18歳の豊川孝弘二段(当時)

将棋マガジン1985年12月号、ジェームス三木さんのジュニア・チャンピオン戦〔豊川孝弘二段-高徳昌毅二段〕観戦記「静(豊川)と動(高徳)の対決、”動”に凱歌」より。

 全くの素人に観戦記を書けという。思わずにっこりしたが、すぐ不安になった。私は無類の将棋好きだが、棋力は町道場の初段程度である。かつてNHKの銀河テレビ小説「煙が目にしみる」で、年齢制限と闘う奨励会員の苦しみを書いたことがある。それでお声がかかったのだろう。あのときは青野照市七段(当時)のお世話で、鈴木英春三段、武市三郎三段(当時)に取材させて貰った。まあ何とかなるだろう。こんなチャンスを見逃す手はない。

 10月4日1時半、なつかしい将棋会館に到着すると、玄関で編集部のW氏が待っていてくれた。この日は順位戦や新人王決定戦などで対局室がなく、ジュニア・チャンピオン戦は鳩森神社の広間で行うという。私は少し不満だったが、行って見ると立派な庭つきの大きな和室であった。床の間に、はじけた南天が活けてある。別の部屋で詩吟の稽古をしている声が流れ、なかなか風流なBGMとなっている。

 既に力強く駒をならべはじめていた対局者を、W氏が紹介してくれた。上座の高徳二段は23歳、二上九段門下で、風貌がなんとなく谷川前名人に似ている。東京出身のアパート住まい、連盟野球部のレギュラー選手だそうだ。一方の豊川二段は18歳、関屋六段門下で、端正な横顔が巨人の原選手を思わせる。こちらも東京出身で自宅から通っている。ゆうべは王座戦の記録係をつとめたそうだ。

 ちなみにこの対局の賞金は5万円、米長スポンサーはほんとにえらい。ただし私は米長さんに貸しがある。首相官邸の文化人パーティーでしつこく頼まれ、加賀まりこを紹介してあげたのだ。

(以下略)

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このジュニア・チャンピオン戦は、米長邦雄十段(当時)が企画しスポンサーとなって開催されたもの。

画期的だった奨励会特別選抜戦

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ジェームス三木さんは脚本家。

銀河テレビ小説『煙が目にしみる』は1981年にNHKで放送されており、主演は故・川谷拓三さんだった。

銀河テレビ小説『煙が目にしみる』(NHKアーカイブス)

この観戦記が書かれた1985年は、ジェームス三木さん脚本の連続テレビ小説『澪つくし』が放送された年で、視聴率55%を記録している。

さらに1987年、大河ドラマ『独眼竜政宗』を大ヒットさせ、大河ドラマ史上1位の視聴率を獲得している。

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豊川孝弘二段(当時)が巨人の原辰徳選手を思わせる、と書かれているが、似ているかどうかは当時の写真からだけでは何とも言えないところがあるが、端正な雰囲気であったのは間違いない。

豊川孝弘二段(当時)。将棋マガジン同じ号より。撮影は弦巻勝さん。

 

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