有森大王伝説

今日のNHK杯戦は山崎隆之八段-有森浩三七段戦。

解説は井上慶太九段。

将棋世界1994年5月号、故・池崎和記さんの「昨日の夢、明日の夢 有森浩三六段」より。

 有森浩三は”デカイ”男である。

 まずもって体がデカイ。身長180センチ、体重80キロ。

 笑い声もデカイ。対局室でも、控え室でも、喫茶店でも、要するにどこにいてもダハハハハハハハハハハハハハハハハハと、実に豪快な笑い方をする。

 態度もデカイ。相手がだれであれ、怖めず臆せずズケズケ言うのが有森流だ。傍若無人ではあるけれど、ただし、たいていの場合、言ってる内容は正しい。

 将棋もスケールがデカイ。

 C2時代は攻め七分の居飛車党で、矢倉と居飛車穴熊を得意にしていたが、どういう風の吹き回しか、2年前、突然、中飛車党に転向した。

 有森と親しい井上慶太によると、中飛車は「競馬で言うと、2キロぐらい余計に背負っているみたいな」戦法で、「それで勝つというのは相当強いということ」だそうだ。

 有森は郷里の岡山市に住んでいる。奨励会時代から四段時代の一時期までは大阪市内に住んでいたが、9年前、父親の死去をきっかけにして郷里に帰り、以来、母親と二人暮らし。

 3月中旬、B2への昇級を果たして間もない有森を岡山に訪ねて話を聞いた。

(以下略)

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将棋マガジン1994年5月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。

タマ「あ、兄弟子や」

有森六段「お、誰かと思た」

淡路八段「有森君明日順位戦? 勝ったら昇級?」

タマ「さすがに今日はおとなしくしてますね」

有森「まあ、どうせ明日の晩は荒れとるよ」

タマ「じゃあ、今からパーッと遊びに行きますか?」

有森「前祝いちゅうのは聞くけど前に荒れるゆうのは…聞かんなあ」

(と言いつつ翌日勝って昇級を決めた。有森さんえら~い。こんだけ言うてんから、かわいい妹弟子にお小遣いでもちょうだいね)

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将棋マガジン1994年6月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。

 兄弟子の有森六段は、対局前日早目に連盟に来て麻雀をしてから翌日対局に臨むのを常としている。メンツが足りない時は我が家にも電話でお呼びがかかる。

タマ「明日、有森さんが対局やからちゃんと来て待ってたの。偉いでしょう」

有森「なかなかやりよる。でもどうせなら、もう一人そろえて待ってへんか?」

タマ「そこまで言う。私は僕べとはちゃうもん。本当は、マガジンの取材やねん。有森さんならきっと期待に応えてくれると思って」

有森「早よソウタロウ(もう一人のメンツで元奨励会員)んとこ電話してきなさい」

(麻雀スタート)

タマ「ロン。チートイツ」

有森「ンー、なんぼや」

タマ「ン~、チンイツなんだけど」

ソウタロウ「鹿野さん、それはひどいでしょう」

有森「今のは二重にショック受けた」

タマ「だって何て言うのかようわからんかってんもん」

(タマは麻雀の点数も役の名前もよくわかっていない)

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将棋マガジン1994年11月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。

カラオケⅡ

有森六段「麻雀も、もう飽きたし、カラオケでも行くか」

杉本四段「5人だし、いいですよ」

タマ「エー、やだ、有森さんと行くと、大っきな声で横から邪魔するんやもん」

友人F「いや~、5人だし、カラオケにしましょう」

平藤四段「ほな、どこにする」

タマ「わかった十三なら家から近いから行くわ」

―そして、十三の店が閉店する迄歌いたおす―

平藤四段「さあ、次はどこに行く」

タマ「ガーン、私、帰りたい」

有森「つき合い悪いぞ」

タマ「よもや、まさか、12時間近く一緒に遊んだあげく、つき合い悪いって!?」

有森「ダーダーダー(高笑い)」

友人F「じゃあ、次は梅田ですか」

タマ「ウーム、毒食えば皿までか…」

カラオケⅢ(続き)

杉本「この店、延長できないって。何時間にしますか」

友人F「3時間位でゆるめときますか」

有森「わかった、延長でけへんねやったら、3時間後に、出て、もう1回、入りなおそう」

タマ「あんたは人間か!?」

カラオケⅣ(10日後ぐらい)

杉本「今日はカラオケに行きたい」

友人F「そういえばしばらく行ってませんね」

タマ「しゃーない。今日は有森さんもおらんし、静かに歌いますか」

―杉本、今迄歌った事のないSの歌を歌う―

友人F「杉本さん、珍しいですね」

タマ「はっはぁ~、わかった。先月Kちゃん(女流棋士)とカラオケに行った時、お願いされて歌われへんかったから、練習したんやろ」

杉本「CD買いましたよ」

タマ「ほぉー、なかなかやるやん」

杉本「今度、一緒に行くのは何年先かわからんのになぁー」

カラオケⅤ(翌日)

有森「カラオケ行くで」

杉本・F・タマ「昨日、鬼のようにいっぱい歌いましたよ」

有森「そんなん、ワシが知るか!?」

―有森大王には逆らえない3人は、やはりついて行くのであった―

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将棋マガジン1995年6月号、鹿野圭生女流初段(当時)の「タマの目」より。

 有森六段と井上六段の二人と一緒に仕事をした。色紙を頼まれた二人の反応は?

連盟職員「先生方、数枚色紙をお願いします」

有森「書くんはエエけど、お客さんに拒否されるで」

井上「墨で色紙なんかよう書かんわ」

有森「ワシは字が嫌いやから棋士になったんや」

井上「なに書こ? 一手……」

有森「バッタリ」

 延々ギャグを続けて書くに至らない二人であった。

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今日のNHK杯戦、どのような展開になるのか楽しみだし、両対局者をよく知る井上慶太九段の解説も楽しみだし、感想戦も楽しみ。

対局前・対局後の控え室では、井上慶太九段、山崎隆之八段、有森浩三七段、が漫才のような会話をしている可能性が高いと思われる。

個人的には、当日の控え室の様子も、とても気になる。