大山名人の芸―振飛車党の古き良き時代(3)

第十二期王位戦第4局、大山王位の自戦記「中原流をかわす」から。

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この当時、石田流本組は振飛車の理想形の一つとされ、居飛車側は石田流本組みにされた段階で作戦負けとされてきた。ところが中原棋聖は、あえて相手に石田流本組みを組ませ、それに対して逆襲することを得意としていた。この頃は棒金。

大山王位の新趣向は▲4五銀の升田流早繰り銀。数手進んで、大山陣の左翼が圧迫されるが、ここで60分の長考で指されたのが、大山流▲7九金。

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自戦記では「7九金は変に見える一手だが、私好みで、だんだんとその効果が現われてくる。勝利につながる手であったと今でも自慢したい気持ちでいる」と書かれている。確かに漢方薬のように、この金はじわじわ効いてくる。

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虚々実々な駆け引きがあった後の△8六飛に対し、7八にいた飛車が5八へ移動した局面。7九金のご利益が大きい。

飛車を取ってもつまらないし△8九角成から二枚換えしても、▲4五角の王手竜取りがある。

次は、中盤から終盤へ向かう局面。

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先手有利とはいえ、この局面での▲7二歩はすごい。遅そうに見えるが、これがマムシになる。

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投了図。と金地獄になっている。 ▲1八玉と寄ったのも大山流、と金のヤリ攻めも大山流、序盤の▲7九金も大山流と、大山名人らしい芸や技が出ている一局だと思う。

真似はできないが、石田流好きの私にとっては、大山名人が神様のように思えたのだった。

つづく