近代将棋1992年7月号、武者野勝巳五段(当時)の「プロ棋界最前線」より。
私が公式戦の棋譜をコンピュータに入力し、活用していることをたびたび紹介してきたが、最近はこのほかにコンピュータの情報を電話回線に乗せてやりとりする「パソコン通信」としても大いに活用している。
パソコン通信にはニュースをリアルタイムに受け取る機能などもあるが、私がもっぱら参加するのは将棋のフォーラムで、特に「ネットとらふ」という将棋専用ネットには、対局日以外毎日一度はアクセスしている。
「順位戦の機構改革について、ご意見をお聞かせください」などと、ネットに書き込んでおくと、それを見た何人かが新たに思い思いの書き込みをしてくれるわけで、やさしく言えばコンピュータを使った伝言板みたいなものだ。この機能を使って、ちょっとサイクルの早い郵便将棋ならぬパソコン対局も楽しめるわけで、私も何局かの指導対局をしている。
最初は紹介者の宮田利男六段やその周辺の同好会ふうだったのだが、6月1日からTRI-Pの利用が可能になり、通信料が大幅に安くなって遠方からの参加が容易になったらしい。
◎将棋専用ネット「ネットとらふ」
- 電話番号 03-3305-◯◯◯◯(代表)
- 2400BPS MNP5 2回線
- TRI-Pへの接続モーニックは◯◯◯◯◯。
- 運用は24時間されており、メンテナンスは随時します。
- 会費は無料
- ゲストでログイン、オンラインサインアップ。
以上が概要。パソコンとモデムがあれば誰でも接続できるので、日本全国からのアクセスを待ってます。希望者には「マリオの部屋」に、近代将棋見たよ対局希望と書き込んでくだされば、私か宮田六段が指導対局のサービスをします。
また何が書いてあるのか分からんが、面白そうだなあと思ったあなた、これを機会に情報化時代の必須技術である「パソコン通信」を勉強されてはいかがですか―と個人的な宣伝をして次号に続く。
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パソコン通信の発祥は1980年代半ばのアメリカ。CompuServeやAmerica Onlineなどが大手だった。
日本では、1985年にアスキーネット、1986年にPC-VAN、1987年にニフティサーブなどがサービスを開始した。
ここで書かれている「ネットとらふ」は、これらの既存のサービスとは別に立ち上げられた、当時の言葉で”草の根BBS”と呼ばれる、個人で運営するパソコン通信だった。
今流に言えば、ニフティサーブがファミレスとすると、「ネットとらふ」のようなBBS(Bulletin Board System)は、天ぷら屋、ラーメン店、鰻屋のような専門店という位置づけになる。
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「ネットとらふ」および、武者野勝巳六段(当時)によってその後開始された「ネット駒音」が、1990年代半ば頃までの将棋界では二大BBSだった。
当時の若手棋士や観戦記者などの書き込みもあって、「NIFTY将棋フォーラム」を上回る賑わいを見せていた。
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主な機能としては、掲示板とChat。
掲示板は、それぞれのテーマ毎に書き込みが行われており、対局は、掲示板で一手毎にメッセージを付けながらやりとりする方式だった。
プロ棋士による指導対局となると、棋士と会話を交わしながら一局を2ヵ月近くかけて無料で指せるわけで、ある意味では非常に贅沢な環境だったとも言える。
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日本将棋連盟がホームページを立ち上げたのが1997年。
インターネットでのオンラインリアルタイム対局を実現した将棋倶楽部24が開始されたのが1998年。
古来からあった郵便将棋が、1990年代に、パソコン通信でのBBSを使った対局→オンラインリアルタイム対局という進化を遂げた。
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そして昨日、AbemaTVで世界初のビデオチャット対局が行われた。
実際に見てみると、想像をはるかに上回る面白さ。
かなりエポックメイキングなことだと思う。
今日も、これから放送がある。
→GWおうちでアベマ第9弾 “世界初”ビデオチャット対局『おうちでAbemaTVトーナメント2DAYS』を生中継!(日本将棋連盟)