石田流の悲劇(後編)

石田流本組が一気に壊滅してしまった歴史的なもう一局は、昭和48年の王座戦三番勝負第2局、中原誠王座(先)-大野源一八段戦。

振飛車名人として名高い大野源一八段はこの時B級1組で62歳。三番勝負への勝ち上がりは快挙だった。

この対局で中原王座は、対局中に考えた全くの新構想で石田流を崩す。

石田流の悲劇(中原大野)1

中原王座の▲4六歩は手拍子でうっかり指してしまった手。石田流に組ませて棒金でいこうと思っていたのだが、▲4六歩を指してから金が5八にいることに気がついたという話が伝わっている。

しかし、このうっかりが新手順を生み出すことになった。

石田流の悲劇(中原大野)2

▲3八飛と寄って△1三角を強要する。

以下▲1六歩△4二金▲1五歩。

大野八段も、ただならぬ気配に△4二金と桂にヒモをつける。

石田流の悲劇(中原大野)3

▲1五歩で戦闘開始。後手が居玉なのが辛さを倍増させる。

石田流の悲劇(中原大野)4

▲1五歩に続いての▲3六歩。△同歩と取らざるをえない。

そして▲1五香で歩を入手。

後手が美濃囲いに入城していれば、△3七歩成や△2五桂の非常手段もありそうだが、居玉なので無理はできず△1四歩。

そこで決め手の▲3五歩が出る。

石田流の悲劇(中原大野)5

△同角は▲3六銀△4六角▲3五歩で飛車が取られてしまうので△同飛。

以下▲3六銀△6五飛▲1四香。

石田流の悲劇(中原大野)6

石田流は崩壊…

以下△4六角▲3四歩△3二歩▲3三歩成△同歩▲1一香成。

▲3四歩を△同銀は、▲4七銀△3五角▲1一香成のあと、▲3六香の田楽刺しが防げなくなる。

▲3四歩に△2五桂も、▲4七銀△2四角▲1一香成で反撃の目が全くなくなってしまう。

石田流の悲劇(中原大野)7

39手目でこのようになってしまう恐ろしさ。