羅府棋院に行ってみてください。私もまた遊びに行きたいと思っています。

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アメリカ人からすると日本人の名前(姓名の名)は馴染みの薄いものが多くなかなか覚えてもらえないことから、日本人がアメリカンネームを持つ場合がある。

そのようなこともあり、ケビン谷川、テリー青野、タック森下などの愛称が付けられたのだと思う。

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「ウエストサイドストーリー」の主人公は、マリアとトニー。

野月浩貴七段がtwitterで行方尚史八段を「トニー君」と呼んでいることがあるが、その由来はここにあるということになる。

なぜ、「ウエストサイドストーリー」から名付けられたのかはわからないが、「ウエストサイドストーリー」はロミオとジュリエットが元となっているので、行方六段(当時)がロミオ役の雰囲気を持っていると考えれば、合点がいくような感じもする。

 

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