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中座真四段(当時)「この手は、お腹を空かした羆の目の前でニコニコ笑いながらお弁当を食べているようなもので、もの凄く大胆な一着です」

将棋世界2000年3月号、中座真四段(当時)の「横歩取り△8五飛戦法」より。

 将棋には、実際に踏み込んでみなければ分からない、という局面が数多く存在します。森下八段は、以前自戦記の中で、「将棋の実戦を大海とすれば、机上の研究は小川のようなものである」と書かれていました。△8五飛戦法が出始めてから約2年半、指された将棋は既に二百数十局に及びますが、解明されたと思える形はまだほとんどないのが現状です。

 1図。この局面での「△7三桂」も研究課題の内の一つ。

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 この手は、少し前までは、誰もが知ってはいながら、怖くて指せなかった一手でした。

「この変化は誰かが犠牲になってくれなきゃ分からないね」。巷ではそんなことまで囁かれていましたが、この局面に敢然と踏み込んで行ったのが中原永世十段(1999年8月31日対阿部七段戦)。その日はたまたま連盟に居合わせたのですが、その将棋の中身が面白く、私は職業も忘れすっかりファンの一人になって楽しんでしまいました。

 今月はこの「△7三桂」がテーマ。

(中略)

 「△7三桂」この手を指すにはまず、幾つかの条件があります。

  • 完璧に研究している
  • 受けには滅法自信がある
  • 裸の玉が好き
  • 王手飛車を掛ければ負けても満足

 一つでも該当する方はぜひ実戦で試してみてください。当てはまらない方(正常です)は、△8八角成と交換してから△7三桂と跳ねましょう。こちらの変化は先月号の講座を参照してください。

 冗談はさて置き、なぜ「△7三桂」が激しい手なのか、まずはその説明から入っていきましょう。

 先手の▲3五歩は「私は次に▲3三角成△同桂▲3四歩と攻めますよ」ということを意思表示した手です。それに対し後手は「あなたの攻めは全然怖くありません」と、構わず桂馬を跳ねてしまうのです。次に△3五飛と取られると、先手は何のために歩を突いたのか分かりません。

(中略)

 後手が受けないのですから、ここで先手が攻めなければ男が廃るというものです。

1図以下の指し手
▲3三角成△同桂▲3四歩△4五桂▲3三歩成△5七桂成(途中図)▲同玉△3五角▲5八玉△2六角▲3二と△同玉▲6六角△4四角(2図)

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 ▲3三角成からは熾烈な攻め合いに入ります。途中図△5七桂成に対し▲6九玉と引く手も考えられますが、以下△3三銀▲2一飛成△3一歩となり後手がやや指せる局面です。

 △3五角で早くも王手飛車が掛かりました。▲5八玉もこの一手、他の手では△6五桂が王手になるので先手が持ちません。▲6六角が急所の一着、攻めと同時に△5五飛の筋を消す等、受けにも利いています。△2六角と▲6六角では角の働きが違うので、後手の△4四角もこの一手。但し角交換になると玉のコビンが開いてしまうので後手も気持ちの悪い所です。2図から枝分かれして行きます。

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 実戦譜を参考にして、まずは阿部-中原戦から。

2図以下の指し手
▲2四桂△3三玉▲4四角△同歩▲3二金△2四玉▲2二金△3三玉▲1一金△6五桂▲5七歩△4五桂▲6八銀△5四歩(3図)

 阿部七段はここから▲2四桂と激しく攻めていきます。中原永世十段の玉の動きはまさに「神業」。玉で相手の攻め駒を攻めています。このように玉をうまく使うことができたら将棋は楽しいでしょうね。それにしても自玉を放って置いて、さらに両桂をぴょんぴょん跳ねて攻撃して行くのにはたまげてしまいます。

 最後の△5四歩が絶妙の間合い。玉の懐を広げると同時に、次に△5五歩を見せ先手を焦らせる狙いがあります。

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(中略)

 2図での▲2四桂の所では、現在は▲4四同角△同歩▲6八銀が主流となっています。これは、先手陣は何れ一手受けが必要になるので、手を決めない方が得という判断です。この例の参考棋譜は、王座戦第1局、羽生-丸山戦(1999年9月3日)から。

2図以下の指し手
▲4四同角△同歩▲6八銀△3六歩(4図)

