将棋世界2000年8月号、鈴木大介六段(当時)の「鈴木大介の振り飛車日記」より。
棋王戦予選決勝、対日浦七段戦。これに勝てば四段昇段した時以来の本戦に入る事が出来る一局。日浦七段と言えば羽生四冠キラーで有名。一時期は「マングース日浦」とまで呼ばれていた程だ。また、連盟に来ている日が多く、常に感想戦の時には対局室にいるくらい研究熱心である。
1図はその序盤▲5八金とした局面だが、この局面がすでに数日前に行われた中川-鈴木戦の改良形だと思われる(その時も日浦七段はいました)。
何か指していて見切られているような気分だった。感想戦を見るとそういった効果があるのかもしれない。
ここで△6五歩としたのがまずく、これに代え△4五歩▲5七銀△7七角成▲同銀△2二飛(参考A図)と指す所だったか。
△6五歩以下は▲5七銀△7四歩▲3六歩△7三桂▲3八飛△4三金(2図)と進み振り飛車堂々たる作戦負けである。
この堂々たる作戦負けというのがミソでこの局面プロ100人に聞けば99人が居飛穴を持ちたいと思うだろう。
しかし僕は根っからの振り飛車党なのでこれでも振り飛車が悪くないと思う。また、このように堂々と穴熊に組ませてそうして勝ちたい。
最近は藤井システムの登場で振り飛車も詰みまで研究される時代になって来た。自分である将棋を詰みまで研究する事は素晴らしい事だと思う。ただし皆でよってたかって研究して実戦に使うのはどうかとも思う。それで見るアマの方が楽しめるとは僕には思えない。自分にしか指せない手を指す。これこそプロだと思う。早く藤井システムが特許を取り藤井竜王しか指せない伝説の戦法になる事を祈る!
もっと書きたいこともたくさんあるがこれ以上書くと後で皆にイジメられそうなのでまたの機会にしたい。
(以下略)
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振り飛車愛に溢れた鈴木大介六段(当時)の文章。
2図が決して振り飛車が悪くないという見解が、鈴木大介流の真骨頂であり、振り飛車党にとってはとても心強く感じられるところだ。
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最近、羽生善治三冠が藤井システムの出だしからのオーソドックスな四間飛車を、渡辺明竜王が阪田流向かい飛車を指して、それぞれ勝っている。
いずれも後手番での採用だが、相居飛車の研究が進むにつれ(もちろんコンピュータソフトによる研究も含む)、相居飛車後手番が以前よりも難しい状況になっている可能性もあるのかもしれない。
また、藤井猛九段は、昨日放送された銀河戦決勝(対広瀬章人八段)で藤井システムで勝っている。
久保利明九段も、振り飛車で順位戦B級1組5連勝中。
今後、徐々にでもプロ棋戦で振り飛車が増えていけば、大喜びするファンが多いだろう。
昭和40年代に斜陽戦法と呼ばれていた角換わり腰掛銀や横歩取りが平成になる頃にメジャー戦法として復活したように、オーソドックスな振り飛車もそろそろ復活しても良い時期かもしれない。