アサヒスーパードライの広告「キレ味。この一手。第1回 先崎学八段」

将棋世界2000年10月号の、アサヒスーパードライの広告「キレ味。この一手。 第1回 先崎学八段」より。

 修行時代からずっと憧れていたのが森将棋だ。強引なサバキ、綱渡りのような終盤…。森九段の順位戦の棋譜は何度並べたかわからない。その森九段と順位戦B級1組のリーグ終盤で当たった。僕にとってA級に昇格するためには絶対に勝たなければならない大きな一番だった。森九段の作戦は力戦中飛車。定跡形ではなく「力で勝負しよう」と言っている。さすがは憧れの森九段だと思った。僕もその気合いを受けて突っ張ったので大乱戦になった。中盤は森九段の力強い受けにあって僕の攻めが切れ模様になりかけたのだが、▲5三銀(図)の放り込みが会心の一手。このタダ捨てを森九段はうっかりしていた。図から△同金に▲6二角がキレのある攻め筋だ。以下は飛車を取って攻めがつながり、勝つことができた。感想戦で「一発くっちゃったよ」と森九段に言われたときは、無性に嬉しかった。

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観戦記で譜割りをする時に悩むことの一つは、ポイントとなる手が指される直前の状態(次の一手の問題のようなイメージ)を図にするか、その手が指された局面を図にするかという選択。

昨日の三浦弘行八段(当時)は前者、今日の先崎学八段(当時)は後者を選んでいる。

このスーパードライの広告シリーズ全体で見てみると、

  • 第1回 先崎学八段 後者
  • 第2回 田中寅彦九段 後者
  • 第3回 島朗八段 後者
  • 第4回 屋敷伸之八段 前者
  • 第5回 森内俊之八段 前者
  • 第6回 鈴木大介八段 前者
  • 第7回 森下卓八段 前者
  • 第8回 丸山忠久名人 前者
  • 第9回 山崎隆之四段 前者
  • 第10回 行方尚史六段 前者
  • 第11回 三浦弘行八段 前者
  • 第12回 米長邦雄永世棋聖 前者
  • 第13回 中座真五段 前者
  • 第14回 佐藤康光九段 前者
  • 第15回 久保利明七段 前者

と、前者の方が多くなっている。

この局面で複数の候補手があるが、このように考えてキレのある一手を指した、という時には前者になることは間違いないが、手の性質、好みによっても分かれるところなのだろう。

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アサヒスーパードライは1987年2月から販売が開始され、1997年以降、年間シェアがNo.1となっている。

ビール嫌いの私も、スーパードライを初めて飲んだ時は、飲みやすいビールだと驚いたものだ。

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「キレのある一手」と反対の概念は「コクのある一手」ということになるのだろう。

「キレのある一手」がカミソリのように冴えた鋭い手とすると、「コクのある一手」は漢方薬のような一手。

厚みを増す一手、超忙しい局面でじっと端歩を突いておく一手、などであろうか。