「講座」カテゴリーアーカイブ

「矢倉は難しくて、わからない」という理由

近代将棋1977年1月号、青野照市五段(当時)の「矢倉のすすめ」より。

「矢倉は難しくて、わからない」

 この言葉は、初級者だけでなく、アマの高段になった人からでさえ、聞かれます。

 では、なぜ矢倉戦法は難しくて、わかりにくいのでしょうか。

(中略)

  この振飛車の戦いのように、戦いは戦い、寄せは寄せというように、区切って進んでいく将棋の方が、わかりやすいといえます。

 従って矢倉の難しさとは、

  1. 序盤の作戦に苦労し、ヘタをすると駒がぶつからないうちから、悪くなっていることがある。
  2. 戦いが始まると、戦線が局面全体に広がり、考えにくくなる。
  3. その際、受けるべきか攻めるべきかという、攻防のアヤが難しく、攻めすぎると切れてしまい、受けすぎるとツブれてしまう。

というような点が、あげられます。

 しかしそれだけに、矢倉には将棋の本質、基本となる考え方が多く含まれており、ある程度マスターすることによって、将棋そのものの力がつくのではないかと思います。

(以下略)

* * * * *

これは矢倉だけに限らず角換わり腰掛銀、横歩取り、相掛かりにも共通していると思う。(この講座は矢倉全盛時代に書かれており、矢倉以外の居飛車はあまり指されていない時期だった)

ただ、角換わり腰掛銀、横歩取りは激しい戦いにすぐに突入することが多いので、観るという観点からは、じっとりとした戦いが長く続く矢倉とはイメージが異なる。

しかし、自分が指すということになると、やはり1~3が重くのしかかってくる。

アマ高段者を除くアマチュアに振り飛車党が多いのも、1~3の逆の理由によるものだと思う。

 

渡辺明五段(当時)「どこがスペシャルなんだ、と思ったあなた、なかなか鋭いです」

将棋世界2004年4月号、渡辺明五段(当時)の「渡辺明の研究ファイル」より。

 こんにちは。まだまだ寒い日が続いています。暖かい春が待ち遠しいです。順位戦もいよいよ佳境、最後のひと踏ん張りです。

 この講座も残すところあと2回になりました。いわゆるラス前ってやつです。ラストはどんな形で締めくくろうかなと今から頭を悩ませています。

 今月はいつものパターンで。まずは大山-内藤戦より(昭和44年2月3・4日、第18期王将戦第3局)

(中略)

 来月でいよいよ最終回。今から構想を練って、感動のフィナーレで締めくくりますか。

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将棋世界2004年5月号、渡辺明五段(当時)の「渡辺明の研究ファイル」より。

 こんにちは。

 1年間お付き合い頂きましたが、今回が最終回です。年度も変わり、気分一新頑張っていきましょう。

 今回は最終回スペシャルとして、自分の将棋から2局取り上げてみます。

 どこがスペシャルなんだ、と思ったあなた、なかなか鋭いです。

 まずは今年2月の銀河戦本戦Aブロック、真田六段との一戦から。

(中略)

 ご愛読頂いた方々、棋譜を使用させて頂いた棋士の方々、ありがとうございました。今回をもって終了させて頂くつもりでしたが、形を変えてもうしばらく書かせて頂く事になりましたので、引き続き宜しくお願い致します(笑)。

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将棋世界2004年6月号、渡辺明五段(当時)の「渡辺明の終盤のセオリー」より。

 皆さん、こんにちは。そんなわけで講座続行の運びとなりました。もうしばらくお付き合い下さい。

 この原稿が皆さんの目に留まる頃には20歳になっています。

(以下略)

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渡辺明五段(当時)の講座が好評だったので、急遽、新しい講座での継続連載が決まったのだろう。

出だしと次号予告は渡辺明棋王らしい面白さ。

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渡辺明棋王の解説は非常に率直で面白い。

このときの講座でも、35年前の大山-内藤戦を渡辺流でわかりやすく解説している。

最新の解説もさることながら、江戸時代以来の過去の名局・好局を渡辺明棋王が解説するという本あるいは番組があれば、多くのファンに喜ばれると思う。

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最近、6枚落ちを人に教える必要があったとき、いろいろと調べて最も参考になったのが、渡辺明棋王のブログの過去の記事。

