二人の愛ランド

2年前、居飛車の好きな男性と、将棋に全く興味がない女性が知り合った。

男性は、瞳に少年のような純真さを持つ理知的なタイプ。

女性は、男性から好かれる、春風のような美少女タイプ。

初めて二人が出会った場所は、お互いが客として行っていた酒場だった。

双方、一目惚れだったのだろう。

二度目に酒場で偶然出会った時は、店を出たあと二人で飲みに行ったらしい。

女性は、私の知り合いだ。

ある日、その女性から一緒に飲もうと誘われた。その男性も来るという。

大久保の韓国料理店へ行った。

会話は楽しく酒も進んだ。

男性はアマ五段らしく、さっき買ったばかりの居飛車の本を数冊見せてくれた。本格居飛車党だ。

男性が席をはずした時に、私は彼女に言った。

「彼に惚れているのが見ていてわかるよ。幸せそうだね」

「あっ、やっぱり分かっちゃった。エヘッ」

仲の良い高校生カップルといってもいいような雰囲気だった。

その後、休みの日になると、彼は彼女の家へ遊びに行くようになる。

日曜日の彼の日課は、NHKの将棋講座とNHK杯トーナメントを観ること。

彼女は将棋のことはわからないが、彼の大好きな将棋なので一緒に観ていた。

順風満帆な二人だったが、一つだけ障害があった。

それは、彼に別居中の奥さんがいたということ。

彼女と出会う前から、離婚を前提に協議していた。

彼女にとっては、結婚は急ぐ話でもなかったので、そのことは特に気にはしていなかった。

その後、彼女と会う機会はなかったが、一昨日「○○さんと結婚することになりました。とても変わった人だけど、これまでの人生で最良の人です」というメールが届いた。

心から祝福をしたい気持ちになった。

それにしても、やはり驚いてしまうのは、二人とも52歳だということだ。