王位戦第6局は、千日手指し直しの末、広瀬章人六段が深浦康市王位に勝って、王位を獲得した。
今世紀になってから、A級を経験していない棋士のタイトル獲得は、2004年竜王戦の渡辺明五段以来。
プレーオフで羽生善治名人に勝ったのも含めて、振飛車穴熊がプロ間で決して人気戦法ではない現在、広瀬流穴熊でここまで成果を出したのは本当に凄いことだ。
深浦康市前王位にとっては非常に残念な結果となったが、3期連続で王位だった実績は輝いており(3期以上連続は大山、中原、谷川、羽生のみ)、この数年で再びタイトルを奪取する可能性は非常に高いと思われる。
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故・大野源一九段の振飛車は、見ている分には最高に楽しかったが、自分の実戦で、戦形や指し方を真似ようとすると、とたんに酷い目にあった。
大野九段にしか指せない将棋であり捌きだったのだ。
それと同じことが広瀬流穴熊にも言えると思う。
広瀬王位だからこそ指しこなせる分野であり、誰にも模倣できない世界だ。
穴熊独特の感覚と価値観から繰り出させる指し手は、見る人を魅了し続けていくだろう。
そのような意味でも、2008年将棋ペンクラブ大賞技術部門優秀賞の「とっておきの相穴熊」(遠藤正樹さんとの共著)は貴重な本だったと、あらためて感じさせられる。
とっておきの相穴熊 [マイコミ将棋BOOKS] 価格:¥ 1,449(税込) 発売日:2007-10-23 |
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広瀬章人王位は早稲田大学の4年生(6年生というほうが正しいかもしれない)。
早稲田大学学生部のサイトの早稲田ウィークリーで2007年に広瀬章人五段が取材されている。→プロ将棋棋士 廣瀬 章人さん
ちなみに、2009年には中村太地四段が(→プロ4年目、日々精進の学生棋士 中村太地さん)、2004年には早水千紗女流初段(→女流プロ棋士として活躍!! 早水千紗さん) が紹介されている。
また、2000年のOBインタビューでは丸山忠久名人が登場している。→名人 丸山忠久さん
そろそろ熊倉紫野女流初段の出番かもしれない。
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故・加藤治郎名誉九段、加藤一二三九段、木村義徳九段、木村嘉孝七段、北浜健介七段、横山泰明五段も早稲田大学出身で、早稲田大学出身の棋士は多い。
囲碁の棋士で早稲田は青葉かおり四段と下坂美織初段のみで、囲碁界は東大、慶応大が多い。
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今年の2月に亡くなられた新井田基信さんも早稲田大学出身。
小学生時代の広瀬王位を鍛えたのが新井田さんだ。
今年の将棋ペンクラブ大賞贈呈式には、新井田さんのお母様が札幌から出てこられて、受賞をしていただけるということだ。