「夜店で一手いくらってやっている人ですか?」

将棋マガジン1986年1月号、鈴木桂一郎二段の「奨励会自戦記」より。

 これは今年の8月に滝誠一郎六段達と北岳に登った時のことで、たまたま妙齢の女性と話をする機会があった。そこで職業を聞かれ、滝先生が、「将棋をやっています」と答えると、その女性がちょっと考えてから、「夜店で一手いくらってやっている人ですか?」とたずねられ、ショックを受けたことがある。この時に女性にもっと将棋が普及すればいいなあと強く感じた。

(以下略)

* * * * *

「夜店で一手いくらってやっている人」というのは、大道詰将棋のこと。

この頃は大道詰将棋屋は減っていたので、この女性が子供時代にお祭りなどで見ていたのかもしれない。

大道詰将棋屋

* * * * *

現在では棋士という職業は広く知られているが、この頃は棋士の存在自体を知っている人が相対的に少なかった時代。

知られていたとしても、若い女性からは一緒に遊ぶのを敬遠されることもあったようだ。

36年前の悲劇

このような図式が一変するのが、1995年から始まった羽生善治七冠フィーバーの頃から。

まさしく劇的な変化をもたらせた。