近代将棋2004年2月号、スカ太郎さんの「関東オモシロ日記」より。
結婚披露宴のダブルヘッダー
先日、結婚披露宴のダブルヘッダーという我が人生において初体験となる出来事があった。
昼過ぎから中座真五段と中倉彰子女流初段の披露宴、夕方からは将棋世界元編集長で作家の大崎善生さんと高橋和女流二段の披露宴に出席させていただくことになったのである。
(中略)
中座・中倉夫妻の場合
「初めての出会いは、将棋の仕事で一緒になった時でした」という中座五段と中倉女流初段。第一印象は「まだ子供だなあ」(中座)、「素敵なお兄さん」(中倉)だったという。
それから数年が経ち、二人はまたまた将棋の仕事で偶然一緒になった。ここで恋愛感情が芽生えるわけなのだが、わたくちめスカロット・ホームズの推理と妄想によれば、中座五段がまず恋愛感情を抱いたと断定していいのであります。子供っぽかった彰子ちゃんは可憐なる乙女へと成長をとげおり、中座五段はゴクリとつばを飲み(フィクションです)、そのあまりにも可愛いらしい笑顔に恋心は一発でマットに沈められたであろうことは想像に難くないのですね。
しかし、すぐに告白することはあまりにも危険である。中倉女流初段に警戒心を抱かれないよう、少なくとも数ヵ月間は恋心を隠しつつ、あくまでも優しいお兄さん役を演じていたはずなのである。
そのもどかしさたるや、言葉では言い表せない。空腹時に目の前にあるけれど食べられないサーロインステーキ、灼熱の砂漠で見つけたけれど飲んではいけない冷たい水、徹夜の連投をしたけれど眠ってはいけないふかふかの布団・・・。優しいお兄さん役を必死に演じる中座五段だったが、次第に眩暈に襲われるようになってきた。対局中も恋わずらいの眩暈に襲われ、飛車の引き場所を一マス間違ってしまったのが実は△8五飛戦法の誕生秘話なのである(ウソだけど)。
しかし、中座五段が優しいお兄さん役を演じているつもりでも、彰子ちゃんはちゃんとわかっていたのである。
「はやく告白してよ、優しいお兄さん・・・」
これはオイラが勝手に話をこしらえた部分だが、きっと98パーセントくらいは当たっている自信がある。こんど中倉さんに確かめてみようっと。月日は流れ、「強がりが雪に転んで廻り見る」冬が終わって中座五段は升田幸三賞を受賞し、そして春。プロポーズは桜の木の下だったそうで、二人はめでたくゴールインしたのであった。
結婚生活の形勢予想は、恋心を一発でマットに沈められた中座五段に勝ち目は全く無く、彰子さんの勝勢(すでにKO勝ち?)だと思います。
大崎・高橋夫妻の場合
続いて夕方から始まった大崎・高橋夫妻の結婚披露宴で、オイラが妄想した話である。小鹿のバンビちゃんを連想してしまう愛らしさが持ち味の高橋和女流二段。しかし、彼女の実態は、しっかりとした考えを持っているオトナの女性なのである。
彼女にとって同年代の異性は「おこちゃま」のようにしか見えなかった。ところがある日、オトナの男に出会ってしまったのである。
それは将棋世界誌の編集長を務める大崎善生さんであった。
編集部の奥隅でタバコをふかしながら物思いにふける姿にしびれた(んじゃないかにゃーとスカロック・ホームズは推理するのであ~る)。
「とっても哲学的な人・・・、素敵だわ」
実は大崎氏はそのころ凝っていたパチスロのリーチ目に思いをはせていただけだったのだが、人生何が幸いするかわからないものである。
大崎氏に惹かれた高橋女流二段は、ちょくちょく将棋世界編集部に遊びに行くようになった。けれども、大崎氏は年齢の離れた和ちゃんを恋愛の対象としては見てくれなかった。そこにますます「オトナ」を感じずにはいられず、高橋女流二段は恋に落ちていったのである(フィクションです)。ある日、和ちゃんは思い切って「私、オトナの遊びがしてみたい」と大崎氏に言ってみた(しつこいですがフィクションです)。
