こんな面白い時代があったのだ。
近代将棋2006年2月号、スカ太郎さんの「スカタロの関東オモシロ日記」より。
先日、羽生善治四冠の奨励会時代のことを調べたくなって、将棋世界と将棋マガジンのバックナンバーを見ていたのだけれど、当時の奨励会の様子を伝える銀遊子さんのレポートが妙におもしろく、調べ物そっちのけで長時間の読書タイムに突入してしまったオイラである。
(中略)
それがあまりにも面白く、オイラひとりで楽しんでしまうのももったいないので、当時銀遊子さんが書いた中から「タバタ上着を脱いでドウゾ事件」を紹介しよう。
「タバタ上着を脱いでドウゾ事件」
―田畑は毎回のように当欄をにぎわすスターである。若くして三段に上がったように、もちろん将棋は強い。強いんだけどもう一つ勝ち込めないのはどうしてだろうか。私が思うには性格が良すぎるからではないかという気がするのだ。
「四の字固めのI藤(*注 伊藤能さんのこと)」と言えばおわかりだろう。そのI藤は、将棋に負けると誰彼となくつかまえて四の字固めというプロレス技をかけて将棋のウサを晴らす奇癖を持っているのだが、ある日、田畑を見つけて「タバタァ、ちょっと四の字固めかけさせろよ」と声をかけたところまではよくある話。しかしそこで田畑は何と言ったか?
なんと、「あ、ちょっと待って。上着脱ぐから」と言いつつ、ブレザーをたたんで横に置き、ゴロンと横になって「いいよ」という行動に出たのである。
これには驚いたというか、あきれたとかを通り越してただただ笑った。その数秒後、田畑の「イテーッ、イテーッ」という悲鳴と、観衆の「ギャハハハ」という笑い声が、会館内に大きくコダマしたのは言うまでもない。これが有名な「タバタ上着を脱いでドウゾ事件」である。本当に田畑君は憎めない善人なのだ。
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この出来事は1983年頃で、ここでの田畑三段は、現在の田畑良太指導棋士五段のこと。
大友門下なので、郷田真隆九段の兄弟子にあたる。
田畑指導棋士五段は誰からも好かれるキャラクターなのだろう。
田畑良太指導棋士五段は現在、将棋連盟火曜教室、江古田将棋教室、新城子供将棋教室、JR東日本大人の休日倶楽部「楽しい将棋講座」などで活躍をしている。
このような話を聞いてしまうと、どこかの教室に行ってみたくなる。
ところで、羽生世代の面々も四の字固めの被害に遭ったのだろうか。