第89期棋聖戦第1局対局場「ホテルニューアワジ」

羽生善治棋聖に豊島将之八段が挑戦する棋聖戦、第1局は兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われる。

中継
AbemaTV将棋チャンネル
ニコニコ生放送

ホテルニューアワジは、淡路島に位置し、全客室より紀淡海峡から大阪湾を一望できる絶好のロケーション。

icon

〔ホテルニューアワジでの昼食実績〕

将棋棋士の食事とおやつによると、ホテルニューアワジでの棋聖戦の昼食実績は次の通り。

羽生善治棋聖と挑戦者のホテルニューアワジでの昼食実績。

2017年 きつねうどん おにぎり2つ ○
(斎藤慎太郎七段 淡路島牛丼)
2016年 きつねうどん おにぎりは不明 ●
(永瀬拓矢六段 にぎり寿司)
2015年 きつねうどん おにぎり2つ ◯
(豊島将之七段 わかめそば、おにぎり)
2014年 きつねうどん おにぎり2つ ◯
(森内俊之竜王 牛丼)
2013年 きつねうどん おにぎり2つ ◯
(渡辺明竜王 淡路牛の牛丼)
2012年 きつねうどん おにぎり2つ ◯
(中村太地六段 にぎり寿司)
2010年 きつねうどん おにぎり2つ ◯
(深浦康市王位 鰻重)
2009年 天ぷらうどん おにぎり2つ ●
(木村一基八段 牛肉入りのそば)
2008年 きつねうどん おにぎり2つ ◯
(佐藤康光棋聖 肉うどん、おにぎり1つ)
2005年 きつねうどん おにぎり2つ ●
(佐藤康光棋聖 肉うどん、おにぎり2つ)
2001年 きつねうどん おにぎり2つ ●
(郷田真隆八段 うどん、いなり寿司)

2002年以降、棋聖位に就いたのは羽生善治三冠と佐藤康光九段だけ。佐藤康光九段と挑戦者の昼食実績は次の通り。

2007年 肉うどん おにぎり ●
(渡辺明竜王 親子丼)
2006年 肉うどん おにぎり 〇
(鈴木大介八段 ざるそば、おにぎり)
2004年 天ぷらうどん おにぎり少々 〇
(森内俊之三冠 天ぷらそば、おにぎり1つ)
2003年 チキンカレー 〇
(丸山忠久棋王 ヒレステーキ)
2002年 肉うどん おにぎり2つ ●
(郷田真隆棋聖 鍋焼きうどん、いなり寿司3つ)

〔昼食予想〕

羽生善治棋聖はきつねうどんで間違いない。2010年以降、きつねうどんで6勝1敗という圧倒的な高勝率。

豊島将之八段は、今年の王将戦ではカレー系、蕎麦系が多かった。

予想は次の通り。

羽生善治棋聖・・・きつねうどん おにぎり2つ

豊島将之八段・・・わかめそば、おにぎり

 

藤井猛九段「考えてもそうは指さないよ。桂で取ると思ったね」

将棋世界2003年8月号、河口俊彦七段(当時)の「対局日誌」より。

 いよいよ順位戦が始まる。

 その初戦が藤井九段対鈴木(大)八段戦である。この組み合わせがにくい。

 私が将棋界に入って50年になるが、その間最も衝撃を受けた事件といえば、中村修の出現だった。何を考えているかさっぱりわからず、なぜこんな将棋が勝てるんだろうと思った。技術面でいえば、将棋に産業革命みたいな事が起こったのである。

 驚かされた事は、他にいくつもある。藤井猛が突然竜王戦の挑戦者になり、谷川浩司に4連勝したときもたまげた。

 ただ、タイトルを取っても、それだけでは信用してもらえないのがこの世界で、2期目に鈴木大介を退けて、どうやら本物らしいと認められた。らしいとついたのは、相手に恵まれた面もある、と仲間達は見たからである。

 そして3期目、羽生善治と大激戦の末降し、文句なしの竜王となった。トップクラスとしての実績を作ったのである。

 そんなことがあって数年、鈴木大介は八段に昇り、順位戦という特別なところで対戦することになった。藤井九段との差が詰まったか、以前のままかがわかる絶好の機会だ。

 そんな因縁の他に、振り飛車党同士の対戦、という見方もある。

 藤井九段は田中(寅)九段と並ぶ序盤巧者。そんな特徴は序盤早々にあらわれた。

 1図は先手が右銀を早く繰り出して急戦狙いのごとくだが、そうではない。玉の囲いの根本を作ったのである。矢倉戦法でいえば、▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀という手順があり、1図の▲3七銀は、矢倉囲いの▲7七銀と同じような手である。

 後の駒組手順から察するに、藤井九段は研究してきたと思われる。その成果は駒組が出来上がったころにはっきりし、片矢倉に組んだ着想に、鈴木八段は「思いもつかなかった」と感嘆した。

 事情は2図でわかるが、3七の銀を中心に駒組を作るとすれば、矢倉囲いが普通で、▲2八玉、▲3八金の形になる。それを藤井九段は▲3八玉、▲4八金の片矢倉にした。それがうまい、というわけ。プロならではの感想である。

(中略)

 夕食休みのころになると、藤井対鈴木戦が大きく動き、おもしろくなってきた。2図となっては先手が困っているように見える。飛車の逃げ場がないから。しかし、こういう危なく見える局面は、実はさばきやすいもので、心配はない。

2図以下の指し手
▲6五桂△6四金▲4四角△同飛▲7三歩△同桂▲同桂成△同玉(3図)

 軽く▲6五桂が狙い筋。後手は金を取られてはかなわないから△6四金と逃げるが、角交換から▲7三歩と打って、攻めの形になっている。

 これに対し、鈴木八段は△7三同桂と応じたが、△8六銀と飛車を取りたかったらしい。局後の感想戦でそれを言うと、藤井九段は「考えてもそうは指さないよ。桂で取ると思ったね」。

 鈴木八段は「△7三同玉と取った形が厚いからな」と自分を納得させたが、後日になっても「飛車を取りたかったな」と未練がましく言っていた。

 ともあれ、3図となり、▲8九飛△4六歩という展開になったが、急所に手をつけて後手やや有利、が控え室の評判だった。

(以下略)

* * * * *

2図からの▲6五桂がドキドキするような一手。振り飛車の醍醐味を表現しているような手だ。

* * * * *

「考えてもそうは指さないよ。桂で取ると思ったね」は、プロの第一感ということなのだろう。プロ棋士の体に埋め込まれているDNAがそのように言っている、というような雰囲気。

* * * * *

この一局は鈴木大介八段(当時)が勝っている。

だから逆に「飛車を取りたかったな」と後になっても言っていたのだと思う。

敗局だったら、悔やまれすぎて言及したくないような気持ちになるのではないだろうか。

しかし、明るく開放的なキャラクターの鈴木大介九段なので、勝っても負けても「飛車を取りたかったな」と言っていたとも考えられる。

* * * * *

この「対局日誌」のページの鈴木大介八段の写真で、「A級に上がって棋譜を全部載せたかった(鈴木)」とキャプションが付いている。

たしかに、A級になると全局、観戦記が新聞に掲載される。

A級とB級1組以下の、意外と気がつきにくい差がある部分だ。