「そんなん言われてもわからへん」

将棋世界1993年12月号、神吉宏充五段(当時)の「対局室25時 大阪」より。

近代将棋1993年9月号より、撮影は炬口勝弘さん。

 先日、関西系のテレビ番組「ナイトinナイト」で「羽生五冠王」のタイトルを3つ挙げる問題が出題された。

 司会は桂三枝さん。解説は私で、果たして一般にはどれぐらい棋界の事がわかってもらえているのか興味があったが、男性陣の理解度とはうらはらに、若い女性にはさっぱり。「王様」「将軍様」果ては「一休さん」なんて解答も……。

「そんなん言われてもわからへん」。キャッキャッ笑う女の子に、早くわかってもらえるようにせんと。ねえ、羽生一休さん。

 さて、その司会の桂三枝さんは、大の将棋好き。もっとも関西の芸人さんは皆お好きなようで、近く「上方お笑い将棋部」が出来る。三枝さんが中心になって働きかけておられるようで、私に師範の依頼がきた。

「将棋を教えていただくかわりに、しゃべりを教えましょう」

 うーむ、これは魅力じゃのう……。

 最近は三枝さんに詰将棋をファックスで送ると、すぐに解答が送られてくる。

 関西将棋会館にも顔を出してくださったり、将棋熱はますます盛んな様子。本当にありがたい。

 ところで三枝師匠と私の趣味は偶然にもマジック。先日事務所にお邪魔したときは、将棋盤の傍らにトランプが置かれており、一局終わると一回手品が飛び出す不思議な稽古。一度、鈴木輝彦先生にもご出馬願わねば……。

 そうそう、この出演がきっかけで「ナイトinナイト」のレギュラー出演が決まった。

 毎週火曜日、「神吉宏充のウマイもん待ったなし!」というコーナー。

 関西の食べもん屋さんで、変わった物や、これはという自慢料理などを紹介する、まさしく私にうってつけの企画で、幸せそうにリポートするカンキの顔を見てやってください。

(以下略)

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ナイトinナイト」は、朝日放送テレビで現在も放映されている毎週月~金曜日の深夜のバラエティ番組放送枠。

桂三枝さんは現在の桂文枝さん。

アマ名誉五段ということなので、かなりの強豪だ。

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「羽生五冠王のタイトルを3つ挙げる問題が出題された」

この当時、将棋や将棋界を知らない方が、羽生善治五冠の五冠(竜王、棋聖、王位、王座、棋王)の中から3つ挙げるというのは、超難問だったに違いない。

その良い証拠というわけでもないが、例えば私などは、囲碁のタイトル戦の名称を知っている限り挙げてみろと言われても、すぐには3つか4つしか浮かんでこない。

このような問題は、知らない人から見れば、今も昔も難問であることには変わりがない。

そういう意味では、「王様」「将軍様」「一休さん」など、よくひねり出してきたものだと、感心したくなるほど。

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ほぼ1ヵ月で羽生三冠から羽生五冠になったわけで、五冠になると、急速に一般のマスコミに取り上げられるようになったり、七冠の声を聞くようになったことがわかる。