将棋世界1991年11月号、神吉宏充五段(当時)の「対局室25時 大阪」より。
9月12日、木曜日。この日の対局は6局。私は脇七段と王位戦で、彼とは久しぶりの対局。盤の前によいしょと座ると「うわっ、やっぱり目の前で見たら迫力あるなあ」脇は驚いた仕草をする。
それを聞いた内藤九段(有吉九段と棋王戦の対局)が飛んできて「脇君、こんな相手とプロレスやったら一発で吹っ飛ばされるで。将棋で良かったなあ」と変な比喩でからかう。関西の対局の朝の光景はいつも賑やかで楽しい(順位戦の日は別として)。
対局が始まって小一時間。私の隣の児玉-森安(正)戦の記録をしていた上地1級が、突然気分が悪くなってリタイア。代わって偶然会館に来ていた野間三段が代記録係。ところが彼も昼から稽古があってリタイア。結局代記録係の代記録を久保6級が引き受けて何とか場が収まった。こんな事はおそらく史上初だろう。まあ、記録係も気の毒だが、真剣勝負をやっている対局者二人は、次から次へと代わる記録係に勝負どころではなかったのではないだろうか。ここで森(信)五段の登場。「最初の記録の上地君が気分悪なったんが事の始まりなんや。きっと児玉流の変則将棋と森安先生の長手数必至将棋を考えてたら気分悪なったんとちゃうやろか。どや、この深いヨミ」なるほど、そこにたどりつくのか。
この日の昼食時の話題は、もちろん中村元王将婚約。何といってもスポーツニッポンの見出しが、隣の中森明菜の見出しを断然上回っているのが面白い。有吉九段がその記事を読みながら「そうなんだねえ。で、谷川先生はこんな話ないのかねえ神吉君」
「いえ、さっぱり聞きませんが」
「ほんとはどうなの」
「さあ、対局も忙しいですし、まだまだじゃないでしょうか」
「そうかねえ……。何かあるんじゃないの?」長年のカンが働いたのだろうか、有吉先生の質疑応答は厳しかった。で、谷川先生本当のところは……。
最近スキューバダイビングに凝ってる阿部五段と話していると、急に彼は、「イントラになりたい」と言い出した。
「いんとらぁ?」
「ええ、スキューバのインストラクターですよ。月に1回ぐらいしか海に行けないけど、もうハマっちゃいましてね。こんな面白いものないですよ」
インストラクターになりたいなんて、よっぽど阿部を虜にしたのだろう。しかし、彼にはカラオケボックスという、ハマリ技があったはず。
「カラオケはやってへんのかいな」
「やってませんよ。まあ、スキューバの仲間とボックスへ行くぐらいですね」
それがやってるっちゅうねん!
(以下略)
—–
何気ないある日の関西将棋会館の模様。
感じたことをすぐに口に出した脇健二七段、朝からなぜかテンションが高い内藤國雄九段、絶妙な味を繰り出している森信雄五段、あまりにも勘が鋭い有吉道夫九段(この後まもなく谷川浩司竜王の婚約発表が行われた)、スキューバダイビング仲間と結婚をすることになる阿部隆五段、本当に楽しい雰囲気だ。(タイトル・段位は当時)
—–
関西将棋会館の1階には「レストラン イレブン」がある。
私が直近でイレブンへ行ったのは2003年8月24日のお昼のことだったが、その時はポークソテーを頼んでいる。
洋食系が好きな私にとって魅力的なメニューばかりで、ポークソテーと決めるまでに結構時間がかかったと思う。
大阪へ行ったらぜひ行ってみたい店だ。
ふとしたことから、イレブンのブログを発見した。
さっき見つけたばかりなので、時間のあるときにじっくりと読んでみたい。