森内俊之四段(当時)「羽生君はついているんだから、たまには負けた方がいいですよ。あんまり勝つと嫌われますよ(笑)」

将棋世界1989年11月号、「10代、20代はこう見る 第2期竜王戦七番勝負〔島朗竜王-羽生善治六段〕」より。

  1. 対局者への声援およびあなたの見解は?

  2. ズバリ勝敗は?

王将・棋王 南芳一

  1. 現在の調子から言えば羽生君が有利じゃないかと思います。ただ、勝負はやってみないとわかりませんから。
  2. まったくわかりませんね。どんな将棋になるか、じっくりと見たいと思っています。

八段 塚田泰明

  1. 島さんには周囲の雑音を気にせず、去年の気持ちで力一杯頑張ってほしい。
  2. 難しいですね。心情的なことも考慮して4-2島。

八段 高橋道雄

  1. 島君とは奨励会入会も、55年四段昇段もいっしょ。今までライバルとして張り合ってきた訳で、そういう意味からも、10代の代表格ともいうべき羽生君と大勝負を争うということは、僕としては是非島君に頑張ってほしいですね。
  2. (羽生君の)先輩ということで周囲に必要以上に気を遣わず、いつもの島朗でいけば充分にいけると思う。4-2で島、と思います。

七段 中村修

  1. 島君は去年とは相手も立場も違いますが、苦行僧みたいに前のめりにならず無心で戦ってほしいですね。
  2. 4-1で羽生君かなぁ。

五段 佐藤康光

  1. 凄いの一言ですね。二人とも研究会のメンバーなのでちょっと―。
  2. わかりません。いい勝負になると思います。

四段 森内俊之

  1. 島さんとしては一局の中でも、シリーズでも先行して逃げ切りたいでしょうね。羽生君はついているんだから、たまには負けた方がいいですよ。あんまり勝つと嫌われますよ(笑)。
  2. 島さんにとっては正念場。危機感を持って臨むでしょうね。ということで4-2で島さん。

四段 先崎学

  1. 勝負師とは、世間の予想や期待を欺くことを生きがいにしている人種であり、その意味では島さんにとって非常にやりがいのあるシリーズだと思います。ひとつ世間の人々をギャフンと言わせてほしい。ただ、結果となるとどうでしょうか。羽生君に普段通りの将棋を指されたら、やや苦戦するのでは。逆に羽生君には、変に王様をかたくしないで好きな手を指してほしいと思います。
  2. それだけは言えません。

四段 屋敷伸之

  1. 今の将棋界を象徴するような若手同士の対戦なので熱戦を期待しています。お二人とも雲の上の人なのでどうこう言えませんが、同じ10代ということで羽生先生に頑張ってもらいたいですね。僕も早く近づきたいと思います。

  2. わかりません。強いて羽生先生の方がちょっと手厚いかな、というぐらいで。

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将棋世界1990年1月号グラビアより、第2期竜王戦七番勝負第4局の模様。撮影は中野英伴さん。記録係は深浦康市三段(当時)。

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島朗竜王(当時)と羽生善治六段(当時)、それぞれ同世代の棋士による竜王戦七番勝負の展望と勝敗予想。

心情的なものと勝敗予想が連動している派、勝敗予想クール派、勝敗予想を先輩に遠慮している派、など、様々な個性が表れている。

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その中で目を引くのが森内俊之四段(当時)。

「羽生君はついているんだから」は、竜王戦挑戦者決定三番勝負で2局続けて大劣勢の将棋を勝てたことを指している。

「たまには負けた方がいいですよ。あんまり勝つと嫌われますよ(笑)」

この当時の羽生六段と森内四段の仲だから言えることだったのだろう。

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村山聖五段(当時)だったらどのようなコメントをしていたのか、興味深いところだ。