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 羽生王座の▲6八銀に対して、丸山八段はじっと△3六歩。この手は私の「昨年驚いた手ベスト3」に入る一着です。結果的には疑問手になりましたが、羽生王座相手に、堂々とこの手を指せるのは、丸山八段ぐらいでしょう。この手は、お腹を空かした羆の目の前でニコニコ笑いながらお弁当を食べているようなもので、もの凄く大胆な一着です。実戦は4図から▲3四金△6一角▲4四金△2八歩▲2三歩△3三銀▲同金△同玉▲2二角△4二玉▲1一角成で先手良しとなっています。

 その後△3六歩では△2八歩が後手の有力手段となりました。次はその将棋を研究してみましょう。

(以下略)

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中座真四段(当時)の絶妙の解説。

このような面白くて理解しやすい解説なら、難しい△8五飛戦法も勉強してみたくなるというものだ。

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羆(ヒグマ)は体長1.8~3.0mで体重は100~500kg程度。

基本的には雑食で、鹿、猪、ネズミなどの哺乳類やサケやマスなどの魚類、果実を主に食べるが、一度でも人を食べるとどんどん人を襲うようになるという。

弁当の中身も当然ヒグマの食べ物になってしまう。

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1図の△7三桂に端を発する、実戦が繰り返されることによる試行錯誤と定跡の発達。

この過程と、その中から繰り出されるその棋士の個性に溢れる指し手。こういったところが人間同士の対局の面白いところであり醍醐味だ。

これが仮にコンピュータソフトによる研究が大勢を占める世の中になったら、ここに現れているような過程は全て水面下で研究しつくされ、そもそも1図の△7三桂という手自体が実戦に現れる前に却下されたものになっているかもしれない。

それはそれで良いのかもしれないが、個人的には少し寂しいような気持ちにもなってくる。

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日本将棋連盟のホームページがリニューアルされたが、英語版がGoogle翻訳そのままになっている部分があって、例えば、中座真七段の名前は「Excuse true」になっていた。(現在は修正済み)

ネット上で話題になっていたようだが、結構本人は気に入っていたと、奥様の中倉彰子女流初段がtwitterで明かしている。

私の名前もGoogle翻訳で試してみたが、読みは違っているものの、まともな翻訳のされ方だった。

Google翻訳にかかると加藤一二三九段が「Kato, one hundred twenty-three」になるなど、いろいろな新しい発見ができるようだが、普通に出てきてしまうと、少しガッカリしてしまうことに気がついた。

 

 

森信雄四段(当時)のとてもわかりやすい1ページ講座「詰将棋の作り方」

将棋世界1984年6月号、森信雄四段(当時)の1ページ講座「詰将棋の作り方」より。

 将棋を指すには相手が必要ですが、詰将棋は一人でも楽しめます。

 そして、詰将棋は解くのも勿論ですが、作るという楽しみ方もあるのです。

 私はどちらかと言うと、作るより解く方が好きですが、それでも随分作りました。

 余り満足のいく作品は少ないのですが、上手、下手に関係なく楽しめるものだと思っています。

 それではどうやって作るのでしょうか。

 初めて作ってみよう、と思った人のために易しい詰将棋の作り方を説明します。

 いちばん作り易いのが、詰め上がりから逆算する方法です。

1図。

▲3三銀成までの詰みですが、これを素材に作っていきます。

森信雄詰将棋1

2図。

森信雄詰将棋2

 ▲1三歩△同竜▲2一竜△2三玉▲3三銀成までの詰み。

 1三の地点を埋めてから、▲2一竜から▲3三銀成までの詰め上がりを狙ったものです。

 これだけではまだ詰将棋とは言えません。

3図。

森信雄詰将棋3

 ▲2四桂△同竜▲1三歩△同竜▲2一竜△2三玉▲3三銀成までの詰み。

 打ち歩詰めを打開するために、▲2四桂と捨てて竜を呼び、それから▲1三歩以下1図の詰手順となります。

 この様に詰将棋を作る時は、いろんな手筋を組み合わせていきます。

 ただ手筋の組み合わせだけでは、易しいし物足りません。

 その中にも、自分の個性を出すのが大切な事だと思います。

4図。

森信雄詰将棋4

▲2一竜△2三玉▲3二竜△1二玉▲2四桂△同竜▲1三歩△同竜▲2一竜△2三玉▲3三銀成まで11手詰。

 初めの4手を付け加えて一応完成です。

 ただ初手に▲2一竜と駒を取るのは、詰将棋としてはどうかと思いますが、手筋ばかりでなく俗手を入れるのも、自分の好みでいいと思います。余り参考になる良い詰将棋ではありませんが、1図の素材から、4図の詰将棋ができました。

