中田功六段(当時)「大介は俺が止める!」

将棋世界2000年4月号、順位戦星取表(C級1組)より。

「大介は俺が止める!」

 数カ月前から言っていた男がいた。ラス前で対戦の中田功だった。

 目の前で昇級を決めさせてなるものか!の気迫があった。その気迫を、頭を丸めて対局に臨むという形で表した。

 さすが九州男児「男・中田功」である。

 将棋は相穴熊で両者ガッチリ構えたあと激しい攻め合いとなった。

 中田の気迫も素晴らしいが、鈴木も気合では負けなかった。

 ゾクゾクするような勝負は148手で鈴木の勝ち、最終局を待たずにB2昇級を決めた。連敗グセを断ち切ったのだ。

 しかし中田の気迫は、今期一番の名場面であった。

——–

将棋世界2000年6月号、鈴木大介六段(当時)の「鈴木大介の振り飛車日記」より。

 棋王戦で対沼六段戦。これが今期初対局。

(中略)

 局面は僕の四間飛車穴熊に沼六段の急戦で戦いが始まり、5図は▲8二歩と昼休前に僕が最後の抵抗?に出た所。

%e9%88%b4%e6%9c%a8%e6%b2%bc%ef%bc%91

 ここでは本当に青ざめた。△同飛とされても困るし△4四角▲8一歩成△7七角成の攻め合いもかなり苦しそうだ。

 ここで昼休み。順位戦後やっと仲が復旧した中田功六段と食事へ。

「もう駄目っス。もう少しで投了だワ」

「またまたぁ、あんな序盤いつもの事じゃない。まあとにかく先に桂(控え室)で待ってまんがなぁ」

 この会話で解った事は、コーヤンの将棋が優勢なのと僕の将棋が客観的に見ても苦しい事と帰りの麻雀がほとんど確定した事だ(この会話でこの3つの事が瞬時に解る人はかなりの棋界通?)

 昼休みも終わり対局室へ戻ると、そこからは夢を見ているかのような展開が待っていた。

5図以下の指し手
△7六歩☓
勇んで▲同銀◎ △同飛
ヤッタネ▲8五角 △7七飛成
気持ち良く▲6二飛成 △同金
決まった!!▲4一角成(6図)

%e9%88%b4%e6%9c%a8%e6%b2%bc%ef%bc%92

 と進み優勢に…。沼六段の△7六歩が失着で大逆転。6図となっては穴熊が捌けまくっている。以下△3一銀打に▲8一歩成~▲4六桂が厳しく逆転勝ちを収めた。

 内容的には押されていたので不満は残るが、▲8五角~▲6二飛成は気持ちが良かった。沼六段としては5図でどうやっても勝ちと思ったのが油断になった原因であろう。ウキウキ気分で麻雀を打つと手もよく入るし、もう一人のメンツを待つ間パチスロを打てばワード(ワードオブライツという機種)で1時間ちょっとで1,800枚も出て(コーヤンとなりで2万負け。僕の知っている限りではコーヤンのCT突入率はトータルで2割弱に思える)何をやってもバカヅキの一日だった。

——–

鈴木大介八段らしい絵に描いたような豪快な捌き。

5図の局面、優勢で複数候補手がある時ほど間違ってしまうという典型的なケースなのだろう。

——–

中田功七段がここでもいい味を出している。

日本将棋連盟がある千駄ヶ谷にはパチンコ店がないので、二人は新宿に出てもう一人の麻雀の面子を待っていたという流れだったのだろう。

それにしても、「まあとにかく先に桂で待ってまんがなぁ」の一言で麻雀確定なのだから、凄い。