対局中の飲み物

将棋マガジン1988年2月号、神吉宏充四段(当時)の「何でも答えまっせ!!」より。

Q.対局中にミネラルウォーターを飲まれる棋士とその量についてお教え下さい。どうして飲まれるのか?ミネラルウォーターはもしかして将棋が強くなる飲み物なのですか?女流棋士ではミネラルウォーターを飲まれる方はいらっしゃいませんか?

<埼玉県 Tさん>

A.ン、ゴクゴク・・・あーやっぱりうまいわ麦入りジュースは。ナニナニ、ミネラルを飲む人でっか?女流棋士の方はおそらくおられんと思うけど、私の知ってる限りでは、ウーロン党も含めると次の通りダス。

桐山棋聖・・・どんな対局でも関係なしに必ずミネラルを5本。

森九段・・・この前注文してはったんは、ミネラル1リットルとウーロン茶500ミリリットル。それも桐山棋聖の方を見て「5本か…お株を奪われちゃったなあ」と言いながら。

小林八段・・・ウーロンのみ適量。

浦野五段・・・対局中はウーロンしか飲まんけど、水の話をさせると一日中しゃべることができる。

阿部四段・・・ミネラル3本。

村山四段・・・ミネラル10本。

堀口五段・・・ちょっと違うけど、おやつの時になると必ずこう叫ぶ。「コブ茶!」。

 この他、ミネラルもウーロンもたまに飲む棋士は多いが、定期的といえばこれだけだと思う。

 次にどうして飲まれるかというQだが、ミネラル党を代表して桐山棋聖に答えてもらった。

「何ででっか?」

「私の場合、対局中水気がほしくなるので、お茶を飲んでいるとかなりの量飲むことになるやろ。でもお茶をようさん飲むとあんまり体にええことないから、ミネラルを同じだけ飲むんやけど」

「で、ミネラル飲んだら強くなるんですか?」

「えっ、いや、その」 困っている棋聖の後ろから井上五段がこう叫んだ。

「強ぉなりまっせー」 

 井上君はミネラルを飲まない。

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私は古いタイプなのか変わっているのか、、味がついていない飲み物にお金を出そうという気持ちが起きず、ミネラルウォーターやお茶などの無味系飲料を買うことは年に数回ほどしかない。

そういう訳なので、私にとってのミネラルウォーターは、ウィスキーを美味しく飲むための水であり、それ以上の存在ではないことになる。

だから将棋が強くなれないのか・・・

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コカコーラ、ペプシコーラ、ドクターペッパー、セブンアップ、ファンタ、三ツ矢サーダー、CCレモンなどが対局中に飲まれることはほとんどないと思う。牛乳もない。スポーツドリンクも聞かない。

対局中は読みに集中しているので、刺激がある飲み物よりも刺激の少ない飲み物が好まれるのだろう。

タイトル戦ではおやつの時にジュースが注文されることがあるが、これは飲み物ではなく、あくまでおやつの位置付けなのかもしれない。

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中国へ出張した時のこと。

4泊5日の出張の最後の朝、宿泊している上海のホテルが日系のホテルであったことに油断をして、歯磨きの時に、備え付けのミネラルウォーターではなく水道水を使ってしまった。

1時間後のチェックアウト直前、急に腹の調子が変になってきた。

トイレに一度行っただけで治まったが、海外ではミネラルウォーターの有り難さがよく理解できる。