わかりやすく、かつ論理的だ。

6枚落ち考察1。(渡辺明ブログ)

 

藤井猛九段「見ていて退屈な展開は指している方も退屈だ。しかしやっぱり無理は良くない。地味で眠くなる展開こそ順位戦の味だ」

将棋世界2003年8月号、藤井猛九段の「藤井の実戦思考」より。

 お盆の空気が抜けない8月半ば過ぎ、ジリジリとしたアスファルトの照り返しの中を将棋会館へ向かう。千駄ヶ谷の駅からの距離がいつもより遠く感じられるのは暑さのせいだろうか。

 B級1組の順位戦には初参加。2連勝と滑り出しは良かったものの、前局で黒星を喫する。下位は3敗が昇級ラインだが、ここで連敗しては望めまい。しかも今日の相手は昇級筆頭候補だ。

 郷田八段(当時)が着座して対局が始まる。順位戦は予め先後が決まっているので振り駒もなくいつも始まりは静かだ。(郷田さんの先手だが便宜上先後逆)

 1図は藤井システムの構えから▲4八玉とした局面。

 居飛車は端歩を受けているので穴熊には組みにくいだろうと玉を上がるが、それでも△3三角(2図)と来た。

 これは一見穴熊を目指した手だが、素直にそう解釈してよいものかどうか。

 本気で穴熊を目指すつもりだろうか?だとすれば早い時間に決闘になる。昼食の注文は蕎麦ではなくうな重にするべきだったか?しかし端歩を受けてから組むのは危険だ。恐らく他の囲いを目指しているに違いない。

▲4六歩△2二銀

 これで早期決戦はなくなった。自分の推理が当たると嬉しいのはミステリーも将棋も同じだ。やはり蕎麦でよかった。

(中略)

 進んで3図。△1二玉は▲2五歩の仕掛けを警戒した堅い手ではあるが、やや妥協した感のある手。

 この手の狙いはなんだろう?ここから普通に駒組みが進むとB図のような局面が予想される。この展開はまさに一局としか言いようがないが、千日手模様になることがある。

 本局は実際私は後手番なので不満はないが、先手の居飛車側にとってはどうだろう?B図よりもう少し欲張った図を目指していると見た方が良さそうだ。△1二玉以下▲3九玉△3二金▲2八玉に△5一銀が狙いではないか?以下4二~2二へ銀を移動するとC図のように進む。

「現代風の居飛車は隙あらば4枚で固める手を常に狙っている」のである。この局面は玉が堅い上に角筋が通っているのが大きい。C図になっても振り飛車が悪い訳ではないが気分的に面白くない。10数分考慮の後対抗策を思いつく。

 ▲2七銀(4図)が工夫の手。

 直接の狙いは▲1八飛からの玉頭攻めだが、そう指さなくとも▲3八金で普通の形に戻せるので損はない。

 △5一銀なら▲1八飛△4二銀▲1五歩△同歩▲同飛△1四歩▲1八飛△3一銀▲1六銀△2二銀▲2五歩△同歩▲同銀△2四歩▲1四銀(D図)で大優勢。

 これはうまく行き過ぎで、途中△2二玉と避難するのだろうがそれでも▲2五歩△同歩▲同桂△2四角▲6五歩(王手)の筋があり居飛車が大変だ。

 思考を巡らせているうちに色々面白い筋も見えてきた。よし、△5一銀ならこの手で行こうと自信が湧いてきた矢先、僅か2分で△4四歩。

 あれ?なんだ、相手は最初からそちらの予定だったのか。△5一銀を心配して損した。今度の推理は空振りか。

 それならそれで、こちらも当初の予定通り▲3八金で不満なしなのだが、それだと相手の手を殺し合う地味な展開が必至。一度D図のような一気に必勝形の手を夢見てしまうとどうしてもそちらに魅力を感じてしまう。ただでさえこの暑くて眠い時間帯に地味な駆け引きは冴えない。△4四歩にも▲1八飛はどうだろう?以下△4三金右▲1五歩△同歩▲同飛△1四歩▲1八飛に△2二玉でさすがに無理か。しかし何かないか?どんどん読みが本筋から外れて行く。

