将棋ペンクラブ大賞最終選考候補作(第30回)

将棋ペンクラブ大賞2次選考結果をお知らせ致します(2017年4月1日から2018年3月31日に発表された作品が対象)。

2次選考は、1次選考で選抜された作品を10名の2次選考委員(技術部門は4名の技術選考委員)が選考します。各2次選考委員の各作品ごとの三段階評価を大賞事務局が集計しポイント化します。各部門、ポイントが上位の作品が最終選考候補作となります。

(順不同、敬称略、青字が筆者。各部門横の数字は、推薦作数→1次選考選抜数→2次選考選抜数)

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〔観戦記部門〕 26作品→17作品→6作品

大川慎太郎 第30期竜王戦決勝トーナメント1回戦 藤井聡太-増田康宏(読売新聞)

諏訪景子 第75期名人戦七番勝負第4局 稲葉陽-佐藤天彦(朝日新聞)

後藤元気 第42期棋王戦五番勝負第1局 千田翔太-渡辺明(共同通信)

田中幸道 第89期棋聖戦2次予選 千田翔太-桐山清澄(産経新聞)

藤井聡太 藤井聡太四段 炎の七番勝負 藤井聡太-羽生善治(将棋世界)

上田初美 第44期岡田美術館杯女流名人戦 上田初美-清水市代(スポーツ報知)

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〔文芸部門〕 22作品→5作品→3作品

山本一成 『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?』(ダイヤモンド社)

柚月裕子 『盤上の向日葵』(中央公論新社)

杉本昌隆 『弟子・藤井聡太の学び方』(PHP研究所)

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〔技術部門〕 9作品→5作品→2作品

藤井猛 『四間飛車上達法』(浅川書房)

永瀬拓矢 『全戦型対応版 永瀬流負けない将棋』(マイナビ出版)

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最終選考会は7月21日(土)に行われます。

最終選考で各部門の大賞、優秀賞が選ばれますが、大賞該当作なし、あるいは優秀賞該当作なしの場合があります。

 

米長邦雄王将「今回はわかっているけれども言えない」

将棋マガジン1984年6月号、「名人戦七番勝負アンケート 谷川名人防衛か 森安八段奪取か」より。

 谷川名人対森安八段の勝敗予想を募ってみた。遅い人でも第1局が始まる1週間前までにいただいたものである。質問項目は次の通り。

①何勝何敗でどちらが勝つか
②その主な理由
③好きな棋士、あるいは今後活躍を期待したい棋士
※「勝負」について何かひと言

 結果は圧倒的に谷川乗りが多く、理由としては若さ、勢い、強運をあげる人がほとんどだった。

 なお、回答できない旨の返信も原文のまま掲載させていただいた。それぞれ個性的な味があって面白いと思う。

 期間が短かったにもかかわらず、ご回答くださった方々には深く御礼申し上げます。

①何勝何敗でどちらが勝つか
②その主な理由
③好きな棋士、あるいは今後活躍を期待したい棋士
※「勝負」について何かひと言

ジェームス三木(シナリオライター)
①4勝3敗で森安八段。
②森安に上昇棋運あり
③米長邦雄、田中寅彦
※「勝負」は相手をよく知るものが勝つ。相手をよく知ることは「やさしさ」である。やさしさが勝つのである。

鈴木健二(NHKアナウンサー)
名人戦についてアンケートを戴きましたが、名人戦及び谷川、森安両氏についての資料を全く持ち合わせておりませんし、また現在超多忙で、蒐集の時間もなく、いい加減な仕事をするのが大嫌いですので、申しわけありませんが、回答を辞退致します。両氏のご健闘を祈ります。

倉島竹二郎(作家)
①今期の名人戦は、四対二ぐらいで谷川浩司名人が勝ちそうに見ていますが、どんなものでしょうか?
②若いということは何と云っても大したことで、谷川名人の将棋は一局ごとに強くなっている気がするからです。しかし、予想はアテにならぬものですし、森安秀光八段も近来棋力の充実ぶりは目覚ましい感じで、是非頑張ってほしいと思っています。
③中原誠十段。若手では、親しかった塚田正夫さんと同姓のせいか、まだ見ぬ塚田泰明五段の活躍を期待しています。

