将棋世界1999年5月号、三浦弘行六段(当時)の「昇級者喜びの声(C級1組→B級2組)より。
今期の順位戦は早々と2戦目にして黒星を喫してしまい、悲観派の私はその時点で昇級を半ばあきらめていた。
何とか3勝1敗まで漕ぎ着けて迎えた折り返し地点の5戦目。
序盤から関根九段の超急戦策に苦しめられて図の局面になった。
ここでは後手の私がはっきりと不利になっている。感想戦で関根九段が言われた様に、▲7七銀とじっと引いて落ち着かれていたら、私は指し手に窮していただろう。
しかし実戦では▲7五歩と激しく動いて来られたので微妙な綾が出て来て逆転勝ちを収める事が出来た。
以降も苦しい戦いが続いたが、年明けには自力昇級の目が出てきた。
漸くにしてと言った所だが、残りの3人は強敵である。
しかしこの時点ではもう1局も落とせないと思える程に昇級予想ラインは高そうだった。
年明けの順位戦を何とか乗り切ったが依然として楽にはなっていない。
そんな心境でいる時に1月29日放送の村山さんの特集番組を見て衝撃を受けた。あれだけの大病になりながらもAクラスにまで昇り詰めた村山さんの事を考えると、将棋の勝敗だけにこだわる事が出来る自分の甘さが恥ずかしくなった。
緊張感が取れた。とにかく、残りの2局全力を尽くそうと思った。
2月も3月も苦しい将棋だったが、どうにか連勝して昇級する事ができた。
来期はB級2組でさらなる実力者達と対戦する事になる。昔お世話になった先生もいる。終盤が粘り強い人もいる。序盤から巧みな動きをされる方もいる。
少しでも気を抜くと、一気に奈落の底に突き落とされそうだ。これまで以上に気を引き締めて臨みたい。
最後に、応援して下さった方々に誌上を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
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この期の三浦弘行六段(当時)は、2戦目で佐藤秀司五段(当時)に敗れたものの、残り3戦の時点で、
屋敷伸之七段(1位)6勝1敗
三浦弘行六段(5位)6勝1敗
鈴木大介五段(7位)6勝1敗
神崎健二六段(10位)6勝1敗
佐藤秀司五段(19位)6勝1敗
深浦康市六段(21位)6勝1敗
中田宏樹七段(3位)5勝2敗
小倉久史六段(16位)5勝2敗
自力の2位だが、「しかしこの時点ではもう1局も落とせないと思える程に昇級予想ラインは高そうだった」と書かれているように、ハラハラするような展開。
「残りの3人は強敵である」とある3人は、小林宏六段、真田圭一六段、中田宏樹七段。
年が明けて8戦目の結果は、
屋敷伸之七段(1位)7勝1敗
三浦弘行六段(5位)7勝1敗
神崎健二六段(10位)7勝1敗
深浦康市六段(21位)7勝1敗
中田宏樹七段(3位)6勝2敗
鈴木大介五段(7位)6勝2敗
小倉久史六段(16位)6勝2敗
佐藤秀司五段(19位)6勝2敗
佐藤秀司五段と鈴木大介五段が敗れて一歩後退したが、過酷な状況は変わっていない。
このような時に三浦六段が見たのが、故・村山聖九段の特集番組。
「年明けの順位戦を何とか乗り切ったが依然として楽にはなっていない。そんな心境でいる時に1月29日放送の村山さんの特集番組を見て衝撃を受けた。あれだけの大病になりながらもAクラスにまで昇り詰めた村山さんの事を考えると、将棋の勝敗だけにこだわる事が出来る自分の甘さが恥ずかしくなった」
バリバリの若手棋士の心をも動かした村山聖九段。
このように感じた三浦六段もすごい。
とてもいい話を聞かせていただきありがとうございます、と三浦九段に感謝したいほどだ。
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「1月29日放送の村山さんの特集番組」とは、1999年1月29日放送のテレビ朝日系『驚きももの木20世紀』。
Youtubeにその映像がアップされている。
取材も行き届いており、とても素晴らしい内容。
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「来期はB級2組でさらなる実力者達と対戦する事になる。昔お世話になった先生もいる。終盤が粘り強い人もいる。序盤から巧みな動きをされる方もいる」の、
”昔お世話になった先生”は、三浦九段の研修会時代の幹事だった小野修一七段(当時)と泉正樹七段(当時)、
”終盤が粘り強い人”は、同時にB級2組への昇級を決めた深浦康市六段(当時)、
”序盤から巧みな動きをされる方”は藤井猛竜王(当時)、
と思われる。
全編、三浦弘行九段らしさに溢れる文章だと思う。