 見ていて退屈な展開は指している方も退屈だ。しかしやっぱり無理は良くない。地味で眠くなる展開こそ順位戦の味だ。▲3八金。自然に指すのが一番だ。危ない時間帯だった。

(以下略)

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この回の講座は、

「気持ち良く玉を固められて気持ち良く攻められてはなかなか勝てない」

それを防ぐべく、巡らせた思考の揺れを体感していただけたろうか。

で結ばれている。

対局中の揺れ動く気持ち(優勢を感じて、早く終わって飲みに行こう、などと考えてしまうことなども含めて)が語られた自戦記は、間違いなく面白くなる。

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「本気で穴熊を目指すつもりだろうか?だとすれば早い時間に決闘になる。昼食の注文は蕎麦ではなくうな重にするべきだったか」

昭和の頃であれば、居飛穴に対しては振り飛車側も陣形を整備しつつ持久戦になったものだが、藤井猛九段の場合には、相手が穴熊を目指した瞬間に藤井システムが発動されるので、早い時間からの決戦となる。

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「一度D図のような一気に必勝形の手を夢見てしまうとどうしてもそちらに魅力を感じてしまう」

予定されていたお祭りや飲み会が、当日の夕方になって急遽中止になってしまったときの気持ち、に似ているのだろう。

真っ直ぐに家に帰るのが好手であるのに、気持ちが成仏できなくて、ついつい一人で夜の街へ出かけていってしまい、たくさんお金を使い過ぎて、あとで後悔をしてしまうことも多い。

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「自分の推理が当たると嬉しいのはミステリーも将棋も同じだ」

ミステリーは推理が当たらなかったときの方が嬉しい、自分の想像を超えた意外な展開だからこそ楽しめる、という考え方もある。

ミステリーの推理が当たると嬉しいというのも、勝負師ならではの感じ方かもしれない。

 

藤井猛九段「注意書きをよく読んで、用法用量には充分御注意ください」

将棋世界2003年7月号、藤井猛九段の「藤井の実戦思考」より。

 3ヵ月間自戦解説を通し、一見当たり前に思える一手の裏の、普段あまり語れない思考の中身を披露していきたい。正統的、表向きだけではない、実戦的裏技的考えも紹介したいと思う。

「5筋不突き美濃囲い」

 平成10年に行われた第69期棋聖戦、谷川浩司竜王・名人(当時)との一戦から(便宜上先後逆)。

 1図は△4二金上と舟囲いを完成させたところ。美濃囲いは▲5七歩型(5筋不突き)美濃。5筋の歩を突いているかどうかで美濃囲いの堅さが大きく違ってくることを覚えていただきたい。

 A図は▲5六歩型の美濃囲いで、実戦では一段竜と6六角のラインで3九の地点を狙われる場合が多い。

 これに比べてB図。今度は5筋不突きなので、段違いに堅いことが分かっていただけると思う。

 しかし、四間飛車対居飛車急戦の定跡書では、ほとんどが5筋の歩を突いた美濃囲いで解説されている。5筋の歩を突かない美濃囲いは駒の捌きが難しいからだ。

 例えば、角を6八に引く展開になったとき、▲5六歩は省けない一手になってくる。

 本局は、光速の寄せ対策として玉の堅さを重視し、5筋不突きのまま捌けるよう工夫した。

 第一の工夫が▲9六歩(2図)。

 この場合、居飛車が急戦で来ているので、厳密に言えば緩手かもしれない。

 しかし、端歩は一手パスになるかもしれないが、マイナスにはならない手。戦いの中で▲9七香や▲9七桂と指せるのは大きい。自分の過去の対局でも、端歩が利いて勝利に結びつくことが多々あった。

