名人の母

昨日の続き。

将棋世界2002年8月号、田丸昇八段・編集長(当時)の森内俊之新名人大特集「二重三重の喜びにわく森内家」より。

 さて、奨励会員を息子に持つ母親の気持ちとはどんなものでしょうか。さぞ気苦労が多かったかと推察しますが、節子さんはあっけらかんとこう言いました。

「俊之が奨励会にいたころですか?あまり心配しなかったですね。駄目でもいいかなぁと・・・(笑)。とにかく、俊之はよく頑張っていました。ただ高校時代は進学校だったので宿題が多く、将棋との両立は大変だったかもしれません。でも棋士として活躍して新聞に出るようになると、学校側も認めて大目に見てくれたそうです(笑)」

 森内名人は昭和62年に棋士になりました。その後の活躍ぶりについては、今月号の付録などでも詳しく紹介されていますので割愛します。

 今年の名人戦では、節子さんをはじめ家族の方々は、森内名人の奮闘をどのように見守っていたのでしょうか。

「名人戦の対局日には、手のことはもちろんわかりませんが、衛星放送を見たりインターネットを開いたりして、ずっと見ていました。6年前(平成8年の第54期名人戦で森内が羽生名人に挑戦)のときは、それこそ俊之の一挙一投足を見ていました。でも投了寸前の局面などは息詰まるものがあって辛かったです。今回は娘(森内の妹の洋子さん・29歳)の出産の時期と重なり、現実的なことのほうが大変だったのであまり気にしませんでした(笑)。そして、ちょうど第2局のときに孫が生まれたんです。

 俊之が名人を取った第4局のときですか?夜の11時ころに電話がかかってきました。”おめでとう。よかったね” ”はいはい” ”忙しいの?” こんな会話でしたかね(笑)」

 息子さんは将棋の名人となり、娘さんには赤ちゃん誕生。まさにおめでた続きの森内家です。あとは結婚適齢期の森内名人にいい話があればいいですねと、私が節子さんに話を振ったところ、節子さんは「実は俊之は・・・」と、とてもおめでたい話を明かしてくれました。

 この話はオフレコで、今月号で賭けるかどうか微妙でした。しかし6月13日、将棋連盟を通じて森内名人の婚約の知らせが正式に発表されました。

 森内名人は今年の1月14日に、学習院大学文学部講師のまきはさん(30歳)と婚約したのです。挙式は10月、披露宴は11月3日に行うそうです。

 二重三重の喜びにわいている森内家を辞したとき、祖母のたみさんが「どうか俊之をこれからもよろしくお願いします」と、私たちに向かって深々と頭を下げたのがとても印象的でした。

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以前の記事で紹介したが、森内名人とまきはさんの出会いは、研究会仲間の行方尚史六段(当時)が開いた食事会でのことだった。交際期間は2年強。

森内俊之名人の結婚披露パーティー

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森内名人のお祖母さんのことが、2006年の近代将棋のスカ太郎さんの記事にも載っている。

(台詞の抜粋)

「スカさ~ん、僕のことは書かないでください。僕のおばあちゃんが将棋の雑誌類を全部読んでいて、僕のことが書いてあるスカさんの記事を読むと『俊之はまたこんなバカなことをしているのかい・・・・・・』と言って悲しむんです」

 このクレームをオイラはすでに100回以上聞いているわけなのだが、なぜか森内名人はオイラのいるそばに限って失敗系の行動を取ってしまう率が高いのも不思議な因果関係だ。先月号では、森内名人のおばあちゃんを号泣させてしまったのではないかと想像し、ちょっぴり心を痛めているオイラなのである。

本当にお祖母さんは森内名人のことが可愛くて可愛くて仕方がないのだと思う。

名人戦のハプニング

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たしかに、嬉しいことが一時期に集中することがある。

憧れている女性から映画を観に行こうと誘われ、映画を観に行く。

「ハチ公物語」。

その数日後、別の憧れている女性から、映画に行こうと誘われる。

やはり「ハチ公物語」。

もうその映画は観たとは言えず、また行く・・・

私にとって「ハチ公物語」は、「嬉しいことは一時期に集中してしまう」ということを思い出させてくれる映画だ。

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