将棋世界1983年5月号、石田和雄八段(当時)の「将棋相談室」より。
問 どちらが正しい?
1図から升田九段の「升田流新戦法」では”▲7七角△8二飛▲8三歩△3二飛▲8八飛で先手有利”と書いてあります。しかし内藤王位の「石田流穴熊破り」では”▲7七角△8二飛▲8三歩△5二飛▲8八飛△7二金となって、攻め切るのは容易でない。だから1図では▲8八飛とする”と書いてあります。
どちらが本当なのでしょうか。
(愛知県 Oさん)
答
当代一流棋士の見解がこうもわかれているのでは、あなたが疑問をもたれるのはもっともだと思います。
私がその間に入って明快な結論を出すということは僭越かもしれませんが、なんとかがんばってみましょう。私も時間をかけて調べてみたのですが、1図以下▲7七角△8二飛▲8三歩△3二飛▲8八飛(2図)でよしとする升田九段の説には首をかしげます。
内藤王位の言われるように、この局面は角を手放したぶんだけ先手が苦しいように思われます。
ここはやはり▲8八飛(3図)とぶっつけるのが正着だと思います。
飛車交換になれば、飛車の打ち込み場所の多寡、玉の固さからいって後手は絶対的な不利に陥ります。
そこで後手は△8七歩と打ちますが、▲9八飛△8八角▲7八金△3三角成▲7七角△8二飛▲8六歩(4図)から、△8七歩を取るねらいで指せば先手有利と思います。
これは内藤王位の著書に書いてあったかもしれませんが、見解のわかれる1図の局面では▲8八飛とぶっつけるのが正解とする内藤説に私は賛成します。
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升田式石田流の変化局面。
私も1図と似たような局面で▲7七角△8二飛▲8三歩と指して、その後苦しくなった記憶がある。
▲7七角△8二飛▲8四歩と指したこともあるが、△3三桂(△3三銀だと▲8八飛△7二金▲3三角成△同桂▲8三銀がある)と指されて、ウッとなったこともある。
なるほど、1図からは▲8八飛が正解なのかと、個人的には20年以上持っていたモヤモヤ感が取れた感じだ。