将棋世界1999年2月号の、佐藤康光名人(当時)と羽生善治四冠(当時)の対談「進化を続ける藤井システム」より。
佐藤康光名人と羽生善治四冠が語る、藤井猛竜王(当時)と藤井システム。会話の中からいくつかを抜粋。
羽生 例えば森下システムだと矢倉がずっと指されてきたなかで、基本があってシステムが生まれてきたわけですが、藤井システムは角道止めて飛車回って四間飛車にする、あとは全部彼の独創だからそれがすごいところです。
羽生 指されてみるとコロンブスの卵みたいになるほどと思うところはありますね。でも穴熊の発想自体が今までのセオリーと異質であるから、その異質に対して異質で立ち向かうところがいいのかもしれません。
羽生 私はどちらをもってもやりますが、藤井さんがやるとうまくいくんですよ。これが不思議なところなんです。最近は他の人もやるようになっていますが、でも見ていると彼が一番うまいですね。当たり前ですが(笑)。
佐藤 やはり藤井さんはよく研究していて、私達がよく、盤の前に座ってみると手がよく見えるという言い方をしますが、藤井さんは研究している時からそうじゃないかなと思うんです。これはある若手棋士から聞いた話ですが、藤井さんは家で横になっているといい手がうかぶそうです(笑)。だから普段からそれだけ真剣に根を詰めて考えているんだと思うんです。
羽生 藤井システムは指しながら進化している部分もあるんじゃないですか。(中略)微調整をしながら進化している感じですね。だからこの形が本当の基本図というのは出せないのかもしれません。
羽生 少なくとも朝10時に対局が始まって11時半には穴熊に囲えたでしょう、遅くとも。今は3時くらいにどうかっていう感じですか、組めたとしても。
対談では藤井システムについて技術的な話も多く出るが、次の羽生四冠の言葉が、現在を見事に言い当てている。
羽生 居玉で最初からこの形でやっていくのは、どれくらいかは分かりませんが、しばらくは続くような気がします。でも10年後も藤井システムばかりやっているとは思えないですね(笑)。
羽生 余談になりますが彼がたまたま矢倉をやっているのを見たんですよ。それでとても驚いたんですが、あまり指していない人とは思えないぐらいのうまさで快勝していたんですよ。実は他の戦法もやれるんじゃないかと思っているんですけど(笑)。
今日からの王座戦で、藤井猛九段がどのような戦法を繰り出してくるか興味深いところだ。