福崎文吾八段(当時)「まあ、どっちでもいいんですけどね。端攻めして、香車の頭に歩を叩いてるか、歩を垂らしてるかみたいな差ですよ」

将棋マガジン1994年3月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。

福崎文吾王座(当時)。将棋マガジン1993年2月号より。

南邸忘年会Ⅰ

神崎五段「(電話で)もしもし、今から南邸に伺いませんか」

タマ「あれ、忘年会は明日よね」

神崎「エエ、でも福崎先生に誘われましてねェ。でも3人じゃ筋が悪いでしょう」

タマ「南夫人がいてるやん」

神崎「奥さんに遅くまでつき合ってもらったら悪いでしょう」

タマ「ほな、私はエエの?」

神崎「いえいえ鹿野さんを見込んでお願いしてるんですよ。家までお迎えに参りますから」

タマ「ウーン」

(南邸忘年会とは、もう10年以上続いているトランプ大会のことです)

南邸忘年会Ⅱ

福崎八段「もう明るなったで」

タマ「神崎さんも爆睡してますけど」

福崎「鹿野さんもヒツギに入りや」

タマ「ヒツギ……? 棺ィ!! 私は吸血鬼ですか」

福崎「だって、夜、寝えへんやん。もうちょっとしたら他の皆が元気一杯で来るねんから、ちょっとくらい寝とったほうがエエで」

タマ「ハーイ」

南夫人「おはようございます。何か食べはります?」

タマ「ウン食べる」

(まるで眠る気のないタマ)

福崎「あのなあ」

指し初め式

 1月5日の指し初めは、関西では出席者全員が何手かずつ将棋を指す。しかし、勝負はつけないという習わしである。その後、お寿司をつまんで歓談するのも例年の事なら、その後もまた例年通り。囲碁あり、麻雀あり、皆三々五々に散って行く。そして、福崎、南と顔が揃えばやはりブリッジである。浦野六段とタマの4人で忘年会の延長戦だ。4人が、対局室で堂々とカードを配っていると、何人かがのぞきに来る。そして、よく解らぬまま去って行く。

 コントラクトブリッジは、将棋界ではマイナーな娯楽のようだ。しかし一人ちょっと変わった人が見学に来られた。我が師匠、有吉九段である。

有吉「何なってるの?ブリッジ。ああそう。それは高級なのやってるねえ。どういうルールなの?」

浦野「(大まかなルール説明)」

有吉「麻雀のほうがおもしろいんじゃないの」

浦野「いえ。またちょっと違ったおもしろさがあるんですよ」

有吉「どうして、こっちのカードを出さないの」

福崎「まあ、どっちでもいいんですけどね。端攻めして、香車の頭に歩を叩いてるか、歩を垂らしてるかみたいな差ですよ」

有吉「この人は何やってるの」

福崎「それは又、意味があって……」

(一生懸命、師匠はゲームの内容を把握しようとするが解りづらいらしい)

有吉「やっぱり本でも買って勉強しないと解らないね」

福崎「まあ、そうされるとすぐ解りますけどね。覚えられたら一緒にやりましょう」

有吉「そうね」

―師匠立ち去る―

タマ「ふ~、緊張した」

南「いっぱい質問しはるから、途中で、カード忘れてもうた」

浦野「ほんとやね」

 師匠は、本当にブリッジを覚えようとしてはるのでしょうか?

* * * * *

福崎文吾九段らしさが全開していて、会話がとても面白い。

有吉道夫九段はこの頃は56歳で順位戦A級に在籍。

有吉九段も非常にいい味を出している。

* * * * *

トランプは、一旦やりだすと面白くなるので、例えば大貧民でも七並べでもポーカーでも、普通にやれば徹夜になっても全く不思議ではない。(神経衰弱だけは徹夜が厳しいと思うが)

コントラクトブリッジは、大学1年の時に少しやった時期があるが、もはやルールは覚えていない。

コントラクトブリッジが大好きになって、確率論の研究室に入った数学科の女性の先輩もいたほどだったので、コントラクトブリッジは「トランプ界の矢倉」あるいは「トランプ界の純文学」と言っても良いのかもしれない。

* * * * *

「鹿野さんもヒツギに入りや」

「まあ、どっちでもいいんですけどね。端攻めして、香車の頭に歩を叩いてるか、歩を垂らしてるかみたいな差ですよ」

福崎八段(当時)の、このような言葉のセンスが素晴らしい。

「棺」は日常ではほとんど使わない用語なので、たしかに、「棺」と聞くと吸血鬼が眠っている場所という印象の方が強い。

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吸血鬼といえば、クリストファー・リーとピーター・カッシングが出演した映画『吸血鬼ドラキュラ』は別格としても、比較的最近では1985年版の『フライトナイト』が最高の吸血鬼映画だと思う。

 

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