一字駒の発案者である大山康晴十五世名人が次に新しく考えた駒

将棋世界1982年9月号の「メモ帖」より。

 ふつうの将棋盤より、ふた回りも大きい将棋盤ができた。

「なんでも時代と共に変わっていくのは当然」と、前にはテレビ対局に最適という一字駒を開発した大山十五世名人の新アイデアである。”大象盤”の命名も大山名人。

 作ったのは山形市の駒師、香月氏で、碁盤とほぼ同じ大きさの45センチ✕42センチの七寸盤。

「うわさを聞いて各方面から注文が来ているんですが、大山名人がもう少し待てといわれまして……」

 近いうちに香月堂から発売されるだろうが、いま実用新案の申請中という。

 盤は碁盤の要領で作るが、駒は手間も費用もかかる。

「材料は普通の駒の三倍必要」というから、御蔵ツゲで盛り上げ駒を作ると駒だけで百万円?

「イヤ、発売時にはなるべく安くせよと大山名人から言われてますので」と、香月さんは慎重な構え。

 写真は新カヤ七寸盤に御蔵ツゲ彫り埋め駒、書体は巻菱湖。並べて置いたのがふつうの将棋盤。

「のびのびと指せるし、感じがいい。目や肩も疲れない」といいことばかり。しかし一枚歩損しただけでも飛車を取られたような気になってしまいそー。

 さて、大象盤が将棋ファンにどのように迎えられるか、面白いところだ。

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将棋世界の翌月号には、ながの東急大将棋まつりで地元のアマ強豪と飛落ち戦で戦う大山康晴十五世名人の写真が載っている。使われているのは大象盤・駒。

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将棋世界1982年11月号に掲載されている大象盤・駒の広告を見ると、普通の将棋の駒に比べて、「王将」が縦が1.32倍、横が1.37倍。「歩兵」が縦が1.3倍、横が1.43倍。

具体的にどれくらいの大きさのイメージかというと、大象盤の「歩兵」が普通の駒の「王将」よりも縦、横とも10%ほど大きなサイズ。

大象盤・駒で初手▲7六歩と指す時の感覚が、普通の駒で▲7六玉と指す感覚と思えば良いのだろう。

盤は縦が通常の将棋盤の1.25倍、横が1,27倍。

価格は、

新かや五寸大象盤セット(駒はシャム黄楊極上彫)78,000円

本桂三寸大象盤セット(駒はシャム黄楊極上彫)58,000円

駒の材質を御蔵ではなくシャム黄楊にすることにより価格を抑えている。

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将棋世界1982年12月号に掲載されている大象盤の広告では、大山十五世名人の推薦の言葉が載っている。

 妙手好手は将棋の楽しみのひとつですが、ミスを少なくすることも大切です。この大象盤は大きいので、見やすく全体の布陣がよくわかり、一手一手に注意が行き届いてミスのない将棋が指せます。大象盤が将棋をいっそう楽しいものにし、研鑽に役立つものと確信し、お薦めします。

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たしかに、大きな盤・駒で指すと、新鮮な感覚がして、一手一手を大事に指そうという気持ちが起きて、ミスが出づらくなるようにも思える。

とはいえ、普通の大きさの盤・駒で指す時は元に戻ってしまいそうな感じもする。

どちらにしても、この大象盤は、あまり売れなかったようだ。

過去のオークションを調べてみても、54の入札があって落札価格が39,002円。大山十五世名人の箱書きがあっても定価割れといったところ。

同じお金を使うのならば、大きなシャム黄楊よりも普通のサイズの御蔵島黄楊の駒を手に入れたくなるのが人情というものだろうから、なかなか難しい。

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と言うか、大山十五世名人が一字駒の発案者だと初めて知って、驚いている。さすが大山十五世名人。