森下流と深浦流

現代の名観戦記者 小暮克洋さんの、14年前の観戦記から。

二人の対局者の棋風や個性の違いを鮮やかに かつ効果的に描くのが、小暮さんの観戦記の特徴のひとつ。

14年前の観戦記にも、その萌芽を見ることができる。

NHK将棋講座1996年4月号、「花村門下の熱戦譜」 森下卓八段-深浦康市五段戦より。

両者ともていねいで粘り強い指し回しに定評があり、腰の重さは共通であるが、将棋の作りは根本的に異なっているように思われる。

森下八段の指し手が柔軟な受けを主軸とするのに対して、深浦五段のそれはまず剛直な攻めありきだ。

極論すると、決定打となるはずがないとわかっているキックやチョップだけで敵との間合いをはかり、最後は流れるようにスペシューム光線でとどめを刺す「ウルトラマン」と、最初からアイスラッガーやエメリウム光線といった必殺ワザをバンバン駆使、3匹のカプセル怪獣まで応援に駆けつけちゃう「ウルトラセブン」の、地球防衛のあり方の見解の相違といったものに行き着く。

(以下略)

森下流と深浦流を対比させた、非常にわかりやすく面白い表現だ。

小暮さんの若さ、熱気が伝わってくる。

私は子供の頃、「なぜウルトラマンは最初から必殺のスペシューム光線を使わないのだろう」と疑問に思っていたが、小暮さんの解説を見て疑問が氷解した。