第57期王位戦第7局対局場「元湯 陣屋」

羽生善治王位に木村一基八段が挑戦する王位戦、第7局は、第6局に引き続き神奈川県秦野市の「元湯 陣屋」で行われる。→中継

今日は陣屋のもう一つの物語を。

現在の株式会社陣屋の代表取締役社長である宮﨑富夫さんは、陣屋の4代目の跡取り。

慶応大学理工学部修士課程を修了して本田技術研究所で7年間次世代燃料電池の研究開発に携わっていたが、旅館の後を継ぐつもりはなかったという。ところが、オーナーである父の死、社長兼女将である母が病気で倒れたことが重なったことから、急遽、2009年から陣屋の社長に就任することとなった。

宮﨑富夫さんが受け継いだ頃の陣屋は、以前は5億円ほどあった売上高が3億円を切るまでに落ち込んでおり3300万円の赤字、借入金もあった。

一時は旅館を手放すことも検討したが、売却がうまくいったとしても借入金が残ってしまう状態。

そこから、業務の改善が推し進められる。

これは業務改革というような、掛け声だけで中身の伴わない改革ではなく、今まで個人の頭の中にあったことや手管理だったものをシステム化して、経営あるいは従業員に必要とされる情報の可視化、PDCAサイクル(Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善))を早く回すこと、仕事の効率化により顧客と接する時間を増やしていくこと、を目指す着実なものだった。

例えば、結婚式の有無や日帰り客の多寡によって月ごとの原価率は変動するわけだが、商品タイプ別の原価管理がなされておらず、その変動の原因すら分からなかったものを、システム化により把握できるようにしただけでも、経営の意思決定面では大きく違う。

また、対顧客面でも、「布団はあげないでそのままにしてほしい」と当日要望があったとしても、それまではホワイトボードに書き込まれるだけで情報伝達が徹底されないことがあったが、システム化後は社内SNSで情報共有が可能となった。(内容に関わらず見た後には必ず「いいね」を押すことを徹底している)

これらの効果はすぐに現れて、2010年度には黒字転換、5年で経営を立て直すことに成功した。

顧客満足度が高まり、リピーターが増えたことが大きかった。

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陣屋のシステムは、セールスフォース・ドットコムのクラウドベースのプラットフォームをベースに独自開発をしており、このシステムは「陣屋コネクト」というホテル・旅館情報管理システムとして、全国の180施設に導入されているという。

システムの販売は2012年に設立された株式会社 陣屋コネクトが行っている。

陣屋コネクト

「想職」時代】(2)人事が「断りましょう」と言った若手を老舗旅館の社長が雇ったワケ(nikkei BPnet)

スペシャルインタビュー第3回 元湯陣屋 代表取締役社長 宮崎 富夫氏(一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA))

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[陣屋での昼食実績]

(食事実績は将棋棋士の食事とおやつによる)

羽生善治王位の陣屋でのここ数年の食事実績は次の通り(二日制タイトル戦は一日目、二日目の順)
2016年王位戦第6局で、陣屋特製豚漬け重、カレーライス ◯
2014年王位戦第7局で、天・茶そば(冷)、カレーライス ◯
2014年王位戦第6局で、天・稲庭うどん(温)、カレーライス ●
2014年王将戦第5局で、冷やし天ぷらそば、カレーライス ●
2012年王座戦第4局で、カレーライス ◯
2011年王位戦第6局で、天麩羅重、カレーライス ◯
2011年王位戦第7局で、親子重、カレーライス ◯
2010年の王座戦第3局で、カレー(ビーフ)大盛、夕食に親子重 ◯
2010年王将戦第6局で、天ざるうどん、カレーライス ●
2007年王位戦第7局で、やまと豚のひつまぶし、カレーライス ●

木村一基八段の陣屋での食事実績(一日目、二日目の順)は、
2016年王位戦第6局で、陣屋特製豚漬け重、カレーライス ●
2014年王位戦第7局で、天・茶そば(冷)、カレーライス ●
2014年王位戦第6局で、陣屋特製豚漬け重、カレーライス ◯
2009年王位戦第7局で、天ざるそば、カレーライス ●

[昼食予想]

2014年の中継ブログに一日目のメニューの写真が載っている。→メニューの写真

メニューは、
・天 茶そば (温・冷)
・天 稲庭うどん (温・冷)
・陣屋特製豚漬け重

今回も同様という前提で予想してみたい。

理屈抜きでの予想は次の通り。

羽生善治王位
一日目 天・茶そば(冷)
二日目  カレーライス

木村一基八段
一日目 陣屋特製豚漬け重
二日目 カレーライス