名人戦第6局は、郷田真隆九段の陽動振飛車となった。
この陽動振飛車を最も多く指したのは、昭和30年代の升田幸三九段だと思う。特に升田-大山戦では多くあらわれた。逆に大山康晴名人が升田九段を相手に陽動振飛車を使うことも多かった。
今日はその中の一局、昭和33年の王将戦第3局を。
先手が大山前名人、後手が升田三冠(名人、王将、九段)。記録係は内藤國雄三段。升田三冠の強襲を大山前名人が丹念に受けきった将棋。
今回の第6局と同様、後手ツノ銀の出だし。升田九段の陽動振飛車は5三銀型が多かったが本局は4三銀型。
この局面で升田九段は、観戦記者の倉島竹二郎氏に「ゆうべはまた変な夢をみた」と話しかけている。升田九段はこの前の日にも「立会人が来て、升田君、この将棋はあんたの負けだよ」という夢をみている。(東公平「升田幸三物語」より)
升田流は、ここから△7二金ではなく△7二銀として美濃囲いにする。
開戦。
ここから強襲が始まる。
この次の手は△3六飛!
続いて割り打ちの銀。
ここから△5五銀▲同歩△7九角▲7七玉△7八成銀▲同玉△4六角成
ここから大山が丹念に受ける。
先手が厚みで優勢。8一に桂のいない美濃囲いは意外と脆い。
以下115手で大山前名人の勝ち。