将棋マガジン1990年1月号、中井広恵女流名人(当時)の「相居飛車のすすめ」より。
”おめでとう”
何度言われてもうれしいものですが、肝心の将棋の方は負けてばかり。
”恋をしても強くなる”と言った手前、タイトルを奪われるわけにはいきませんから、”おめでとう”の半分は女流名人就位式の為にとっておこうと思います。
”結婚”
私の一つの夢はかないました。女の子なら誰でも結婚に憧れるものです。でも、口の悪い先輩棋士達は言います。
某棋士 ”おめでとう。しかし結婚は第二の人生なんていうけど、墓場だよ。喜んでるのも今のうち、俺なんて結婚式の日は手錠をかけられた気分だったよ”
翌日―
広恵 ”あんな事言ってたけど、奥様にはしっかり甘い事言ってるのよねェ。どう思う?”
某直子ちゃん ”そうだよ”
某久美ちゃん ”そう思う”
広恵 ”でしょう?”
二人 ”20歳で結婚なんてもったいないよ。家事は大変だし、まだ遊びたいし、〇〇先生の言うこと、わかるなぁ”
広恵 ”ちょ、ちょっと……”
——
中井広恵女流名人(当時)結婚直後の頃の出来事。
某直子ちゃんは林葉直子女流王将で、某久美ちゃんは山田久美女流初段。
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「恋をしても強くなる」
恋は将棋の強さの逆風となるのか追い風になるのか。
これは非常に難しい問題だ。
逆に、
将棋は恋にとって逆風となるのか追い風になるのか。
これは、もっと難しい問題だ。