同一局面から、大山康晴名人と升田幸三九段がそれぞれ指したら、どのような違いが出るのかの実例。
将棋世界1972年2月号、六文銭謙さんのNHK杯争奪戦「関根、中盤でつまづく」より。
NHK杯戦、先手が関根茂八段、後手が大山康晴名人。
解説は升田幸三九段、聞き手は倉島竹二郎さん。
下の図の局面から、後手がどう攻めるのか。
大山名人は、ここで△4七歩成。
以下、▲4一歩成△同飛▲5二銀。
ここから、△5七桂成▲6六金△3八と▲同飛△5二金▲同角成△4九飛成▲1八飛△6一銀打▲1六馬△2九竜。
6一の金が銀と入れ替わってしまったものの、振飛車党にとっては心地よい捌き。
ところが升田九段は、この局面(再掲)で大山名人が△4七歩成と指したのを見て、
「僕なら△5七桂成と指す。以下▲5二歩△同飛▲同角成△5六角だ」
と解説した。
たしかに、一気に終盤、寄せに突入した感じがする。
真綿で首の大山流と一直線の升田流。
六文銭謙さんは「大山流と升田流の棋風の違いを如実に示して興味があった」と書いている。