恐ろしい10分切れ負けトーナメント戦

将棋世界1985年2月号、銀遊子さん(片山良三さん)の「関東奨励会だより」より。

 将棋週間の催し物のひとつとして、有段者32名による「10分切れ負けトーナメント戦」が、ファンに公開する形で行われた。

 注目は櫛田初段。切れ負けならA級八段も負かす、とふいてまわっていたのはけっこう有名だったらしく、彼のまわりだけ人だかりがしていた。悪い将棋でもスイスイ指して相手を時間切れに誘うのがその手口だが、2回戦で木下初段に期間切れ寸前に詰まされてしまって野望はついえた。彼にとって10分は長すぎるらしい。

 途中、優勝候補だった所司三段が時間に追われて角をまっすぐ進めてしまうハプニングもあり、決勝の組み合わせは羽生二段対田畑三段という本命対大穴の対決となった。結果は順当に田畑が時間切れ負け。あんなにのんびり指して、よく決勝まで残れたものである。

 羽生は早指しでも非凡なところを見せたが、5連勝のうちでちゃんと詰まして勝ったのはたったの1局だけだという。おそろしいトーナメントもあったものだ。

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奨励会有段者32名による「10分切れ負けトーナメント戦」というイベントがあれば絶対に面白い。

しかし、スピードが早いので大盤解説やリアルタイムでのネット中継が難しいという問題があり、多くの人が楽しむイベントとして考えた場合、課題はいろいろとありそうだ。

棋譜解説は多少割り切って、観る将棋ファン向けに特化したやり方もあるかもしれない。

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この時の羽生善治二段(当時)の優勝は、その後も片山良三さんが取り上げている。

それほど鮮烈な印象だったのだろう。

過去の記事「羽生善治1級(当時)にかかれば相手の銀も横に動く」は、今から考えると「羽生善治二段(当時)にかかれば相手の銀も横に動く」が正しい。

羽生流真空斬り

羽生善治1級(当時)にかかれば相手の銀も横に動く

羽生世代、切れ負け将棋のそれぞれの棋風