将棋世界2001年10月号、野月浩貴五段(当時)の「第14期竜王戦」より。
確かあれは木村が四段に上がった直後だから、僕と木村は23歳だったと思うが、ある飲み屋で囲碁の小松英樹九段と一緒になったことがあった。その時に小松さんが話し掛けてくれたのだが、木村相手に丁寧な敬語を使っていたのでおかしいなと思い、「こいつ、いくつに見えますか?」と聞いたら、小松さんいわく「俺より年上でしょ?」。
小松さんは我々よりも7歳上なので、33とか34歳に見えていたようだ。
当時の木村は顔が老けているだけだったが、最近は顔に年齢が追いついてきたせいか、体中から棋士としての貫禄が感じられるようになってきた。やはりこれだけ将棋を勝っているからなのか、自信に満ち溢れている。
(以下略)
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囲碁の小松英樹九段の複数の写真を見ると、「高校ラグビー界で全く無名の弱小チームが、ある一人の教師が赴任してから、わずか数年にして全国優勝を果たすまでの軌跡」を描いたような熱血青春テレビドラマの主人公の教師役が似合いそうな、とても若々しい顔立ちをしている。
この時の小松英樹九段は30歳だが、きっと25歳くらいに見えていた時期かもしれない。
そのようなこともあり、なおのこと木村一基四段(当時)が年上に見えたのかもしれない。
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昔の木村一基八段の写真を見ても、特に年齢が10歳も上に見えるようには感じないのだが、そういえば、2006年に木村一基七段(当時)は次のように話している。(2005年度NHK杯戦準々決勝、森下卓九段-三浦弘行八段戦の対局前の控え室での会話。木村七段は解説者だった)
「僕と同年齢の、外見が若かった行方君や野月君も最近では年齢相応の顔しています。でも三浦君は子供の頃と顔がほとんど変わっていません。それにひきかえ僕なんか特に…」
控え室の隅で精神を集中させていた三浦弘行八段(当時)の困ったような照れ臭そうな、とても微妙な表情が忘れられない。