中原誠十六世名人の「最も印象に残るタイトル戦」(5)

中原誠十六世名人が「最も印象に残るタイトル戦」という、1972年の名人戦の第5局。

振飛車対棒銀の手本となるような、大山名人会心の一局。

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大山名人の三間飛車に対して、中原挑戦者は、第2局と第3局で失敗した棒銀を、あえてぶつけてくる。

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ここから大山名人は▲5五歩。振飛車らしい一手。

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5五に後手の角を呼び込んでおいて▲6七銀。

中原挑戦者はこの手をうっかりしていた。

▲5六金△2二角▲6五金を頭に描いていた。△7六歩▲同飛△7五銀▲7九飛△7六歩が正しかったという中原挑戦者の局後の感想だが、本譜は勢い良く△7八飛成。

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41手目の▲5五歩突き捨ては、▲5六銀の好形をつくるためでもあった。

この局面では先手優勢。

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この後、△4四角▲同角成△同銀▲4五歩△3五銀▲2二角以下77手で大山名人の勝ち。

これで大山名人の3勝2敗。

「5六銀と8四銀の差みたいな将棋でしたね」と中原挑戦者。