将棋世界1985年9月号、銀遊子さん(片山良三さん)の「関東奨励会だより」より。
少しばかり時期を失した感じもするが、昭和59年度の有段者を統計から分析してみた。
まずは平手香落とりまぜての全ての対局の勝率ベスト10である。
- 郷田初段 42勝22敗 0.656
- 豊川二段 42勝23敗 0.646
- 木下二段 36勝20敗 0.642
- 羽生三段 30勝17敗 0.638
- 佐藤(康)初段 33勝19敗 0.634
- 荒井三段 30勝18敗 0.625
- 村松(公)二段 39勝24敗 0.619
- 先崎初段 37勝23敗 0.616
- 愛三段 29勝19敗 0.604
- 森内初段 38勝25敗 0.603
59年度勝率第1位は、郷田真隆初段だった。年度はじめは4級にいたわけだから、いかに勝ちまくってきたかがわかろう。
豊川、木下など、なるほどよく勝っている人が順当に上位を占めたなという気がするが、意外なのは先崎である。こんなに勝っているのなら、もう少し上に行ってもいいはずだが、きっと勝ち方が下手なのだろう。
逆の意味では森内が意外。3級から初段まで上がったのに、勝率はカスカスのベスト10入りだから勝負強さが素晴らしいと見ることができよう。続いては香落ち戦の勝率を調べてみた。
- 村松(公)二段 16勝6敗 0.727
- 郷田初段 18勝7敗 0.720
- 村松(央)二段 10勝4敗 0.714
- 米谷二段 14勝6敗 0.700
- 木下二段 16勝7敗 0.695
- 先崎初段 19勝9敗 0.678
- 荒井三段 16勝8敗 0.666
- 佐藤(康)初段 12勝7敗 0.631
- 羽生三段 14勝9敗 0.608
- 佐藤(秀)二段 15勝10敗 0.600
総合順位とはちょっと違ったメンバーになるのが面白い。村松(央)や米谷などは、世の中が香落ちだけになればいいと思っているかも知れない。
おしまいに、平手戦の勝率を掲げておく。これが本当の実力さ、と言いたげな、上位の表情がうかぶ。
- 豊川二段 27勝9敗 0.750
- 羽生三段 16勝8敗 0.666
- 佐藤(康)初段 21勝12敗 0.636
- 郷田初段 24勝14敗 0.631
- 高田二段 17勝10敗 0.629
- 森内初段 22勝13敗 0.628
- 鈴木(桂)初段 29勝18敗 0.617
- 愛三段 17勝11敗 0.607
- 木下二段 20勝13敗 0.606
- 櫛田初段 19勝13敗 0.593
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奨励会で二段差(2級差)の場合、振り駒で歩が多く出たら上位者が後手の平手、とが多く出たら香落ちとなるようだ。
香落ちは、上手の左側の香はないので上手の振り飛車になるのが定跡。
上位者が居飛車党だった場合、振り駒で歩が多く出てほしいと願う人の割合は非常に高かったと思う。
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下手は、居飛車、振り飛車、両方の指し方がある。
私は振り飛車党だが、上手の左側の香がなければ、居飛穴にもされないし、美濃囲いに対して端攻めをされる可能性も低くなるので、香落ちの下手を指せるならとても嬉しいと思う。
ネット将棋で香落ちを指せるようになれば、また違った面白さがあるかもしれない。
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今日の記事の集計期間は1984年4月~1985年3月。
この翌春の記事で、1985年1月~12月の成績も集計されている。