行方尚史五段(当時)「その辺興味あるんでしょ」

近代将棋1999年7月号、「棋士とファンのトークtoトーク② 行方尚史五段と3人の美女」より。

 2回目のトークtoトークは順位戦でC級1組に昇級し、カッコよくて、人気と実力を兼ね備えた行方尚史五段と、アマ女王戦に参加した3人の女性将棋ファンに集まってもらいました。

徳森さん-企業将棋部に入部しており、社団戦、職団戦に出場。将棋会館道場と西日暮里道場をホームグランドとして、初段の免状を持つ実力派!?

佐山さん-将棋を教えてくれたご主人に勝ちたくて将棋教室に駆け込んだのが3年前。今はもっぱらパソコンソフトとパソコン通信で将棋を指すという。2級。

土屋さん-フリーランスライター。3年前から将棋を始め、毎週所司和晴六段の所で将棋を習っている本格派。2級。

の3人です。それではどうぞ!

     

もっと顔をうつしてほしい

土屋 プライベートなことから聞きたいんですが、休日はどのように過ごされるんですか。

行方 休みですか。いつも休みみたいなものですからね。ある意味でいうと。う~んとりあえず寝てますよ。長い対局のあとは疲れとるのに2日ぐらいかかちゃうんで。

一同 おぉー

行方 だから家でボケーッとしたりして、あとは泳ぎに行ったりとか・・・。あと旅に行きたいんですけどね。2、3週間まとめて休みとるのは難しいんで、長期的に海外を旅したりするのに憧れるんですよ。

佐山 音楽が好きなんですよね。

行方 ええ。

佐山 対局の邪魔になることないですか、日頃聴いていると耳に残ると思うんですけど。

行方 あー残りますよ。対局中にBGMとして頭の中に流れてきて、好きな音楽なら問題ないんですけど、嫌いな曲が残りやすいんですよ。

佐山 ちなみにどんな、演歌とか。

行方 いや演歌じゃないんですけど(笑)、なんかB’zとか、正直あんまり好きじゃないんで。

佐山 エエーッ、ファンなんですけど(笑)。

一同 爆笑

行方 あんまりこういうこと言っちゃあれですね、B’zもいいと思うんですけど(笑)、例えばの話ですから(笑)。気にしないで下さい。

佐山 本屋でrockin’on見ましたけど、あぁ、これだこれだって行方先生よく読んでいる雑誌。でも全然わかんない。

行方 僕もわかんないっスよ。

佐山 今、洋楽って自分で求めないと入ってこないじゃないですか。

行方 そうですね。でも洋楽ばっか聴いているわけじゃなくていろいろと。へだたりは別にないから。たまたまロックが好きなんであって、俺これ聴いてるからスゴイっていうのは全然ないです。

徳森 聴くのが専門なんですか。

行方 そうですね。やってみたいなーという時期もあったんですけど。

土屋 何か買ったりとか。

行方 ギター買った時もあったんですけど、僕の場合防音があまりいいところ住んでないんで、苦情でちゃうんですよね、だけど憧れますけどね、ギター一本で自分の世界を表現しちゃうような。僕もなんとか対局姿とかでうったえていければいいなぁと。そういう場があまりに少ないですよ。NHK杯とかはほとんど顔が映ってないし。いつも映ってたほうがいいと思うんですけどね。

土屋 いい局面の顔見たいですね。

行方 えぇ、終盤映してほしいんですよ。

土屋 嫌がる棋士とかいないですか。

行方 でもそれが当たり前じゃないですか。やっぱり自分が一番張り詰めた極限の場面でどういう顔しているのか見て頂いたほうが、番組的にもよくなると思うんですけどね。

一同 うんうん

行方 優勝してこういうことを言いたいんですけどね。

一同 ぜひ実現して下さい。期待してます。

交流の場をふやしたい

徳森 研究ってプロの方はどういうことをするんですか。

行方 うーん、棋譜並べたり、自分の課題となっている局面考えたり、詰将棋したり、人と将棋指す、その4つですかね。

徳森 1日何時間とか自分に課す・・・。

行方 いや、やりたい時にやるって感じですけどね。ただ毎日やらないと目に見えて弱くなっちゃうんで。いつでも考えたい時にできますからね。普通にお茶飲みながらとか、電車の中とか。

徳森 詰将棋は何手詰を解くんですか。

行方 いろいろやりますよ。それこそ3手詰もやりますし、時間があるときは長いのもやりますし。詰将棋で難しいのはわからない問題をどうするかで、盲点に入っちゃうと全然詰まなくなっちゃうんですよ。

一同 なるほど。

行方 そういう問題ズルズルと2、3日考えたりすると他の事できなくなっちゃうんで、だから最近は詰将棋はプラスにもマイナスにもなるなって思っていますね。

佐山 電車の中で詰将棋考えていると覗かれたりしてビックリしたことがあるんですけど、そういうことありませんか。

行方 あぁーなるほど、僕の場合電車の中で詰パラとかやっていて、パッとひらいて、すぐとじて(笑)。

佐山 スゴーイ、頭の中に盤があるから・・・。

行方 あんまり気付かれたくないというのもありますね。もっと堂々とやるべきなのかもしれないけど。全然話がかわりますけど、最近ビックリしたことがあって、花見に行ったんですよ。もうすごい人で自分達の場所がどこにあるかもわかんないくらいの混雑の中で、突然呼び止められて「握手して下さい。昇級おめでとうございます」と。

