次世代の覇者

将棋世界2005年9月号、真部一男八段(当時)の「将棋論考」より。

 さて、将棋界での現覇者と次世代の覇者との年齢差を見てみよう。

 約20年間第一人者であった木村義雄十四世名人から名人位を奪取した大山康晴、両者の年齢差18。

 大山の天下も約20年続き、次に中原が第一人者となる。その差24歳。

 そして史上最年少21歳で名人位を襲った谷川浩司、中原との差は18歳。

 現代の第一人者、羽生善治と谷川とは8歳しか離れていないが、これは木村、大山、中原と比較して谷川の一人天下の期間が短かったからである。

 見方を変えれば羽生が谷川の一人勝ちを許さなかったともいえる。

 現在の最年少タイトル者である渡辺明竜王と羽生との年齢差は14、微妙なところである。

 これまでの永世名人達が最後に名人位を失った年齢は、木村47、大山49、中原46となっていて、それらと比べると羽生はまだ34と指し盛りであるからだ。

 羽生に劣等感を植えつけられていない渡辺との戦いは、これからの将棋界を盛り上げてゆくだろうが、真の次世代の覇者は現奨励会員か、あるいは未だ在野にいる少年なのかもしれない。

(以下略)

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現段階で、羽生善治竜王が直近で名人位を失ったのが45歳の時。羽生竜王は、大山康晴十五世名人の記録を次々と塗り替えている最中でもあり、後年、最後に名人位を失ったとされる年齢も、大山十五世名人を抜く可能性が高いと思う。

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次世代の覇者との年齢差を考えてみたい。

二十世名人にもっとも近いのが佐藤天彦名人。

羽生竜王との年齢差は17歳4ヵ月。

木村義雄十四世名人と大山十五世名人・中原誠十六世名人と谷川浩司九段、それぞれの年齢差18歳とほぼ同じだ。

そういう意味でも、佐藤天彦名人が永世名人になる可能性は非常に高いと考えられる。

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羽生竜王の、佐藤天彦名人以外の現在のタイトル保持者との年齢差は次の通り。

高見泰地叡王 23歳
菅井竜也王位 22歳
中村太地王座 18歳
渡辺明棋王 14歳
久保利明王将 5歳
豊島将之棋聖 20歳

また、羽生竜王と藤井聡太七段の年齢差は32歳。佐藤天彦名人と藤井聡太七段の年齢差は14歳6ヵ月。

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真部一男八段(当時)の「真の次世代の覇者は現奨励会員か、あるいは未だ在野にいる少年なのかもしれない」

この文章が書かれた時、佐藤天彦名人は三段、藤井聡太七段は3歳の頃。

次世代の覇者が誰になるのかという興味とともに、羽生竜王と次世代の覇者の年齢差がどうなるかも興味深いところだ。