木村義雄十四世名人
強敵連中に伍しての挑戦権の獲得という奮闘は、天晴れです。いずれが勝つにしても四対三か、四対二と思われます。

永六輔(タレント)
①さあどうでしょうね
②あるでしょうね
③誰もいません

つのだじろう(漫画家)
①4勝2敗で谷川名人の勝ち
②中原十段、田中寅八段が挑戦者になるまで谷川の名人位防衛はつづくと思う
③中原十段、田中寅八段、大内八段他大勢います
※将棋の試合というのは自分の人生、性格などを凝縮した世界といえる。果てしなく興味深いと思います

大滝秀治(俳優)
①4勝2敗で谷川勝
②将棋とはこんな簡単なゲームだったのか、と錯覚させる位一直線に寄せてゆく見事さは類がありません
③大内延介、石田和雄

高木彬光(作家)
①4対2で谷川の勝

立川談志(落語家)
さて困りましたナア、将棋って縁がござんせんでネ、升田幸三というワカラズ親父を知っている程度なもので……

北條秀司(劇作家)
「王将」の作者で居ながら、いまだに将棋のことはなんにもわかりません  不悪

瀬戸内寂聴(作家)
①4対2で谷川勝
②谷川名人の度胸
③米長邦雄王将
※勝負はきらいです。負けた方が可哀そうだから、ずっとずっと昔、私は陸上三種の万年候補で一度も試合に出してくれなかったから、弱い人の気持ちに同情するから。

中原誠十段
①谷川名人の4勝3敗
②大熱戦が予想されますが、森安八段の”だるま流四間飛車”を、谷川名人がどう破るかが見所でしょう。苦戦ながらも最後は谷川名人が勝つと思いますが……

山田洋次(映画監督)
①4勝2敗で谷川氏の勝ち
②若さ
③米長邦雄

長門裕之(俳優)
①4勝3敗で谷川名人が勝つ
②若さがキャリアにまさる
③友人として森雞二、勝浦修両八段に一層のはげみを期待したい
※棋力の均衡したベテラン達がその位を保つために人生的なハングリーが今必要ではないだろうか

田中寅彦八段
①何勝何敗かわからないが、谷川名人の勝ち
②棋力は森安八段の方が上と思うが、谷川名人はなにせ運がいい

米長邦雄王将
①今回はわかっているけれども言えない
②森安勝ちと言えば、私の実力を自慢気に話すことになる。谷川勝ちと言うのは、森安先生に悪すぎる。故に私はしゃべることはできない

丹波哲郎
①谷川浩司名人

(以下略)

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昔はこのような名人戦七番勝負アンケートのようなものがあった。

かなりたくさんの著名人に往復葉書を送ったのだろう。

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鈴木健二さんはこの頃のNHKの超人気アナウンサー。

永六輔さんは永六輔さんらしいと言って良いのだろう。

個人的には大滝秀治さんが回答してくれているのが嬉しい。また、好きな棋士の一人が石田和雄八段(当時)というのも大滝秀治さんのイメージにピッタリ。

木村義雄十四世名人はやはり十四世名人らしい言葉。天上人という感じでとても良い。

田中寅彦八段(当時)の「棋力は森安八段の方が上と思うが、谷川名人はなにせ運がいい」も、らしくて絶妙だ。

米長邦雄王将(当時)はまさに泥沼流。

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ここに掲げた以外に回答者は、小川誠子四段(囲碁)、阿刀田高(作家)、高橋道雄王位、古今亭志ん朝(落語家)、小田島雄志(東大教授)、高橋治(作家)、桂米朝(落語家)、藤沢桓夫(作家)、春風亭柳昇(落語家)、趙治勲棋聖(囲碁)、石堂淑朗(作家)、小松方正(俳優)、大橋巨泉(タレント)、林秀彦(作家)、千家和也(作詞家)、一龍斎貞丈(講談師)、青野照市八段、柳家さん助(落語家)、石田芳夫九段(囲碁)、林海峰本因坊(囲碁)、春風亭柳好(落語家)、高橋三千綱(作家)、森雞二八段、赤木駿介(作家)、山本直純(作曲家)。

4勝1敗で谷川浩司名人が防衛を果たしたが、当てたのは青野照市八段と高橋三千綱さんの二人。