棋譜を頭の中だけで並べる効果

将棋世界2005年10月号、角建逸編集長(当時)の「将棋三昧」より。

 丸田九段のインタビューに際して、先生から何度かお話を伺わせていただくことができた。

 お父さんから将棋を禁じられていたので、家では将棋の盤駒をいじることができない。そこで新聞の将棋欄の指し手を頭の中で並べて、次の一手を考える、これを何時間もやっていたという。当時は指し始めの図はあっても指了図は掲載されていなかった。昭和30年代になって山本武雄八段の提案により、読売新聞の十段戦で指了図の掲載が始まったそうである。

 つまり本当に全部を頭の中で考えなければいけなかったわけだが、それを毎日繰り返すだけで、プロ入りを勧められるほど強くなれるものなのだろうか。

 感心していたら話にはまだ続きがあって、隣に囲碁欄も載っていたので、同じように囲碁も覚えたという。

「なにしろ碁盤なんかないんだから(笑)。そのおかげで奨励会に入ってからも結構打てましたよ」

 打てましたよ、というレベルが普通とは違うのはお分かりいただけるだろう。やっぱり天才なのだと思わざるを得ないのである。

 数字に明るく、計算が速い。その頭の良さを買われて、若くして理事に推されたのも当然と言える。棋士仲間から絶大な信頼があったのだろう。各棋戦の複雑な対局料計算のシステムを始め、ただのリーグ戦だった順位戦に頭ハネとなる順位を付けて消化試合をなくしたのも丸田九段の発案だ。

 大山・升田の両雄と同時代ゆえ、棋界を制覇することはできなかったが、A級在位24期”小太刀の名手”丸田九段の存在がなかったら、今の将棋界はあったのかどうか。その功績は計り知れないと思うのである。

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今では当たり前となっている新聞観戦記の指了図が、比較的最近(といっても昭和30年代だが)までなかったというのが意外だ。

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棋譜を頭の中だけで並べる(最初は手の意味がわからなくても)のは、棋力向上に非常に有効だと聞いたことがある。

これは読みの訓練(頭の中で先々の局面まで再現できる)につながるからだと思う。

大人になってからやるのは非常に大変だけれども、子供の頃から習慣づけておけば、棋力がかなり伸びることは間違いなさそうだ。