 皆さんも是非一度作ってみて下さい。

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なるほど、自分の実戦の中から自分で会心を思う詰み手順を記録しておいて、そこから逆算的に詰将棋を作るのが、初めて詰将棋を作るときには良いかもしれない。

あるいは、プロ棋戦のネット中継で現れた気に入った詰み手順をベースに逆算的に作る手もありそうだ。

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今回初めて森一門祝賀会に出席する。

いつもはイベントの世話役的な立場であることが多いのだが、この日は、一将棋ファンとなって楽しんできたいと思っている。

また、前日の将棋ペンクラブ関西交流会でも森信雄七段にお会いできる。

今から楽しみでならない。

 

 

好事魔多し

将棋世界1984年3月号、神谷広志四段(当時)の「1ページ講座」より。

 1図は部分図ですが、穴熊の敵玉をどう寄せるかという所です。

 候補手をいくつかあげておきますので第一感で答えてみて下さい。

 分かりやすくするため後手の持駒はなしとしました。

A ▲7二と
B ▲6三と
C ▲7二金
D ▲8二金
E ▲7三竜
F ▲8一竜

神谷1

 まずAの▲7二とは以下△同銀▲同竜と進みます。と金と銀の交換で得をしたようですが▲7二同竜とした局面が詰めろになっていません。しかも桂以外の駒を相当もらっても後手玉は詰まない形をしていますので、一手争いの終盤では大抵負けになるでしょう。

 Bの▲6三とは、この手自体が詰めろではなくAと同じ理由で失敗です。

 Cの▲7二金は以下△同銀▲同ととなり後手玉は必至です。自玉が詰まない場合はこれで勝ちですが、もう少しうまい手を考えて下さい。(金1枚の持ち駒の時は、これが最善の寄せでしょう)

 Dの▲8二金は詰ましにいった手ですが、△同銀▲同竜△同玉▲7一銀△7三玉▲6三金△8四玉で詰みどころか逃がしてしまい大失敗です。

 Eの▲7三竜は△同桂には▲8二金以下詰みですのでこれで必至となります。金を渡さないだけCの▲7二金より優れていますがもっといい手があるためここでは次善手ということになります。

 Fの▲8一竜が正解。以下△同玉▲7一金△9一玉▲8一金打の並べ詰めになります。当たり前といえば当たり前でバカみたいな問題に見えますが、実戦でA~Eまでの有力手段がある時は案外逃したりするものです。何故かといいますと、7一の駒が竜ですので非常に切りにくいのです。これが2図のように▲7一との形ならば、間違える可能性もずっと低くなるでしょう。

神谷2

「終盤は駒の損得よりも速度」いつもこの格言を肝に銘じたいものです。将棋は大駒が命ではありません。

——–

私は1図を見て▲7三竜と思ったのだが、正解を見て愕然。

手段が多くて、そのどれもが心地良く思えるものであった場合、このように間違うことが多いということだ。

アマチュア同士の対局で、あまりにも優勢な方が逆転負けしてしまうことがあるが、やはりこのような積み重ねがあってのことだろう。

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休みの前日の仕事が終わった夕刻、自由に使えるお金が50万円、財布の中に入っている。

「さて、これからどうしよう」

このような時に悪手を指してしまいがちになるのが人生だ。

 

「お前はもう死んでいる」というような中盤の一手

将棋世界1971年1月号、内藤國雄八段(当時)の連載講座「駒の交換」より。

或る決闘

― 一閃、櫂と太刀を交えさっと別れた二人。

 一方の鉢巻は額で割れて落ち、それを見て相手は笑みを浮かべた。だがその直後血へどを吐いて倒れたのは笑みを浮かべた方だった―

 御存知、武蔵と小次郎巌流島の決闘である。

 駒と駒の激しいぶつかり―交換は正に太刀を切り結ぶ時に似ている。盤上に火花が散るのもこの時である。

 不注意な駒の交換はそれまでに要した布陣の苦心を水の泡にしてしまうだけでなく、しばしば取り返しのつかない深手を追わせてしまう。かといって臆病に駒の衝突を避けてばかりいては次第に窮地におちいってしまうものである。

