記録係泣かせの究極の早指し

早指しが凄すぎて、記録係が「待った」を入れた話。

NHK将棋講座1996年8月号、鈴木宏彦さんの「将棋マンスリー 東京」より。

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6月5日に行われた全日プロの田村康介四段-櫛田陽一五段戦。これぞ究極の早指し対決として、話題になった一番だ。

(中略)

午前10時に始まった対局。櫛田の先手三間飛車に対し、田村は居飛車穴熊。この勝負、なんと、終盤の70手まで双方ノータイムの指し手が続いた。それも、1手3、4秒という指し手がほとんど。記録係の上野裕和1級は棋譜の略号をメモしながら記録を取っていたが、あまりの速さについていくことができず、ついに「対局中の中断」を申し入れるという異例のハプニングまで起きた。約10分後に再開されたこの対局は結局、10時40分、107手で櫛田五段の勝ち。

(中略)

ちなみに、櫛田の消費時間5分に対し、田村の消費は2分だけ!

終局後の田村は、感想を聞かれて一言、「時間だけは負けたくなかったんです」。

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実質20数分の対局だったが、際どい攻防が続いたという。

上野裕和1級(当時)には気の毒な出来事だったが、傍で見ていれば、相当な迫力の一局だったのかもしれない。