 端歩を突くか突かないかは、綿密な研究のもとに決めているわけではない。経験が私に知らせてくれるのである。

 これに比べ、戻って1図から▲5六歩や▲5八金左とするのは、価値も高いが、展開によってはマイナスになる可能性もある(もちろん悪手ではない)。

 2図から△6四銀▲7八飛△7五歩▲6八金と進んで3図の局面。

 居飛車としては端歩を緩手にしたいので、素早く仕掛けて来た。

 ここは▲6八金が受けの形。△7六歩▲同銀△7二飛と攻められても▲8八角と引き、△7七歩には▲同金で大丈夫。

 3図から△7六歩▲同銀△7五歩▲6七銀△7三銀引と進んで4図。

 ここから部分的な定跡手順として、主に3通りの指し方がある。

  1. ▲5六歩△7四銀▲5七金△6四歩(D図)
  2. ▲7六歩△7四銀▲7五歩△同銀▲6五歩(E図)
  3. ▲7六歩△7四銀▲9五角(5図)

 中盤戦で一番難しいのがこのような局面。どの道に入っていくかでその後の運命が大きく変わってくる。

1.D図は無難な手でこれも一局の将棋だが、▲9六歩と指した精神に反している。

2.E図はこの場合無理筋で、△7七角成または△5五歩で不利。▲6八金・▲5七歩型では成立しない。

3.5図も一見すると無理だが、▲5七歩・▲9六歩型が生き、逆に居飛車側は△4二金型がマイナスになると判断。これを選択した。

 5図から△7六歩▲同銀△6六角には▲6七銀がピッタリした手。

 △9四歩にも▲6二角成△同飛(△同金は▲7一銀)▲7五歩△8三銀▲7四歩△8四銀▲7三銀(F図)で、いずれも振り飛車よし。

 また5図から△7六歩▲同銀△9四歩が有力な手だが、強く▲6二角成△同飛▲6五銀△同銀と進め、ここで銀を取らずに▲7一飛成(G図)が好手。

 G図では瞬間的に角損になっているが、「5筋の歩を突かない美濃囲いは、銀損や角損でもいい勝負」※注意書きをよく読んで、用法用量には充分御注意ください(笑)。

 自玉が鉄壁なので攻めさえ続けば多少の駒損は関係ない。

 G図から△6六銀なら▲8一竜、△6六角なら▲7七桂(H図)で振り飛車優勢。

 ちなみにH図で▲5六歩型の美濃囲いだと△3九銀▲同金△同角成▲同玉△9三角の王手竜取りを喫してしまう。

 実戦は5図から△8六歩▲同角△7六歩▲同銀△7五歩▲同銀△同銀▲同飛△6六角▲7六飛と進み6図となった。

「△4二金型を狙う」

 ここからの手順は△4二金型を咎めた動き。

 6図から△9九角成には▲7一銀△8六飛▲同飛(▲同歩は△7三銀)△7一銀▲8一飛成(I図)となる。

 △4一金型なら△6二銀とされ振り飛車劣勢となるところも、I図では逆に必勝。△4四馬にも▲7二歩が利く。

 本譜は△8八角成▲7一銀△8七馬▲4二角成(7図)と進む。

 ▲4二角成が豪快で気持ちよい手。

 このような手を指す時は、駒音高く、加藤一二三先生になりきった手つきで指しましょう(笑)。

「守りの金と角の交換は金が良い」

※同じく用法用量に注意(笑)。

 以下△4二同玉▲7五飛△8六馬▲8二銀成△7五馬▲7二成銀(8図)。8図は難しいが振り飛車ペース。

(以下略)

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講座の中に、ボソボソっと「※注意書きをよく読んで、用法用量には充分御注意ください」と突然出てくるのが、藤井猛九段らしいところ。

この後、(「金底の歩岩より堅し」※これは普通の格言)という箇所も出てくる。

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「5筋の歩を突かない美濃囲いは、銀損や角損でもいい勝負」

「守りの金と角の交換は金が良い」

たしかに、全てのケースでは当てはまらないかもしれないが、非常に参考になる格言だ。

将棋の格言の中には「遊び駒は活用せよ」「玉の早逃げ八手の得」のように実際に役立つ格言もあるが、「三桂あって詰まぬことなし」のように古来から疑問視されている格言もある。

それに比べれば、注意書きをよく読まなければならない劇薬的な格言の方が実戦の役に立つ可能性が高い。

用法用量には充分注意をしなければならない『藤井猛流格言集』が出版されれば、かなり人気が出そうな感じがする。

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昔の本で読んだ記憶があるが、「三桂あって詰まぬことなし」は「計算(=三桂=桂三)すれば詰まぬことなし」という意味だとする説もあるようだ。