 要するにここぞと思う所では大胆に、且つ細心に駒の交換を買って出るべきである―とまあ云うだけのことならやさしい。

 駒の交換にあたってどのような点に注意すべきか、基本的なもの重要なものは何か、そういったことについてこれから学んでゆきたいと思う。その前に次の実戦譜を見ていただこう。

或る名人戦

 1図は後手△5六歩と「垂らしの歩」を打った局面、名人戦に生じたものである。

 このあと先手は▲5五歩と打ち双方徹底的な取りあいが始まり1図より19手ののち、後手が投了した。切り合いを買って出た△5六歩の手ですでに勝負がついていたということになる。

内藤1

1図以下の指し手
▲5五歩△4五歩▲5四歩△4六歩▲6三銀△5七歩成(2図)

▲6三銀に後手△5七歩成とあくまで取り合いに出た、というのもここではもう、せきとめることが出来ない急流になっている。たとえば△5七歩成の手で△7三飛と受けに廻る手は▲5二とがある。以下△6三飛▲4二と△同金▲7四金△6一飛▲6四金△同飛▲7五角。

 2図では特に双方の玉型の差に注目していただきたい。

内藤2

2図以下の指し手
▲7四銀成△6八と▲6四成銀△5八と▲5三歩成△4九と▲4三と△同金▲5四銀△同金▲5二飛△3三玉▲5四成銀(3図)にて先手勝ち。

内藤3

 3図では後手△3九とだと即詰めがある。

 △3九と▲4三金△2四玉▲2五歩△1三玉▲2二飛成△同玉▲3一角以下詰み。

 勝敗を決したのは玉型の差である。先手側、玉のふところの広さはこの種の直線的交換を非常に有利にしている。

 最終図(3図)で△3九とと来られても王手にならないところが味噌。

(以下略)

——–

本局は調べてみると、1969年4月の名人戦、大山康晴名人-有吉道夫八段(当時)戦。

1図の△5六歩に対して▲5五歩と指されて、既に後手は手遅れというのだから凄い。

漫画『北斗の拳』の主人公・ケンシロウが「お前はもう死んでいる」と言っているのに等しいような▲5五歩だ。

お互いが一本道で駒を取り続ける。

意地や気合ではなく、それが一番正しい順だから。

たとえば2図の△5七歩成を▲同歩と相手にしたりすると、変化手順に示されている△7三飛▲5二と△6三飛▲4二と△同金▲7四金△6一飛▲6四金△同飛▲7五角の、最後の▲7五角が指せなくなってしまう。

とにかく壮絶な一本道だ。

——–

私だけかもしれないが、宮本武蔵と佐々木小次郎について、巌流島の決闘以外のことをほとんど知らない。

NHKの大河ドラマでも2003年に「武蔵 MUSASHI」が放映されていたようだが、私は一度も見ていない。

私の大河ドラマの傾向ははっきりとしていて、今世紀に入ってからでも、(◯…ずっと見ていた △…途中で脱落 ☓…はじめから見ていない)

2001年 北条時宗 ◯
2002年 利家とまつ ◯
2003年 武蔵 MUSASHI ☓
2004年 新選組! ☓
2005年 義経 ◯
2006年 功名が辻 ◯
2007年 風林火山 △
2008年 篤姫 ☓
2009年 天地人 ☓
2010年 龍馬伝 ☓
2011年 江 △
2012年 平清盛 ◯
2013年 八重の桜 ☓
2014年 軍師官兵衛 ◯
2015年 花燃ゆ ☓

という具合。

戦国大名系、源平系は大好きだけれども、明治維新系が大の苦手。宮本武蔵を見なかった理由はわからない。

来年の「真田丸」は非常に微妙な路線だが、今回調べてみると、主人公の堺雅人さん以外にも、

織田信長=吉田鋼太郎
豊臣秀吉=小日向文世
上杉景勝=遠藤憲一
大谷吉継=片岡愛之助
真田昌幸=草刈正雄
本多正信=近藤正臣
北条氏政=高嶋政伸

などの超個性派俳優をはじめとして豪華キャスティング。

きっと見ると思う。

 

村山聖五段(当時)の振り飛車講座(3)

