近代将棋2006年12月号、鈴木宏彦さんの「データで見る将棋界」より。
今回の王位戦と王座戦の開幕前に両者(羽生善治三冠、佐藤康光棋聖)の共通の友人である森内俊之名人はこんなことを言っていた。
「佐藤さんは正直すぎるから羽生さんの勝負術につけこまれるんですよ。でも、そんな佐藤さんの将棋も大分変わってきた。自分で意識して変えているのでしょう。いまの羽生さんは決して調子がいいとはいえない。佐藤さんとしては、いま羽生さんからタイトルを取らないと取れるときがありませんよ」
森内自身も、20代後半からの自己改革を30を過ぎてからの成功に結びつけた人だけに、佐藤の気持ちはよく分かるのだと思う。
佐藤将棋が変わったというのは、最近よく言われることだ。一言でいえば、より大胆に、そして自由奔放になった。その一例が今期王位戦第5局の▲7八飛(1図)。
角換わり腰掛銀模様の序盤で振り飛車に転ずる。この将棋を見た島朗八段は、「この感覚についていける棋士はほとんどいないはず」と言った。佐藤自身、これまでの自分のスタイルを変えて、過去からの脱皮を図ろうとしているのだろう。
佐藤の自己改革は今期の好成績につながっている。それが成功しているのは間違いないが、たった一人だけ、それが通用しない人間(羽生)がいたということなのだ。
逆に言えば、絶好調の佐藤があらゆる戦術を駆使して挑んできても、それを跳ね返すだけの力を羽生は持っている。人一倍鋭敏な感覚を持つ羽生は佐藤将棋の変貌をいち早く見抜き、その時々に応じて適当な対策を立てているのだと思う。これぞ第一人者に不可欠な資質であるともいえる。
(以下略)
—–
佐藤康光棋聖(当時)はこの年度の最優秀棋士賞・最多対局賞・最多勝利賞・升田幸三賞を受賞している。
1図の一手前は飛車が2八にいたわけで、その局面から振り飛車にしようとは、振り飛車が三度のご飯よりも好きな人でも、絶対に考えないようなことだと思う。
実際には、この後、先手の右玉戦法のような流れとなるのだが、プロもアマもなかなか踏み込めないような構想だ。
島朗八段(当時)の「この感覚についていける棋士はほとんどいないはず」。
目の前に美味しそうなポークソテーがあったとして、ほとんどの人はそのまま食べようとするのに、一人だけジャムを塗って食べるような雰囲気だ。
—–
焼いた肉やミートボールにジャムをつけて食べるのは北欧風。
昔、あるスウェーデン料理店で初めて見たときはビックリした。
恐る恐る一口だけ肉とジャムと一緒に食べてみたが、その美味しさは理解できなかった。
そういう意味では、生ハムメロンの美味しさも、いまだに理解できていない。
—–
個人的には、素麺に入っている缶詰ミカンとさくらんぼ、冷麺に入っているスイカ、酢豚に入っているパイナップルも、理解できない。
別々に食べるのなら問題はないのだが。
しかし、調べていくうちにショッキングなニュースを発見した。
→中華街大通りを中心に40軒調査したところ、23軒のお店がパイナップル入りだった!パイナップル以外のフルーツが一緒に入ってる店は1軒あった!
酢豚にパイナップルを入れている店は少数派だと信じていたのに、横浜中華街でさえ、半数以上の店がパイナップルを入れている・・・・・・
自己改革をしたくなったら、パイナップル入り酢豚を食べるようにするところから始めてみようと思う。