 

「▲7六飛と浮いた形が仮面ライダーの様にカッコ良く思えて、いつも心の中で『トウッ、ライダー変身』と叫んでいました」

将棋世界2003年8月号、泉正樹七段(当時)の「一触即発 升田式石田流」より。

 将棋を覚えた頃の強烈な印象は時が数十年経過しても脳裡に残っているもの。

 昭和46年の大山-升田の名人戦に子供心にも感動し、升田式石田流に熱中し1年程で初段にかけ上がった。

 振り飛車を指すときは三間飛車と決めていた訳で、特に、▲7六飛と浮いた形が仮面ライダーの様にカッコ良く思えて、いつも心の中で「トウッ、ライダー変身」と叫んでいました。

 形を見よう見まねでも、町道場のおじちゃん相手なら縦横無尽、「ライダー2号一文字隼人は改造人間である……ショッカーの地球征服を阻むため…」といった調子で連勝街道爆進!

 やさしいおじちゃん達は「ボウヤ、こんなに強いんだからプロを目指しな。だけどなボウヤ、将棋指してる時に仮面ライダーの歌うたっちゃいけネエな、奨励会はスゴく厳しいんだからさ」お調子者の正樹少年を正してくれていました。

 升田先生の奇想天外な戦法を理解し始めたのは奨励会入会を果たした後のこと。

 先輩達に教わりつつ試しても全然通用しない。相手が強ければどんな戦法を使っても跳ね返されるだけ。5級の頃、「升田式石田流を指しこなすのはヒゲツラで怖くなきゃムリ」と悟り使用禁止にしました。「光陰矢の如し」で早や30年。過去を振り返り思うことは、人間の記憶というものはいかにあいまいで、いい加減なものかということに気付かされます。

 なんと棋士泉は、あの時封印したはずなのに数年前からちょくちょく用いているではありませんか!それも研究会ならともかく、よりによって棋士の本義ともいうべき順位戦で。

 酒を生涯の友と定め数十年、敗戦の度に決意した約束事をも簡単に放り出してきた気がする。

 お酒というものは程度を守っていれば本当にいい気分にさせてくれますけれども、危険区域を突破しようものなら「ガルッガルルッまだお金おもってるんだから飲ませてくれてもいいでしょう~」と、宵越しの銭放銃モードで怪物化します。

 ですから、禁断だろうと封印だろうと平気で忘れちゃって、しばらく経っても失敗に気づかない。

 頭がイカレているのを棚に上げお酒のせいにするのは最悪。少しずつ直そう。

 さて16頁の講座ともなれば周到な用意が必要ですが、正直いって準備不十分。

 これでは升田先生の怖い目が気になりますが、後戻りはできないので始めます。

(以下略)

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野獣猛進流の泉正樹八段。

「ガルッガルルッ」が出てこないと納得しない将棋世界読者、近代将棋読者も多かったと思う。

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アマチュア時代は振り飛車党でも、奨励会入会あるいはプロになってから居飛車党になっている棋士が多い。

逆の流れで、アマチュア時代に居飛車党で奨励会に入ってから振り飛車党になったのは窪田義行七段。

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一番最初の『仮面ライダー』 は、1971年4月から1973年2月まで放送されていた。(泉八段が10歳から12歳の頃)

仮面ライダー1号が本郷猛(藤岡弘さん)、仮面ライダー2号が一文字隼人(佐々木剛さん)。

泉八段は、仮面ライダーの放送が終わった年に奨励会に入会している。

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泉八段の実家は東映大泉撮影所の近くで、その関係もあって泉八段が子供の頃は、東映制作のテレビドラマ『柔道一直線』や『ジャイアントロボ』に子役として出演していた。

『仮面ライダー』 も東映の制作。(撮影は東映生田スタジオ)

泉少年にとっては、仮面ライダーの格好良さに加えて、東映に対する愛着もあったのかもしれない。

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泉正樹八段の若い頃→「関東若手棋士 地獄めぐり」