将棋マガジン1991年10月号、村山聖五段(当時)の連載講座「ダイナミック振り飛車戦法」より。

 最近、身も心もボロボロである。なにしろ勝てない、勝てない、頭痛がする位勝てない。

 しかも後手番だらけだ。

 9局やって8局後手、振り駒のたびに後手になる。

 ああ、僕に振らせてくれ、奨励会の時は振り駒の練習をして、好きな様に歩やと金を出せたのに。

 その内に先手番ラッシュがやって来るのだろうか。

 まあ負けた時の言い訳は置いといて。負けた時には少し落ち込みます。そんな時は音楽を聴いたり、旨い食事でもして気を紛らわせます。

 人生を楽しく生きるには、後悔をしない事、それが一番です。

(そう簡単に行きませんけれど)

 

 僕が振り飛車をやらなくなった理由は、実は急戦というやつの対策が解らないからです。

 しかし居飛車が優勢になっても玉の堅さが違うので、振り飛車は粘っている内に逆転する、というのは多々ある事です。その点は振り飛車党の方は良くご存知でしょう。

 一概に急戦といっても何通りもあり、その対策も入れるととても書ききれないので、2、3通りを紹介する位にしておきます。

初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲2五歩△3三角▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲9六歩△9四歩▲5八金右△8二玉▲6八銀△7二銀▲3六歩△5二金左▲5七銀左(基本図)

村山24

 手順中▲9六歩を手抜きしたり、△5二金左ではなく△4三銀~△3二金と指す順も考えられますが、一番多く見かけるのが基本図でしょう。

 先手が▲5七銀左で▲5七銀右と指すのは将来、4筋が少し薄そうです。

 さて基本図で色々な手があります。

基本図以下の指し手①
△6四歩▲3五歩△同歩▲4六銀△3六歩▲3五銀△4五歩▲3三角成△同銀▲8八角(1図)

村山25

 まず△6四歩と突く手が一番自然だと思います。

 これに対して先手は▲3五歩から▲4六銀と弱い角頭を狙って攻めて行きます。ここで△3六歩と突くのが手筋です。この手の感覚を覚えておいて下さい。

 ▲3五銀に△4五歩と角を捌きつつ飛車先を伸ばします。

 先手は▲8八角で▲2四歩△同歩▲同銀と行きたいのですが、以下△同銀▲同飛△3三角と打たれて思わしくありません。

 ▲8八角と打たれた局面で△5四角あるいは他の手ですが、余り自信がありません。勝負がつくのはまだまだ先ですが、この局面は少し振り飛車が悪そうです。

基本図以下の指し手②
△4三銀▲4六歩△5四歩▲4五歩△6四歩▲3七桂(2図)

基本図以下の指し手②

△4三銀▲4六歩△5四歩▲4五歩△6四歩▲3七桂(2図)

村山26

 振り飛車が△4三銀と角頭を守るのも普通の手です。

 これに対して先手が▲4六銀から▲3五歩と攻める手もあると思うのですが、▲4六歩と突かれる方が僕は嫌です。

 恐らく2図の様になり互角とは思いますが、振り飛車としては少々不満な陣形です。いつでも先手に仕掛ける権利があるからです。

基本図以下の指し手③
△5四歩▲9七角△4一飛▲8六角(3図)

村山27

 △5四歩と突いた時に▲9七角と出るのが山田定跡の一手です。

 △4一飛と引いた時に▲7九角と引く手もあるみたいですが、僕は▲8六角と指される方が嫌です。

 3図で後手は△1四歩位だと思いますが、▲1六歩と受けられ少々指し手に窮します。

 ▲6六銀から▲6八角の筋がいつでも気になるからです。

基本図以下の指し手④
△1二香▲6八金直△5四歩▲3八飛△4三銀▲3五歩(4図)

村山28

 基本図で△1二香と上がる手がありあす。

 これは△6四角の筋を残して急戦に備えようという意味です。

 先手は▲6八金直と自重しました。

 後手は△5四歩と突きます。今度は▲9七角と出られても▲4一飛と引いて引き角の筋になりません。

 先手は▲3八飛と回ってきました。この手に△4五歩と突くのは▲3三角成△同銀▲3一角が嫌です。

 △4三銀に先手は当然▲3五歩と突いてきます。

4図以下の指し手
△3五同歩▲4六銀△4五歩▲3三角成△同桂▲3五銀△2五桂(5図)

 △3五同歩に▲同飛なら△3二飛と回って振り飛車充分です。

 先手が▲4六銀と数を足した時に軽く△4五歩と突くのが良い手です。

 ▲3三角成△同桂▲3五銀と攻めた時に△2五桂と目標物をドンドン捌いて行きます。

村山29

5図以下の指し手
▲3四歩△3二飛▲2八飛△2四歩▲3三角(6図)

