なのにあなたは大阪へゆくの(将棋文化検定余話)

私の将棋文化検定受検日記(前編)。

6月23日(土)

ブログに将棋文化検定のことを書く。→将棋文化検定

問題の難易度や合格ラインは分からないが面白そうな検定。

東京の会場である明治大学付属明治高等学校・中学校のホームページを見ると、当然といえば当然だが、校舎内に入る時は上履きが必要。

面倒なことが苦手な私にとっては、上履きを用意することが、将棋文化検定を受験する際の最も大きな障壁になっていた。

6月30日(土)

中野で飲み会。

参加者にTさんがいた。

Tさんは将棋ペンクラブ会員で、20世紀の言葉で言えば、”クールでエレガントなトレンディ女優”という雰囲気。

将棋文化検定、上履きに対する気持ちの準備ができたとしても、試験が終わった後が問題。

出来が悪かろうが良かろうが、誰かと飲みたい気分。それが素敵な女性であれば理想的であり、Tさんなら最適任だ。

会場の調布から紀尾井町まで移動して、ホテルニューオータニの『トレーダーヴィックス』のバーでトロピカルカクテルを傾けながら、「将棋図巧と将棋無双の違いなんか絶対に分からない」などとボヤきたい。

Tさんに聞いてみた。

「Tさん、将棋文化検定を受けようとか考えていますか?」

「そういうのがあるのは知っていますが、特に関心はないですね」

Tさんは、興味のある将棋イベントがあればどこにでも遠征してしまうほどのアクティブな将棋ファンで将棋界についての知識も相当なものだが、将棋文化検定には心が動かなかったようだ。

私も、この段階では将棋文化検定を受けるかどうか決めかねている。

8月3日(金)

この日に発売された将棋世界9月号の付録の「チャレンジしよう 将棋文化検定」の問題を解く。

9級、6級、4級は、まぐれ当たりも含みながら満点クリア。

2級は25問中19問正解。

私は漫画、詰将棋、アマチュア大会、中将棋などの本将棋以外の将棋、江戸時代、が苦手ということが判明。

4級ならいけそうだが2級は微妙。

それにしても、上履きを用意する手間を考えると、受検にはまだ踏み切れない。

8月上旬

将棋文化検定が終わったあと、各会場で受検した棋士によるイベント(トークショー、指導対局、お楽しみ抽選会)が行われることが日本将棋連盟から発表される。

8月26日(日)

将棋関係のデータで、Tさんなら知っていそうなことがあったのでメールで質問。

その際に、次のようなことも書いた。

「ところで、将棋文化検定は森内名人なども受検されるようで、試験終了後イベントもあるとのことです。これは、絶対に受けてみる価値があると思います」

将棋のイベントに積極的なTさんなら、以前とは違う意思決定をするかもしれない。

間もなく返事が返ってきた。

「連盟のホームページ見ました。検定を受けられ、かつ立派なイベント付きですね。森さんとはあまりイベントでお会いしませんのでお会いできたら楽しそうです。しかしホームページを見て、これは行けるならば関西に行きたい!とも思いました。悩める将棋ファンです」

Tさんは関西棋士全般、特に森信雄七段一門のファン。

将棋文化検定を受けるかどうかを飛び越して大阪行きを検討するその姿勢に、私は大いにウケてしまった。

8月27日(月)

この日の午前中は渋谷で仕事。

仕事の後は、関係する方々とビールを飲みながらの昼食で非常に楽しい時間を過ごした。

午後3時、一人で渋谷の喫茶店。

仕事のことを頭の中で整理しながら、ふと考える。

「将棋文化検定を申し込むとしたら、これから連盟に行って申し込むのが好手なのではないか」

Tさんが将棋文化検定を受ける可能性が高いという手応えも感じたし、思い立ったが吉日という言葉もある。Tさんも、まさか将棋文化検定のためだけに大阪へ行くこともあるまい。

喫茶店を出て、連盟がある千駄ヶ谷へと向かった。

将棋会館の3階にある事務局で申し込む。

ビールを飲んだこともあり、「こういうことは縁起物だ」と気が大きくなり、2級にチャレンジすることにする。

9月21日(金)

将棋ペンクラブ大賞贈呈式の日。

Tさんは仕事の都合がつけば贈呈式に参加予定だったのだが、この日は遅くまで仕事が続き、四谷でやっていた二次会の終了後に新宿で合流。

贈呈式・二次会と参加していたGさんも一緒。

Gさんも将棋文化検定2級を申し込んだという。

新宿二丁目のタイ料理居酒屋「バーン・キラオ」へ行く。

贈呈式の話題が続いたあと、Tさんに聞いてみた。

「将棋文化検定、どうすることにしました?」

すると、Tさんは笑顔で、

「はい、大阪で受けることにしました」

私の頭の中から、トレーダーヴィックスでTさんと乾杯している映像がモザイクのようになって消えていった。

先崎学八段だったなら”口の中の空芯菜を吐き出してしまいそうな”という表現を使うだろう。

”のけぞって背骨が折れてしまいそうな”という表現でも当たっている。

「えっ、お、大阪で?」

「はい。今から楽しみです」

たしかに10月21日の受検日の前日から「長浜将棋まつり」が行われるので、Tさんが大阪で受検する可能性もなくはないなと思っていたところだった。

Tさんは4級を受けるという。

Gさんは酔っ払いながら

「僕は絶対に2級を落ちてしまうんだ」

と何度もつぶやいている。

私の頭の中で、『なのにあなたは京都へゆくの』という曲が鳴り響いた。


YouTube: チェリッシュ なのにあなたは京都へゆくの

シチュエーションはだいぶ違うが、京都と大阪の違いはあるが、とにかくこの曲が頭の中に鳴り響いた。

「お、大阪で頑張ってください」

「はいっ」

でも、私は、検定が終わったあと、どうすれば良いのだろう。

Gさんなどと調布の居酒屋で飲むことになるのだろうか。

トレーダーヴィックスは何処へ・・・

「ああ、かなりなショック。Tさんのことをブログでネタにしていいですか?」

「ええ、どうぞ。とても楽しみ[E:shine] お二人とも2級に落ちるようなことがあったら私が残念会を開きますから」

10月末の「私の将棋文化検定受検日記(後編)」へつづく。

—–

将棋文化検定の申し込み締切りは9月30日(日)

第一回将棋文化検定