土屋 女性の方だったんですか。

行方 いやいや、そうだとよかったんですけど。

一同 爆笑

行方 その時、どこで見られているかわかんないなーって、ビックリしましたね。

徳森 また研究に話が戻りますけど、一番短い時間は一日何分ぐらいですか。

行方 全く考えない日がありますよ。朝から酒飲んだりとか(笑)。酒飲むとやらないんですよ。

土屋 飲みながらやらないし、飲んだ後もやらない・・・。

行方 ハイ。たまに指導に行って、その後宴会になって酒飲みながら将棋始めたりする人いるじゃないですか。

徳森 ええ、いますね。

行方 すごいなぁと思いますね。俺にはできんなあって(笑)。酒飲んだら将棋のこと忘れたいっていうか。

土屋 どこで飲むことが多いですか。

行方 将棋終わったあとは原宿とか新宿とか、あと地元で飲んだり。

佐山 どんなメンバーで飲むんですか。

行方 一人で行くこともあるし、棋士仲間と行くこともあるし・・・。最近棋士仲間と行くことが増えましたね。以前はほとんどなかったですけど、話す機会がふえたんで、その流れで行くことが、ここ半年ぐらい多くなりましたね。

佐山 どんな話題になるんですか。

行方 まじめなことも話しますし、今後の将棋界のこととか。あとはまあ、あの娘がいいとか若者らしい話題とか。でも将棋界を変えていかないとしょうがないと思ってるんで、こうすればいいんじゃないかといろいろ話しますね。とりあえず何かイベントしたいなぁって思ってますけど。

土屋 どんな企画を考えているんですか。

行方 棋士が企画する手作りの、そうですね、ファンとの交流の場をつくりあげたいですね。

徳森 女流棋士の親睦会みたいな。

行方 ああ、いいと思いますよ。手作りのイベントで。今までそういう場がないのが、おかしいことなので。

(中略)

全然もてないです

佐山 もうそろそろ結婚しろというようなこと言われませんか。

行方 あ~、あんまり言われないですけど、そうでもないかな。青森帰ったとき周りの人にもそろそろどうですかって、いわれたことありますね。でも、全然現実的じゃなくて、どうなんですかね・・・。早い人は早くて遅い人は遅いし・・・、タイミングなんじゃないですかね。

土屋 休みの日は一人なんですか。

行方 一人です。一人じゃない方がいいんですけどね。その辺興味あるんでしょ(笑)。

佐山 そうですね(笑)。

行方 どんどん聞いて下さい。そんなことないでしょみたいな(笑)。

佐山 そんなことないんでしょ。

行方 いやいや、全然もてない。

土屋 ライブは一人で行くんですか。

行方 ライブは一人で行くべきじゃないかな。僕が行くのはちょっとはじけた、クレイジーな感じで、二人で行っても結局一人になっちゃうんですよ。それに一人で行った方が余計な気を遣わずにすむし。コンサートは友達と行った方が楽しいですけど、今度コンサート行く予定なんだけど、どうしようかな。

佐山 誰と行くか決まってるんですか。

行方 うーん(笑)、まあ、がんばります。

土屋 中学のときからずっと一人で東京に。

行方 えぇ、ずっと一人です。

一同 すごーい。料理とかしますか。

行方 いや、全然しないです。でも、しょうがないんですよ。棋士になろうと思ったら家が遠いし。

佐山 よく東京にでてこれたですよね。両親も心配でしたでしょう。

行方 その辺は感謝してますよね。どうなるかわからないですから・・・。同じことまたやれと言われたらためらうでしょうね。そういうこと考えると、地方からでてきて棋士になるというのはすごく大変。

一同 そうですよね。

行方 経済的な負担がものすごいですからね。自己管理もしなくちゃいけないし。だから地方からでてきている奨励会員には、がんばってほしい。

土屋 地方から出てきて連盟からのサポートはあるんですか。

行方 全然ないです。だから、ここまできてやめられないっていうのはありましたね。小さい時、たまたま将棋が強くて選んだ道にしてはすごくいいなと思いますね、運がいいなというか・・・。やればやるほど将棋のよさが見えてくるんで。僕なんか社会的順応性ないから、会社勤めとか絶対できないし(笑)。初対面の人に、何やってるか全然わからないってよく言われます(笑)。

    

(トークを終えて)

徳森さん

 思った通りの素敵な男性でした。持ち前の鋭い感性を大切にして、これからも腕を磨いてほしいと思います。将棋ファンを増やすためのイベントはぜひ実現させてください!

佐山さん

 ちょっと気難しい方かな?と思っていましたが、どんな質問にも丁寧に答えてくださり大感激!翌日も家族に行方さんのことをしゃべり続けました。棋界や普及について語る姿がりりしく印象的でした。恋人の話はもう一押しだったか・・・と少々心残りも。

土屋さん

 想像していたよりも、実際はもっと素敵な方でした。写真よりずっとカッコいいし・・・。それに内からあふれる思いや考えをなんとか人に伝えようと、言葉をさがしている姿がとても印象的でした。

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このコーナーは、読者が「氏名、住所、電話番号、年齢、性別、棋力」を明記の上、近代将棋へ葉書かFAXを送れば、ゲストの棋士にインタビューできるチャンスがある、という企画。

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行方尚史五段(当時)の「その辺興味あるんでしょ」や「どんどん聞いて下さい。そんなことないでしょみたいな」が絶妙だ。

この記事全般に言えることだが、当時の行方八段の話し方や口調が忠実に再現されているのだと思う。

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一般的には、ロック系で多く見られるように立って楽しむノリの良いのがライブ、座っておとなしく聴くのがコンサートという区別があるようだ。

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行方尚史八段の魅力の根源を語った将棋世界1996年の名文がある。

何度読んでも、素晴らしいと思う。

行方尚史八段の個性の根源

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