「じゃ、行くか」
そう言うと、大崎氏はズンズン歩き出した。
(え、え、そんな。私まだ本当は気持ちの整理ができていないかも・・・)と、とまどいながらも、「早くこいよ」という大崎氏の後に従った。
着いた先は、大崎氏の自宅近くのパチスロ屋だった。
「7を揃えると8千円コインが出るんだ。台の上に書いてあるリーチ目が出たら、しっかり目押しして7を揃えなきゃだめだぞ」
そういうと黙々とパチスロに励む大崎氏。それに従い千円札を1枚、2枚、3枚、・・・、20枚・・・、と突っ込んでいくうちに、高橋女流二段の勝負魂に火がついた。
「キィ、どうして7が揃わないのよ」
「出ないか、もう帰ろうか」
「やだやだやだ、有り金全部使い切るまで、和、勝負する!」
そして、大崎氏と高橋女流二段はオケラになった。
「まいったなぁ、熱帯魚に餌も買ってやれないや」
「困ったなあ、電車賃がなくてもう帰れないわ」
そのとき高橋女流二段に妙案が浮かんだのであった。
「私、お昼の残りのパンを持ってるから、これを熱帯魚ちゃんにあげましょうよ。そのかわり、今晩泊めてもらっていい・・・?」(くどいですがくれぐれもフィクションです)。
こうして、パチスロではオケラになった大崎氏だが、実は一撃1億枚級の大フィーバーをぶち当てていたことにようやく気づくのであった。
結婚の格言
とまあ、オイラの妄想話はこの辺にしておいて、結婚披露宴のダブルヘッダーに出席してみて、結婚して2年が経つオイラもいろいろと考えることが多い1日だった。
オイラも結婚した当初は、中座。中倉夫妻や、大崎・高橋夫妻のように、幸せ120パーセントだったのである。
結婚して2年が経ち、今、オイラの幸せ度は何パーセントくらいなのだろうか。決して不幸せではないのだが、幸せ度120パーセントからは徐々に幸せ度が目減りしていることは隠しようのない事実である。
帰ってきて「結婚の格言」をインターネットで調べてみたところ、いやーあるわあるわで、しかも結婚に関してはズダボロに言っている格言が多いですね。その中で、結婚2年目のオイラが妙に納得してしまったのが次の3つの格言でした。
「結婚したまえ、君は後悔するだろう。結婚しないでいたまえ、君は後悔するだろう」(キルケゴール)
「男はみんな賭博師だ。できなきゃ結婚なんてしやしない」(フレデリック・リット)
「結婚するとき、私は女房を食べてしまいたいほど可愛いと思った。今考えると、あのとき食べておけばよかった」(アーサー・ゴッドフリー)
10年後、オイラはどんな格言に納得しているんでしょうか。結婚の先輩、バトルロイヤル風間さんにも訊いてみたいところですね。
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スカ太郎さんの妄想が非常に絶妙だ。
中倉彰子女流初段と高橋和女流三段は大親友。
その二人が同じ日に式を挙げた。
中座真七段は中倉彰子女流初段の7歳年上、大崎善生さんは高橋和女流三段より19歳年上。
厚生労働省が発表した「平成18年度『婚姻に関する統計』の概況・人口動態統計特殊報告」によると、結婚平均年齢は夫が31.7歳、妻が29.4歳で平均年齢差は2.3歳。
初婚夫妻では、夫が年上57.4%、同年齢19.0%、妻が年上23.7%。
両夫妻とも、平均を大幅に上回る男性年上婚だったことがわかる。
ちなみに、文中に出てくるバトルロイヤル風間さん(「関東オモシロ日記」のイラストを描いていた)の奥様は、バトルさんより13歳年下。
バトルさんは奥様の年齢を語るとき、「林葉さんと同じ年」と言っている。