飯塚祐紀六段(当時)「苦虫を噛み潰す」

将棋世界2005年8月号、飯塚祐紀六段(当時)の「矢倉で強くなろう!」より。

 20年来の友人達とどこかのバーで旧交を温めていたときのお話です。南米在住の経験ありの彼の発案でグサノロホというメキシコのお酒を注文することになりました。男同士でわいわい騒いでいるといつになっても毎度の調子です。おしゃれな小瓶の中に封入されていたのは目にも鮮やかな芋虫。そういえば芋虫酒とメニューには書いてあったような……。

 バーテンさんは「運がいいと特大のものや、2匹入っていることもありますよ」と目を輝かせて説明してくださったのですが、人間の幸運とはなんだろう、と虚ろな気持ちで思わず考え込んでしまいました。価値観の多様性を尊重したい気分がありますが実際目の当たりにするとまるで何かの罰ゲームを受けているかのような心境です。ええ、飲みました。ちゃんと飲みましたよ。というか食べました。ふやけたえびせんを思い出す、小粋な?食感にもうくびったけ(死語)。

 苦虫を噛み潰すとはこのことを指すのでしょうね。芋虫パワーで今年もがんばります!

(以下略)

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グサノロホは、竜舌蘭に生息する食用の芋虫(ボクトウガの幼虫)がメスカル(メスカルの中でもテキーラ村の周辺で製造されたものがテキーラと呼ばれている)に入った酒。

「運がいいと特大のものや、2匹入っていることもありますよ」と言われて、「人間の幸運とはなんだろう」と考えた飯塚祐紀六段(当時)の気持ちが痛いほどわかる。

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メスカルの原料は竜舌蘭なので、このためだけに芋虫を集めているわけではなく、原料に寄生しているものを有効活用していると解釈することもできる。

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芋虫の命を一匹ずつ奪ってから酒に入れているとは思えないので、生きている芋虫を酒に入れているのだろう。

メスカルは他に「唐辛子」や「サソリの抜け殻」が入ったバージョンもあるという。

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しかし、日本にも中身は食べないにしても「マムシ酒」「ハブ酒」などがあるので、よくよく考えてみると凄い話だ。

とはいえ、芋虫や唐辛子やサソリの抜け殻が入ったメスカルは、滋養強壮などのことは全く考えられておらず、販売促進の話題作り的な意味合いが強いらしいので、この辺はいかにもメキシコ的。

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「ふやけたえびせん」は、当分の間、芋虫を思い出してしまい、食べることができなくなりそうだ。

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グサノロホ

「飯塚祐紀六段(当時)「苦虫を噛み潰す」」への1件のフィードバック

  1. 飯島先生の生真面目でいて離れがたい戦法指南があたまをよぎります。
    なんともすてき

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