 先手は▲3四歩と押さえ込みに来ました。

 これに対して怖がらず△3二飛と回り3筋の逆襲を狙います。

 先手は△2七角と打たれる手があるのでそれを消しつつ桂取りに▲2八飛と回ります。

 ここでも軽く△2四歩と突くのが味わい深い好手です。

 先手は次に△3四銀と大事な歩を取られてはいけないので▲3三角と打ちました。

村山30

6図以下の指し手
△4二角▲1一角成△3四銀▲同銀△同飛▲1二馬△3五飛(7図)

 6図で、放っておいて▲2四角成と成られてはいけません。

 △4二角と打つのが良い手です。もし先手が▲2四銀と出ても△3四銀と歩を取れば充分です。

 先手が▲1一角成とした時に△6四角と飛車取りに出て、それを受けた時に△4二金と寄っても振り飛車が指せそうです。

 △3四銀と出た時に▲2一馬と寄ってきても、△2三銀と引いて▲4四銀に△6四角(変化A図)と出れば優勢です。

村山32

  本譜、▲1二馬と香を取られても△3五飛と浮いた局面は後手の方が良さそうです。

 次に△6四角や△3九銀があり、振り飛車の方がすべての駒が働いているからです。

村山31

 

 今度は先手が▲2六銀と棒銀に出て来る変化を解説します。

村山24

基本図からの指し手⑤
△1二香▲6八金直△5四歩▲3七銀△4三銀▲2六銀△3二飛▲4六歩△6四歩(8図)

 棒銀の狙いは△4五歩と突かれた時の当たりを避けながら角頭を苛めようというものです。

 それに対して角頭を受けるために△4三銀から△3二飛と飛車の位置を変えます。そして▲4六歩に△6四歩と手待ちをします。

村山33

8図以下の指し手
▲3八飛△5一角▲3五歩△6二角▲3四歩△同銀▲4五歩(9図)

 ▲3八飛ですぐ▲3五歩と突いてきても△5一角と引けば同じだと思います。

 ▲3八飛に△7四歩と突き▲3五歩に△4五歩と突く変化もあると思います。以下▲3三角成△同飛▲4五歩△3五歩▲4八飛(変化B図)と進行します。

村山35

 プロの実戦例も何局かあると思いますが、この局面の形勢判断は難しいです。変化B図以下は△3四飛あるいは△3四銀位です。

 △5一角と引き▲3五歩に△6二銀が棒銀に一番多い対策です。

村山34

 先手は▲3四歩から▲4五歩と攻めてきます。

 9図で▲4五歩を△同歩は▲3三歩と打たれて後手不利です。

 △5五歩と突いて▲同角に△5三金か、それとも単に△4三金と上がるかまだまだこれからです。

 今回の講座はこれで終わりです。振り飛車に急戦をする人はプロでは余りいませんが、それでも何十年も研究され、実戦でも何局も見ます。

 でも勝ったり負けたりだから恐らく優劣不明なのでしょう。

 振り飛車がうまくなるには、やはり番数です。形や感覚を覚えていくのが上達の早道です。

 それではまた来月会いましょう。

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居飛車対振り飛車の対抗形での居飛車側からの急戦。

非常に奥の深い世界であり、いまだに結論が出ていない戦型も多い。

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四間飛車に対する居飛車急戦だけでも、山田流、鷺ノ宮流、斜め棒銀、棒銀、▲4五歩早仕掛け、▲4五桂富沢キック、右四間飛車など。

私は振り飛車党だけれども、これらの定跡や変化は少ししか覚えていない。

一時期、真面目に勉強してみようと思ったこともあったが、振り飛車側の△6四歩が突いてあるかないか、△1二香と上がっているかどうかで状況が変わったり、高美濃か普通の美濃囲いかで世界が変わったり、居飛車側が6九金のままか6八金と上がっているかで振り飛車側が同じような反撃をしたとしても有利になったり不利になったり、微妙な違いなど覚えることが多すぎて挫折したのだった。

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しかし、一度に網羅的に覚えようとするのではなく、この講座のように範囲を限定して理解する方式が良いのかもしれない。

京都のお寺を1日に20箇所回ると、どのお寺がどのお寺だったか微妙な違いが分からなくなり混乱してしまうが、1日に3箇所位であれば全てのお寺のことが頭に入る。このことと同じと言えるだろう。