アサヒスーパードライの広告「キレ味。この一手。第9回 山崎隆之四段」

将棋世界2001年6月号の、アサヒスーパードライの広告「キレ味。この一手。 第9回 山崎隆之四段」より。

会心の飛車切り

 平成10年6月。棋士になって3ヵ月目、初めての順位戦に臨んだ。順位戦は6時間という長い持ち時間でお互いに持てる力をすべて出し切っての戦いになる。記録係としては何度も見てきたが、実際に自分が指すとなると「いったいどんなものなんだろう」という不安と好奇心が混ざったような複雑な気持ちだった。

 初戦の相手は北島忠雄四段(当時)。相矢倉になり、今から見るとかなり粗い序盤で損な指し方をしているが、自分の好きなように指していて勢いだけはあったと思う。

 図は終盤の入り口で、飛車取りに香を打たれたところ。

 ここで▲3九飛などと逃げていては△2六馬~△2五馬と攻め駒をきれいに掃除されて勝ち目がなくなってしまう。

 図から▲4八同飛と飛車を切ったのが会心のキレ味。以下△同馬▲4六香△2七角成▲3二銀成△同飛▲4四香と大駒をすべて渡して寄せ切ることができた。

 順位戦のプレッシャーに負けず、子供のころのように伸び伸び指せた将棋である。

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今の山崎隆之八段から考えれば、矢倉囲いに入っている玉など信じられない世界。

しかし、飛車切りからは、山崎流の世界だ。

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棋士になって3年経った山崎隆之四段(当時)が書いている「子供のころのように伸び伸び指せた将棋」。

この伸び伸びと指すということが、現在の山崎八段の奔放な棋風に貫かれているのだと思う。

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16年前の山崎八段の顔を見ると、今とあまり変わっていない。

16年後もあまり変わっていないような感じがする。

将棋世界2001年6月号の、アサヒスーパードライの広告の一部